図53 食中毒による死者数(原因施設別)


◆ F.M.豆知識
  食や農について、(特に私たち消費者にとって)ちょっと役に立つ、あるいは考えるヒントになるような話題を、毎回こつこつと取り上げていきます。
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 「食品に関するリスクが最も大きい場所」
 前回は食品に対する消費者の不安の実感について、消費者モニター調査結果を紹介しました。これによると、「輸入農産物、輸入原材料」「外食店舗」については不安感が大きいのに対して、「家庭での取り扱い方」については9割以上の消費者が安心と感じていることが明らかとなりました。
 http://food-mileage.jp/wp-content/uploads/52_monitor.pdf

 ところで、食に関するリスクの最大のものは食中毒といえます。食中毒による死者数は長期的にみると大幅に減少しているものの、現在もほぼ毎年、食を直接原因とする死者が出ているのです。

 近年における食中毒による死者数の推移を原因施設別に示したものが、リンク先の図53です。

 これによると、2000〜15年の16年間で合計92人の死者が出ていますが、うち54人(59%)は家庭で亡くなっています。なお、家庭以外の死者の多くは、2002年の8人(病院給食・栃木)、2011年の5人(ユッケ・富山)、2012年の8人(白菜漬物・札幌市)といった特定の事件によるものです(原因物質はいずれも腸管出血性大腸菌)。

 一方、家庭における死者の原因物質はフグ、トリカブト、サルモネラ等で、一般の家庭にとってはやや特殊なものが多いのですが、それでも2009、10年を除いて毎年死者が出ています。
 つまり、食に関するリスクが最も大きいのは家庭と言えるのです。
 これを前号で紹介したアンケート調査結果と照らし合わせると、ある程度科学的・客観的に評価できる「安全」と、主観に基づく「安心」とは全く異なることが分かります。

 それでは、科学的・客観的な安全性の確保を前提として、消費者の食に対する「安心」はどのようにすれば確保されるのでしょうか。
 引き続き次回で考察します。

[出典、参考資料等]
 厚生労働省「食中毒発生状況(食中毒統計)」
  http://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/kenkou_iryou/shokuhin/syokuchu/04.html

 FM豆知識のページ(ウェブサイト「フード・マイレージ資料室」)
  http://food-mileage.jp/wp-content/uploads/fm-data_mame.html

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