================================================================
◇◆◇ F. M.Letter −フード・マイレージ資料室通信− ◇◆◇
No.104; 2016.10/31(月)[和暦 神無月朔日]発行
================================================================
和暦では神無月(かんなづき)に入りました。
この季節に吹き始める冷たい木枯らしは、神々を出雲へ運ぶ風に見立
てて「神渡し」と呼ばれるそうです。
時の流れを体感するため、和暦の朔日(新月の日)と十五日(ほぼ満
月の日)に配信している本メルマガ、今回は神無月朔日の配信です。
—————————————————————-
◆ F.M.豆知識
食や農に関連し、特に私たち消費者にちょっと役に立つ、あるいは
考えるヒントになるような話題を、毎回コツコツと紹介していきます。
—————————————————————-
−失業率と栄養摂取量との相関−
引き続き、失業率と栄養摂取量との関連についてみていきます。
前回は1995年頃から失業率(特に若い世代の失業率)の上昇に連れて
エネルギー(カロリー)やたんばく質の摂取量が減少していることを紹
介しました。
http://food-mileage.jp/wp-content/uploads/60_situgyo.pdf
今回のグラフ(リンク先の図61)は、前回(時系列の折れ線グラフ)
と同じデータを、横(x)軸に失業率、縦(y)軸に栄養摂取量(1955年
を100とした指数)をとってグラフにしたものです。
この形式のグラフはx軸とy軸の関係性を読み取るに適しています。
http://food-mileage.jp/wp-content/uploads/61_situgyo2.pdf
これによると、エネルギー摂取量(赤の破線)は1955~75年頃までは
増加しているものの、それ以降は失業率の動きとは関係なくほぼ一貫し
て減少している傾向がみられ、両者の相関はみられません
(決定係数は0.14)。
つまりエネルギー摂取量が減少傾向にあるのは、短期的な経済情勢で
はなく、ライフスタイルの変化や人口の高齢化など構造的な要因を反映
したものと考えられます。
一方、たんばく質摂取量(青の実線)はほぼ一貫して右下がりの直線
(回帰線)に沿って推移しています。
1955~1970年にかけては失業率が低下するのに伴って摂取量は増加
(グラフは左上に向かって推移)していましたが、1970年以降は失業率
が上昇するのに伴って摂取量も減少(右下に向かって推移)、2010年以
降は失業率は低下(改善)し摂取量はやや増加しています。
ちなみに決定係数を求めると0.80と、両データ間には強い相関がある
ことが分かります。
もっとも、決定係数が大きいことは必ずしも因果関係(失業率が上昇
したため、たんぱく質摂取量が低下)を証明するものではありません。
次回は、最近の経済情勢の悪化が栄養摂取量の減少に及ぼしている可
能性について、別のデータからアプ口ーチしたいと思います。
[出典、参考等]
資料:厚生労働省「国民健康・栄養調査」、総務省「労働力調査」
http://www.mhlw.go.jp/bunya/kenkou/dl/kenkou_eiyou_chousa_tokubetsushuukei_h26.pdf
http://www.stat.go.jp/data/roudou/index.htm
FM豆知識のページ(ウェブサイト「フード・マイレージ資料室」)
http://food-mileage.jp/wp-content/uploads/fm-data_mame.html
—————————————————————-
◆ オーシャン・カレント −潮目を変える−
食や農の分野について先進的かつユニークな活動に取り組んでおら
れる方達や、トピックスを紹介していきます。
—————————————————————-
−すみだ川ものコト市−
2012年に東京スカイツリーが開業した墨田区は、今、東京で最も活気
のある地域です。その一方で、隅田川の水運に恵まれていたこと等を背
景に日用品を中心とした多種多様な業種の中小企業が集積した「ものづ
くり」のまちでもあるのですが、区内の工場数はピーク時(1970年代)
の約3分の1にまで減少しています。
このようななか、周辺住民や観光客にものづくりや地域の魅力をアピ
ールすること等を目的として、2011年から「すみだ川ものコト市」が開
催されています。
企画・運営は、区内外の有志からなる実行委員会と30名を超えるサポ
ーターによる「手作り市」とのことです。
2016年10月22日(土)には、第11回「すみだ川ものコト市」が東京ス
カイツリーにほど近い牛島神社境内と隅田公園内で開催されました。
今回は100を超える作り手と飲食店が集結する過去最大の規模となった
そうです。こだわりの手作り作家や職人の方等の発表の機会にもなる手
作り品の販売や「ものづくり」ワークショップ、人気の地元飲食店によ
る特別メニュー提供や音楽ライブ等も行われ、大勢の来場者で賑わって
いました。
また、この日は地域の出展者の方(福島・いわきのご出身)により
「ふくしまオーガニックコットン」の製品も出品・販売され、多くの人が
足を止めていました。
「モノづくりの真ん中で息づくコトとの出会いを橋渡し」をモットー
とするすみだ川ものコト市。
次回は明年10月7日(土)に開催される予定とのことです。
[参考]
すみだ川ものコト市
—————————————————————-
◆ ほんのさわり
食や農の分野について、考えるヒントとなるような本の「さわり」
だけを紹介します。
—————————————————————-
−西田栄喜「小さい農業で稼ぐコツ」(2016.2、農山漁村文化協会)−
著者は石川・能美市で「日本一小さい専業農家・風来」を経営されて
いる通称・源さん。
その経営面積は30aと日本平均の8分の1で、4棟のハウスと自宅内の店
舗兼加工所により「田舎で家族5人が暮らしていくには十分」な1200万円
を売り上げているそうです。
大学卒業後、バーテンダーやホテルの支配人等をされていた著者は
「命の元である食を育てる農業こそ、人を幸せにできる究極のサービス
業」と思い、1999年、新規就農されました(初期投資は自己資金の140万
円のみ)。
野菜等を載せて住宅地等を回る「引き売り」から始められたそうです。
近くに大勢の消費者がいることが日本の特徴であり、そのメリットを最
大限に活かせるのが加工品を含む直売とのことです(現在はネット販売
が中心とのこと)。
また、著者は畑が小さければ時間もコスト(機械投資等)もかからな
い(スモールメリット)とし、「小さいからこそこだわりを持つことが
必要」「小さいからこそできるこだわりがある」という「ミニマム主義」
を提唱されています。
そして、農家になって自然に対する感謝の思いや畏怖を実感している
という著者は、「農は価値観を変える扉」とし、「命の価値観を共有で
きる輪が広がれば」と願っておられるそうです。
この野菜に加工、直売を組み合わせた方法(6次産業化)が、米や畑作
物、畜産など他の作目に単純に当てはめることは困難かもしれませんが、
いずれにしても、日本の農業や食料供給のあり方等について大きな示唆に
富む著作です。
何しろ評論ではなく、現実に著者が取り組んでおられる内容ですから、
大きな説得力があります。
なお、著者は本年9月、続編とも言える『農で1200万円!−「日本一小
さい農家」が明かす「脱サラ農業」はじめの一歩』を上梓されました。
これも読むのが楽しみです。
[参考]
西田栄喜「小さい農業で稼ぐコツ」(2016.2、農山漁村文化協会)
http://shop.ruralnet.or.jp/b_no=01_54015136/
風来
西田栄喜「農で1200万円!−『日本一小さい農家』が明かす『脱サラ
農業』はじめの一歩」(2016.9、ダイヤモンド社)
http://www.diamond.co.jp/book/9784478069820.html
—————————————————————-
◆ 情報ひろば
拙ウェブサイトやブログの更新情報、食や農に関わる各種イベント
の開催情報等をお届します。
—————————————————————-
▼ブログ「新・伏臥慢録~フード・マイレージ資料室から~」更新情報
○ 農土香ツアー @山梨市牧丘町等
(10/12)
http://food-mileage.jp/2016/10/12/
○ 岩殿城、西原ふるさと祭り (10/16)
http://food-mileage.jp/2016/10/16/
○ SJFアドボカシーカフェ「難民と生きる」 (10/23)
http://food-mileage.jp/2016/10/23/
○ 「ご近所から未来を考える」「すみだ川ものコト市」など (10/26)
http://food-mileage.jp/2016/10/26/
▼ 筆者が参加予定または関心のあるイベント等を勝手に紹介します。
なお、既に満席の場合等がありますので、参加を希望される際には
必ず事前に主催者にお問い合せ下さい。
○ ドキュメンタリー映画
「ビハインド・ザ・コーヴ~捕鯨問題の謎に迫る~」上映会
日時:11月3日(木)10:00~15:00
場所:渋谷ユーロライブ(東京・渋谷区円山町1)
主催:: 八幡名子さん、八木景子さん
(詳細、お問合せ等↓)
https://www.facebook.com/events/687279751429572/
○ 福島県沿岸の有機農業生産者を訪ねる旅
~原発事故を乗り越えて農の復興へ(受付締切り)
日時:11月5日(土)~6日(日)
場所:福島・南相馬市、相馬市、新地町
主催:CSまちデザイン
(詳細、お問合せ等↓)
○ 第6期江戸東京野菜コンシェルジュ育成講座総合コース(受付締切り)
3日目
日時:11月12日(土)10:30~16:30
場所:小金井市商工会館(東京都・小金井市前原町3)
主催:江戸東京野菜コンシェルジュ協会
(詳細、お問合せ等↓)
https://www.edo831.tokyo/kouza/1490
○ はたけっとまーけっと2016~地9樹~
日時:11月13日(日)10:00~16:00
場所:山梨・上野原市西原(さいはら)集落
主催:はたけっとまーけっと実行委員会
(詳細、お問合せ等↓)
—————————————————————-
*今夜のコツコツ小咄。
「週末になると財布の紐が緩んじゃうね。日銀みたいだな」
「えっ、どういうこと?」
「金曜(金融)緩和だから」
注:「コツコツ小咄」は、拙FBページにて土日祝を除く毎日、
絶賛(?)投稿中です。
https://www.facebook.com/tetsuya.nakata.7
* 次号No.106は、11月14日(月)[神無月十五日]の配信予定です。
より有用な情報の発信に努めていきたいと改めて考えています。
読者の皆さまのご意見、ご要望をお聞かせ頂ければ幸いです。
* 和暦については、高月美樹さん『和暦日々是好日』を参考にさせて
頂いています。いつもありがとうございます。
* 本メルマガは個人の立場で配信しているものであり、意見や考え方
は筆者の個人的なもので、全ての文責は中田個人にあります。
================================================================
F. M. Letter −フード・マイレージ資料室 通信−【ID;0001579997】
================================================================
◆ 発行者:中田哲也