図56 食品についての「安全」と「安心」の関係


◆ F.M.豆知識
  食や農について、(特に私たち消費者にとって)ちょっと役に立つ、あるいは考えるヒントになるような話題を、毎回こつこつと取り上げていきます。
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 「食の安全・安心」
 ここ数回にわたり、食の安全や安心について考察してきました。
 アンケート調査結果によると9割以上の消費者が「家庭での取り扱い方」については「安心」と感じている(No.95)のに対し、現実に食中毒による死者が最も多く発生しているのは家庭であること(No.96)から、「安全」と「安心」の間にはギャップがあることを示しました。
 http://food-mileage.jp/wp-content/uploads/52_monitor.pdf
 http://food-mileage.jp/wp-content/uploads/53_shokuchudoku.pdf

 No.97では、このギャップの背景として、「家庭での取り扱い方」など自分でコントロール可能なリスクは実際よりも小さく、「輸入食品」「外食産業」など逆に他人にコントロールされているリスクは実際よりも大きく感じられるというメカニズムがあることを紹介しました。
 http://food-mileage.jp/wp-content/uploads/54_risk.pdf

 さらにNo.98では、リスク認識の程度が一般消費者と専門家との間で大きく異なるという食品安全委員会事務局の調査結果を紹介しました。
 http://food-mileage.jp/wp-content/uploads/55_riskninsiki.pdf

 今号は、これらのまとめとして、どうすれば食に関する「安心」を得ることができるかについて考えてみたいと思います。

 リンク先の図56の破線内は、内閣府食品安全委員会事務局がある講座で用いている資料の一部です。

 この資料の結論は「『安全』は『安心』ではない」ということになっています。
 つまり、左上の「安全」は科学的評価により決定されるもので客観的であるのに対し、下の「安心」は消費者の主観的な心理的判断(主観的)によるというのです。
 そして「安心」が得られるためには、「安全」は必要条件ではあっても十分条件ではなく、「安全」に「信頼」(行政、食品事業者による誠実な姿勢と真剣な取組み、消費者への十分な情報提供)が加わることによって、初めて食の「安心」は確保されるとされています。

 「安全」=「安心」ではないということは、そのとおりですが、しかしこれだけでは私は不十分だと考えています。
 専門家が科学的に評価し、行政や事業者が誠実に情報提供等に努めたとしても、これらだけで私たち消費者は「安心」を得ることはできません。
 私たちが安心を得るためには、消費者自らの努力も不可欠なのです。
 科学ライターの松永和紀さんは、メディアは情報伝達の手段に過ぎず判断するのは個々の消費者であるとし、「科学の読み書きそろばん力」(メディア・リテラシー)を身につけることの必要性を主張されています(図の破線の右側に追加した部分です)。
 具体的には、「懐疑主義を貫き、多様な情報を収集して自分で判断する」「単純な情報は排除する」「極端な情報はまず、警戒する」等の態度が重要としています。

 「科学」とは面倒くさいものです。だからと言って専門家や事業者、あるいはメディアやネットの情報を鵜呑みにしていては、本当の安心は得られません。
 安心とは、自ら学びつつ、つかみ取っていくものなのです。

[出典、参考資料等]
 内閣府食品安全委員会事務局「大津市・食品安全リスクコミュニケーター育成講座」(2016年6月)における説明資料
 https://www.fsc.go.jp/fsciis/meetingMaterial/show/kai20160616ik2

 松永和紀「リスクコミュニケーションに関する話題提供」
 (「第4回リスクコミュニケーションのあり方に関する勉強会」
  (2014年9月)資料)
 https://www.fsc.go.jp/fsciis/meetingMaterial/show/kai20140924ik1

 FM豆知識のページ(ウェブサイト「フード・マイレージ資料室」)
 http://food-mileage.jp/wp-content/uploads/fm-data_mame.html

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