奥沢ブッククラブ(第10回)

 ここのところ不順な天候が続いています。
 2016年7月14日 (木) の19時前に東急・自由が丘駅に着いた時は、もの凄い雨に。
160714_1_convert_20160721000247.jpg 駅には足止めされた多くの人たち。道路にはたちまち水溜りが。
 待っていても弱まる気配もないため、意を決して傘を差して雨の中へ。
 音もすごく、傘から伝わってくる雨粒の重さに、ふとドレスデンの大空襲もかくありやと想像(もちろん、全く違いますが)。
 ほうほうの体でシェア奥沢に到着。
 カバンもびしょびしょ、中の本まで少し濡れてしまいました。タオルを出して下さる方も。
 この日、開催されていたのは奥沢ブッククラブ(第10回)
 悪天候にもかかわらず、参加者はいつもより多い12名。うち初参加の方も2人いらっしゃいます。
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 まずは、軽く食事をするのがこの読書会のならわし。
 この日、主催者兼シェフ役のシゲさんが準備して下さったていたのはイタリアンでした。
 なかでもカペリーニ(細いパスタ)の冷製は、見た目も味も絶品! 
 つい興奮しかけましたが、冷静に頂きました。ちなみに素麺で作っても美味しいそうです。
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 私からは、純米吟醸・熊本城(瑞鷹)を差し入れ。
160714_4_convert_20160721000405.jpg  売上の一部は熊本城災害復旧支援金として寄付されるとのこと。
 先日の熊本応援食事会で、熊本からのゲストの方が持参して下さったのと同じものが、近所のスーパーにも置いてあったのです。
 食事がー段落したところで、順番に「お薦め本」の紹介から。
 まずは初参加のSさん。今日の課題図書のジャンルはあまり読んだことがなかったので新鮮だったとしつつ、戦争文学に触発されたのか、アインシュタインとフロイトの往復書簡 『ひとはなぜ戦争をするのか?』を推薦。
 続くOさんからは、村上春樹 『風の歌を聴け』と中田信哉 『宅急便を創った男 小倉昌男さんのマーケティング力』
 常連のベテラン男性・UKさんからは、蛭田 昭 『青春が滅びていく-自殺との対話』と、坂口安吾 『墮落論』
 細密な猫の絵を描くTさん(あれ、猫と描って漢字似てますね。)からは、マイクル・コーニイ 『ハロー・サマー・グッドバイ』
 今日の課題図書も、SF好きのTさんが言いだしっぺだったそうです。もっとも同じ作家でも別の作品が採用されましたが。
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 絵本の読み聞かせ活動をされているURさんからは、風木 一人(著)、長友 啓典(イラスト)、松 昭教(装丁)『青のない国』と、林 木林、庄野 ナホコ 『二番目の悪者』
 『2番目の・・・』は後ほど朗読して下さることになっています。URさんの朗読は毎回の楽しみです。
 そしてもう一冊、ミック・ジャクソン 『10の奇妙な話』
 シゲさんからは、やはり古典は奥深いとカフカ 『変身』。それに今村 仁司『交易する人間-贈与と交換の人間学』。そして、この日の課題本にちなんでカート・ヴォネガット 『国のない男』
 さらに、文芸書対象の本ブッククラブとは別に、人文系ノンフィクションを読む会も立ち上げたいとの構想が披露されました。
 私からは、葉山 祥鼎 『ブルー・ビーとピコの勇気』。去る10日のチャリティーコンサート(六本木)の際に、著者の葉山さん(葉祥明阿蘇高原絵本美術館 館長)から直接求めさせて頂いたものです。
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 幸運の青い蜂(ブルービー)が、自信をなくして飛べなくなった小鳥のピコを励ますために訪ねようとした時、急な大雨に溺れかけたところを逆にピコに助けられ、ピコも自信と勇気を取り戻すというストーリー。復興に取り組む熊本や阿蘇を象徴する物語です。復興とか支援とかいっても、私達の方が熊本の方達から元気を頂いているのですから。
 ちなみに、URさんの読み聞かせの真似をしようとしましたがうまくいきませんでした。観客に向けたまま、揺らさずにページをめくるのがこんなに難しいとは。
 続いて「ブッククラブのことは以前から気になっていたが、初めて勉強に来た」というKAさんからは、フィン 『アンナの小さな神さま』
 老年文学の専門家を自称される常連の女性からはフィッツジェラルド 『ベンジャミン・バトン-数奇な人生』。それに本好きの方らしくハンフ 『チャリング・クロス街84番地』
 「課題図書を読むのに必死だったのでお薦め本は準備できなかった」 というKNさん。今、読んでいて面白い本として大塚 ひかり 『源氏の男はみんなサイテー』
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 Oさんからは、以前に続いてライアル 『深夜プラス1』。これも戦争モノです。
 少し遅れてきた本好きの男子学生・I君からはレーヴィ 『アウシュヴィッツは終わらない』。古典としてバルザック 『ゴリオ爺さん』
 そして、これから読みたい本としてマニング『戦地の図書館』。人間にとって本がいかに重要なものかを教えてもらえるのでは、と。
 今回は課題図書に触発されてか、戦争モノが多かったようです。
 一通りお薦め本の紹介が終わったところで、前回、リクエストがあったのでとUKさんが詩の朗読。
 青春の詩であるという蛭田昭『ひまわり』、萩原朔太郎『愛隣』。それに三好達治『乳母車』。
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 続いて、UR さんから『二番目の悪者』の読み聞かせ。
 いつもと違い、今回は小学校でのイベントで用いたという大きなスクリーンを使っての朗読です。
読です。
160714_8_convert_20160721000554.jpg ちなみに出版社の「小さい書房」さんは、たくさんのユニークな絵本等を出版されているとのことで、小学校での朗読会にも来て下さったそうです(この日の上演の許可も得られているとのこと)。
 ・・・王位を狙う「金のライオン」は、ライバルの「銀のライオン」を貶めるために悪い噂を流します。それが広まって、「金のライオン」は目論見どおり王様になれたのですが・・・。
 悲劇の結末を迎えた動物たちがつぶやきます。
 「自分で一つでも噂を確かめただ ろうか。金のライオンだけが悪かったんだろうか」
 小学6年生を対象にした読み聞かせ会でも、生徒達の反響は大きかったそうです。
 さて、ようやく本日の課題図書についての話合い。
 スタートが遅れたこともあって、あまり時間は残っていません。
 この日の課題本は、カート・ヴォネガット『スローターハウス5』
160714_9_convert_20160721000615.jpg 第2次世界大戦末期のドレスデン大空襲時、と畜場(スローターハウス)の地下倉庫に捕虜として収容されていた主人公の経験談です(作者自身の経験に基づいているとのこと)。
 ところがストーリーは素直に時系列には流れず、子どもの頃、戦後など、あちらこちらに行きつ戻りつしながら進んでいきます。おまけに宇宙人に誘拐されるというエピソードまで。
 多くの方からは(私も)、読みにくかったという感想が出されました。登場人物の名前と工ピソードをノートに取りながら読んだという人も。
 一方、ヴォネガットの技法に慣れている人には、たまらない魅力のようです。 ちなみに映画化もされており(原作と同様にジャンプしまくるそうですが)、こちらも楽しめるとのこと。
 内容について一致したのは、執拗に繰り返される「そんなものだ(So it goes)」というフ レーズが印象に残ったということです。
 ただ、その意味するところとしては、四次元の目を持つ宇宙人の教訓と捉えたという意見があった一方、戦争という他に選択肢の無い極限状態のなかで自分を納得させるための諦めのフレーズではないか、宇宙人に拉致されるという荒唐無稽のエピソードは現実逃避の現れではないか、等の意見も。
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 様々な読み方があることを知ることが、読書会の醍醐味です。
 また、知らなかった本、興味のなかったジャンルの本を(半ば強制的に)読婿とができるのも、読書の楽しみをさらに広げるのに大きく貢献します。
 最後に次回の日程を調整し、8月18日(木)に開催することに。
 課題本については色々と候補が出されましたが、戦争をテーマに話し合った流れを受け、UKさんから推薦のあった坂口安吾『堕落論』に決定。
 ノンフィクション版のブッククラブは、引き続き相談することになりました。
 終了予定の21時を30分ほど回ったところでお開きに。
 例によって、自宅が遠いことを口実に後片付けはパスさせて頂き、帰途へ。
 あれだけ土砂降りだった雨は上がっていました。
 【ご参考】
◆ ウェブサイト:フード・マイレージ資料室
 (プロバイダ側の都合で1月12日以降更新できなくなっていることから、現在、移行作業を検討中です。)
◆ メルマガ :【F. M. Letter】フード・マイレージ資料室 通信
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