【ほんのさわり】高橋博之「都市と地方をかきまぜる」

高橋博之「都市と地方をかきまぜる-『食べる通信』の奇跡」(2016.8、光文社新書)

離れてしまった生産者と消費者との間の距離を計測する指標がフード・マイレージ。この距離を縮めることで、私たちの食や農に関わる多くの
問題は解決できます。しかし、一般の人にとって生産者と直接「顔の見える関係」を作ることは簡単ではありません。
 そのようななか、都市住民が新しいふるさとをみつけるきっかけとなる史上初・世界初の「食べもの付き情報誌」が誕生しました。本書では、
その「食べる通信」を生み出した著者の実践に基づく熱い思いが綴られています。

「人間は食べないと生きていけない。ところが当事者のはずの私たち消費者にはまるで他人事で、その結果、命の根源を支える一次産業は衰
退して来た」とする著者は、生産者と消費者が一緒に「つくる」一次産業を提唱しています。
 著者の関心と問題意識は食や農の分野に留まりません。食を仲立ちにして生産者と生活者(当事者としての消費者)のつながりを取り戻すこ
と(リアルな共感と参加)によって、生きること自体を回復させることができるとしています。

食や農、地方再生、コミュニティ作り等に関わっておられる方ばかりでなく、できるだけ多くの方に手に取っていただきたい好著です。

なお、東北から始まった「食べる通信」は現在、全国に36通信。興味のある地域の通信を購読してみてはいかがでしょうか。

(参考)食べる通信
 http://taberu.me/

【F.M.Letter No.102; 2016.9/15 掲載】