【F.M.Letter No.102】

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◇◆◇ F. M. Letter −フード・マイレージ資料室 通信 ◇◆◇

     No.102;2016.9/15(木)[和暦 葉月十五日]発行

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 葉月も半ば。秋の虫の声が嬉しい季節となりました。今夜は仲秋の名

月ですが朝から強い雨になりました(なお、満月は明後日です)。

 しかし、またも台風が発生し九州に接近中。熊本では依然として余震

が収まりません。大きな台風被害を受けた北日本も含め、一日も早く平

穏な暮らしが戻ることを祈念申し上げます。

 時の流れを体感するため、和暦の朔日(新月の日)と十五日(ほぼ満

月の日)に配信している本メルマガ、今回は葉月十五日の配信です。


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  F.M.豆知識

  食や農に関連して、特に私たち消費者にちょっと役に立つ、あるい

 は考えるヒントになるような話題を、毎回コツコツと具体的なデータ

 に即して紹介していきます。

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 「食生活の変貌栄養面から」

 私たち日本人の食生活は、戦後、経済の高度成長期等を経て大きく変

貌しました。

 その一つが「外部化・簡便化」です。ライフスタイルの変化に伴い、

外食や中食(持ち帰り弁当やそう菜など)の消費が大きく増加しました。

同時に食料消費の内容そのものも大きく変化し、米の消費量が半減する

一方で畜産物や油脂等の消費が数倍に増加しました(「食の欧米化」)。

 

 今回は、この食生活の変貌を栄養面から捉えてみます。

 リンク先の図58の折れ線グラフは、国民1人・1日当たりの供給熱量、

供給たんぱく質及び供給脂質の量を、1960年を100とした指数で表したも

のです。

  http://food-mileage.jp/wp-content/uploads/58_eiyo.pdf

 

 まず、供給熱量(緑色の折れ線)は1960年には2,291kcal1人・1日当

たり、以下同じ。)だったのが、1990年代半ばには2,670kcal程度にまで

増加(1960年比17%増)し、その後は減少に転じ、最近は2,415kcal

(同5%増)と1960年に近い水準となっています。

 供給たんぱく質(青)は1960年の69.8gから1990年代半ばには88g程度

にまで増加(同27%増)し、その後は横ばいないし減少傾向となり、最

近は79g程度(同12%増)となっています。

 これらに対して供給脂質(赤)は、1990年代半ばには3.5倍への水準ま

で大きく増加し、その後はいったん減少に転じましたが、最近は横ばい

となっています。1960年に比べると2.7倍の水準であり、日本人の栄養面

での食生活の変貌を特徴づけるものは、脂質の大幅増加と言えます。

 

 円グラフは、供給熱量に占めるたんぱく質、脂質、糖質(炭水化物)

の割合を示したものです。前述した摂取量の推移の結果、脂質の割合は

1965年度の16.2%から85年度には26.1%、2014年度には28.9%とほぼ一

貫して上昇し、逆に炭水化物の割合は同時期に71.6%、61.2%、58.0

と低下し続けています。

 これらの結果、栄養バランスが崩れ、脂質(F)が摂取過多となる一

方、炭水化物(C)は適正水準を下回って推移している結果、肥満が増

加しているという状況にあります。

 

 ところでこの間、たんぱく質(P)の割合は13%前後とほぼ一定です。

このように変動が小さいこともあって、これまで本メルマガでもたんぱ

く質にはあまり注目してきませんでした。

 しかしながら、最近はたんぱく質の摂取不足が基礎代謝量の低下

(肥満の増加)や子どもや高齢者の体力低下に関係していると問題視さ

れています。さらには、最近のたんぱく質摂取量の減少は失業率の上昇

と関係していると指摘する人もいます。

 本稿ではこのような観点を含め、今後数回にわたり、たんぱく質摂取

量について取り上げていく予定でする。

 

(注)

 供給量とは消費者等に到達した食料等の量(言わば食卓に並べられた

量)であって、実際に摂取された量(言わば口に入れた量)とは異なる

ことに留意が必要です。

 

[出典、参考資料等]

 農林水産省「食料需給表」

  http://www.maff.go.jp/j/zyukyu/fbs/index.html

 FM豆知識のページ(ウェブサイト「フード・マイレージ資料室」)

  http://food-mileage.jp/wp-content/uploads/fm-data_mame.html

 

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  オーシャン・カレント 潮目を変える

  食や農の分野について先進的かつユニークな活動に取り組んでおら

 れる方達や、トピックスを紹介していきます。

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 JR中央線・吉祥寺駅から歩いて10分ほど、井の頭恩賜公園の緑に包ま

れた場所にあるのが「森の食卓」です。

 セミナー、イベント、ワークショップ等を開催したい方のためのコミュ

ニティ・スペースとして、2階建ての一軒家を改装して201510月にオー

プンしました。

 

 玄関を入ると、優に20人は入れるスペースがあり、テーブルを組み合

わせてセミナーやワークショップ等を開催できます。ピアノもあり音楽

会も開催できるそうです。

 さらに、最先端の食洗機等を備えたキッチンも併設されており、食事

を伴うイベントも開催できます。

 

 オープンなイベントとしては、近隣の農家の方が生産された野菜等を

販売するマルシェ、アロマの会、読書会、「新しい楽しいに出会える森

のボードゲーム会」等を開催してきています(これら予定は、フェイス

ブックのページに掲載されています)。

 また、同窓会等の貸切パーティなど仲間だけのクローズな会合にも利

用できるそうです。

 食卓を囲んで「話し」「つくり」「食べる」これら様々な会がつなが

り、全体として心地よいコミュニティの場になることが期待されている

ようです。

 

 2016827日(土)17時からは「森の読書会 夏休み特別version

が開催されました。生憎の雨になりましたが、夏の終わりの井の頭公園

は緑濃く、気持ちの良い環境です。

 この日は、本が好きな、年齢や職業も様々な20名ほどの男女が集まり

ました。文芸書だけではなくノンフィクション、ノウハウ本からコミッ

クまで、様々なジャンルのお薦め本が紹介され、食事も交えながら心地

よい時間を過ごすことができました。

 

 「森の食卓」を主宰しておられる田中眞喜子さんは、この場を開かれ

た思いを次のように話されています。

 「ひとりだけではつまらない、さびしい、元気が出ないことも。そん

な時に食卓を囲んで、ある時は食事をする、ある時は会話をする、ある

時は学ぶ、ある時は音楽を楽しむ、ある時は・・・。

 おじいちゃんやおばあちゃん、子育てをしているお母さん、普段は仕

事や勉強で慌ただしい日々を送っている人が、ちょっと集まってほっと

できる場所になればいいなと思っています」

 

 そして「心地よいコミュニティの場づくりをめざし、少しずつできる

ことから始めているので、どんなことをやっているのか、何ができるの

か、関心を持たれた方がおられれば、どうぞお気軽にお問合せ、立ち寄

りください」と仰っておられます。

 

[参考]

「森の食卓」ウェブサイト

  http://morinoshokutaku.jimdo.com/

「森の食卓」フェイスブックページ(イベントスケジュール等も掲載)

  https://www.facebook.com/morinoshokutaku/

 

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  ほんのさわり

  食や農の分野について考えるヒントとなるような、本の「さわり」

 だ けを紹介します。

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 農林漁業者だけではなく私たち消費者も一緒に「つくる」一次産業を

 

 高橋博之「都市と地方をかきまぜる『食べる通信』の奇跡」

 (2016.8、光文社新書) 

  http://www.kobunsha.com/shelf/book/isbn/9784334039363

 

 離れてしまった生産者と消費者との間の距離を計測する指標がフード・

マイレージ。この距離を縮めることで、私たちの食や農に関わる多くの

問題は解決できます。しかし、一般の人にとって生産者と直接「顔の見

える関係」を作ることは簡単ではありません。

 そのようななか、都市住民が新しいふるさとをみつけるきっかけとな

る史上初・世界初の「食べもの付き情報誌」が誕生しました。本書では、

その「食べる通信」を生み出した著者の実践に基づく熱い思いが綴られ

ています。

 

 「人間は食べないと生きていけない。ところが当事者のはずの私たち

消費者にはまるで他人事で、その結果、命の根源を支える一次産業は衰

退して来た」とする著者は、生産者と消費者が一緒に「つくる」一次産

業を提唱しています。

 著者の関心と問題意識は食や農の分野に留まりません。食を仲立ちに

して生産者と生活者(当事者としての消費者)のつながりを取り戻すこ

と(リアルな共感と参加)によって、生きること自体を回復させること

ができるとしています。

 

 食や農、地方再生、コミュニティ作り等に関わっておられる方ばかり

でなく、できるだけ多くの方に手に取っていただきたい好著です。

 

 なお、東北から始まった「食べる通信」は現在、全国に36通信。興味

のある地域の通信を購読してみてはいかがでしょうか。

 http://taberu.me/

 

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  情報ひろば

  拙ウェブサイトやブログの更新情報、食や農に関わる各種イベント

 の開催情報等をお届します。

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ブログ「新・伏臥慢録〜フード・マイレージ資料室から〜」更新情報

 江戸東京伝統野菜を食べよう!

  (4)八王子ショウガ @都庁食堂 (09/02)

  http://food-mileage.jp/2016/09/02/

 

 失われた故郷からいのちを問う早川住職(福島・植葉町)のお話

  
(09/06)

  http://food-mileage.jp/2016/09/06/

 

 フロマエカフェ(from a & e caf?) 1周年 (09/08)

  http://food-mileage.jp/2016/09/08/

 

 しごと塾さいはら栃餅作りの準備 (09/09)

  http://food-mileage.jp/2016/09/09/

 

 新規就農を考える人のための農地法と農地取得

  (銀座農業政策塾 5期第4回) (09/11)

  http://food-mileage.jp/2016/09/11/

 

 筆者が参加予定または関心のあるイベント等を勝手に紹介します。

  なお、既に満席の場合等がありますので、参加を希望される際には

 必ず事前に主催者にお問い合せ下さい。

 

 土間にたたき(三和土)を作ろう

 日時:917日(土)9:3016:30

 場所:西原ife
体験宿したで(山梨・上野原市西原)

 主催:西原ife
体験宿したで

 (詳細、お問合せ等

  https://www.facebook.com/events/1264522686915796/

 

 福島復興本社ってなにしてるんですか?
駒場編

 日時:919日(月・祝)18:0020:00

 場所:番來舎(東京・目黒区駒場1

 主催:番場さち子さん

 (詳細、お問合せ等

  https://www.facebook.com/events/1747530095536298/

 

「八王子ショウガを知って味わってみよう!」講座【第二弾!〜夜の部〜】

 日時:921日(水)18:0021:00

 場所:アミダステーション(東京・八王子市東町3

 主催:多摩・八王子江戸東京野菜研究会

 (詳細、お問合せ等

  https://www.facebook.com/events/1054144364705521/

 

 7回 森の読書会 

 日時:924日(土)10:0012:00

 場所:森の食卓(東京・三鷹市井の頭5

 主催:森の読書会

 (詳細、お問合せ等

  https://www.facebook.com/events/844170525684732/

 

 寺田本家蔵出しNight 

 日時:928日(水)19:0022:00

 場所:From
a & e
フロマエ(東京・荒川区西日暮里4

 主催:From
a & e
フロマエ

 (詳細、お問合せ等

  https://www.facebook.com/events/1059157560833440/

 

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*今夜のコツコツ小咄。

「夕べの泥棒、冷蔵庫から出しっ放しにして行ったんですよ」

「怪盗(解凍)ルパンの仕業に違いない!」

 

 注:「コツコツ小咄」は、拙FBページにて土日祝を除く毎日、

  絶賛(?)投稿中です。

   https://www.facebook.com/tetsuya.nakata.7

 

* 次号No.103は、101日(土)[長月朔日]の配信予定です。

  より有用な情報の発信に努めていきたいと改めて考えています。

 読者の皆さまのご意見、ご要望をお聞かせ頂ければ幸いです。

 

* 和暦については、高月美樹さん『和暦日々是好日』を参考にさせて

 頂いています。いつもありがとうございます。

  http://www.lunaworks.jp/

 

* 本メルマガは個人の立場で配信しているものであり、意見や考え方

 は筆者の個人的なもので、全ての文責は中田個人にあります。

 

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F. M. Letter −フード・マイレージ資料室 通信ID;0001579997】 

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  発行者:中田哲也