市民科学講座-私たちの食べものや農業-

160629_0_convert_20160705223444.jpg 2016年の6月も終わり近く。
 柿の若い実は梅雨に濡れ、芙蓉が紫陽花に代わって主役の座に。
 2016年6月29日(水)の終業後は、東京・渋谷の光塾 COMM0N C0NTACT 並木町へ。
 「市民にとってよりよい科学技術とは」を考え提言するNP0法人市民科学研究室(市民研)が主催する市民科学講座に、ゲストスピーカーとして招いて下さったのです。
 平日19時からという忙しい時間帯にも関わらず、20名ほどの方が参加して下さいました。
 冒頭、市民研代表の上田昌文さんから、
 「今日は昨年7月から開催している市民科学講座Bコース(第I期は本年9月まで全14 回)の第11回目。このコースでは、ふだんお付き合いしている方の中から自分が話を詳しく聞いてみたいと思った人を毎回お呼びしている。
 今日の講師の中田さんとは5年ほど前に出会い、年末の市民研クリスマスパーティーを始め色々な会合を顔を出してくれている。フード・マイレージを参考 にウォ-ター・マイレージを研究したこともある」等の挨拶と紹介を頂きました。
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 私からは、まず個人の立場で話す旨をお断りした上で、チラシにある「中田哲也さん、私たちの食べものや農業はこの先どうなっていくのでしょうか?」とのタイトルは不適切、という話からスタート。
 このチラシをお配りして皆さん来て下さっているのに、失礼な導入だったかもしれません。しかも、その理由の説明はあと回し。
 スライド(パワーポイント)を映写しながら、食生活の変化(外部化・簡便化、米消費量の半減)、「食と農との間の距離」の拡大、食料自給率の国際比較、世界の食料事情、食品ロスなど、食べものや農業をめぐる現状について説明。
 続いて、私たちの現在の食生活が地球規模の資源・環境問題とも関わっていること、地産地消の取組が輸送に伴う二酸化炭素排出量の削減に有効であること等について、フー ド・マイレージの考え方と具体的な試算例を示しつつ説明。
 併せて、フード・マ イレージ指標の限界や問題点についても付言しました。
PPT_convert_20160703221444.jpg ちなみにフード・マイレージとは、1990年代のイギリスにおけるフードマイルズ運動(なるベ く身近でとれた食料を消費することによって食料輸送に伴う環境負荷を低減させていこう という市民運動)の考え方を参考に、かつて筆者が在職していた農林水産省農林水産政策研究所 において開発・試算した指標です。
 さらに近年、エンゲル係数が上昇しつつあること、完全失業率の上昇に伴い栄養(特にたんぱく質)摂取量が減少していること等について説明(先日の脱成長研究会で報告した資料の使い回し!)。
 また、江戸東京野菜など伝統野菜の取組が拡がりつつあることについて言及しました。
 結論として、自分が何を食べるかは自らの選択に委ねられており、産地や生産者に思いを馳せつつ、自分の健康によい食生活を送ることが、食料自給率の向上や地球環境問題の解決にも貢献すること等について説明させて頂きました。
 つまり、冒頭のチラシにあるように「私たちの食べものや農業はこれからどうなっていくのでしょうか?」と人に尋ねるのではなく、「自分たちの食べものや農業を、この先、どうしていきたいですか?」という自ら問い、主体的に選択して今ことが正しいというのが、私の言いたかった結論です。
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 ここまでの説明で1時間ほど。
 残りの1時間は、上田先生のコーディネートにより、質疑応答と意見交換の時間です。参加者の皆さんから、多くの熱心で的確な質問とご意見。質問にお答えするというよりは、参加者の皆さんのご意見を聞くいい機会となりました。
 例えば、
 「輸入食料のフード・マイレージのグラフは総量で描いてあるが、一人当たりにすれば韓国の方が大きくなるのではないか」との質問には、「一人当たりでも日本の方がやや大きくなるが接近する。総量と一人当たりの両方で比較することが必要だが、今回は説明は割愛した」と回答。
 「世界の人口はますます増えるなか、食料需給の見通しはどうなのか」との問いには、
 「人口だけではなく、中国等での所得上昇、バイオ燃料の増加等から需要は増加。一方、これまでの需要増を賄ってきた単位辺り終了の伸びは鈍化している」とお答えしました。
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 また、「日本は農村から労働力が移動し、その結果、工業製品を輸出することによって経済発展を遂げたのではないか。一方、経済は内需が中心であり、輸出に大きな期待はできないのではないか」
 「商社がアフリカで大豆の生産を始めたことが、地域の伝統的な農法を破壊しているのではないか」
 「経済性だけではなく、生物多様性も重視すべきではないか」
等の様々な意見を頂き、適宜、意見交換。
 さらに、「多くの国民が農業を体験することが重要。旧ソ連のダーチャが参考になるのではないか」と発言された女性、「子どもの頃は庭で麦や野菜を作っていた。今はマンション住まいだが無性に土が触りたくなり、大きなプランターを置いて野菜作りをしている」という男性もおられました。
 上田先生からは、「農業が他産業と決定的に違うところは、生きものを扱うということ。農業と生命とはベイシックな意味で親和性がある」等のコメントを頂き、予定の21時半を回って講座は終了。
 終了後は、熱心に質問して下さった大学職員の女性、大学教員の男性、多摩地方で地産地消に取り組んでおられる2人の女性等と、さらに意見交換など。
 今回も様々な刺激的な意見等を頂きました。有難うございました。
 世の中は、正に参議院選挙の真っ最中。
 選挙への投票だけではなく、日々の食べものの選択権も、きちんと行使することが必要です。
 【ご参考】
◆ ウェブサイト:フード・マイレージ資料室
 (プロバイダ側の都合で1月12日以降更新できなくなっていることから、現在、移行作業を検討中です。)
◆ メルマガ :【F. M. Letter】フード・マイレージ資料室 通信
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