Refugee Talk – 難民を学ぶタベ

 2016年12月14日(水)。
 赤穂浪士討入りの日は東京・渋谷区神宮前へ。今年も表参道はイルミネーションで飾られています。
 19時30分からスマートニュース(株)2Fイベン トスペースで開催されたのは Refugee Talk-難民を学ぶタベ(年末特別版)
161214_1_convert_20161217013057.jpg
 主催は、日本で生活している難民への法的・生活支援や調査・研究活動を行っている認定NPO法人難民支援協会(JAR)
 Refugee(難民)Talkとは、毎月テーマを変えて日本に逃れてきた難民が直面している問題や難民支援協会の支援活動を様々な角度から紹介し、参加者の間で「今できること」 を考えるというイベントとのこと。
 去る10月18日(火)、東京・文京区で開催されたSJF主催のアドボカシー・カフェでJARの方から話を伺っていたのです。
161214_2_convert_20161217013125.jpg
 若い方を中心に参加者は100名ほど。
 開会に当たり、まずJARのスタッフの方からプレゼン。
 「日本にはネットカフェ難民や就職難民等の言葉があるが、難民とは言葉(Refuge)通り避難している人のこと。自分の命を守るため、やむをえず母国を離れ他の国に避難せざるを得ない人の数は、現在、世界で6530万人(UNHCR)と史上最悪。 一方、2015年に日本で難民認定されたのは27人。申請者は7586人おり、平均3年位待っ ている状況」
 「シリア難民の受入れについてはヨーロッパ等からのネガティブな情報も多いが、カナダのトルドー政権など多くの国が前向きに対応している。しかし現在、日本で認定されているシリア難民は6名のみ(申請は60人)。今日はそのお一人から話を伺いたい」
161214_3_convert_20161217013149.jpg そしてシリア難民のAさん(24歳、男性)が紹介されました。英語での講演をボランテ ィアの女性が逐語通訳して下さいます。
 自ら作成されたというスライドを用いてAさんのプレゼンが始まりました。
 冒頭、「日本とシリアは9000kmも離れており、日本人はシリアと聞くと砂漠ばかりと誤解している」とし、戦争前のシリアの様子が映写されました。美しい自然や歴史ある町並み。それらが戦争後の(現在の)写真と対比されます。
 続いて、空爆を受けたホムス(シリア西部の都市)の動画が映写されました。ガレキのなかで家族を失って慟哭する男性や血を流す子ども達の姿に声を失います。
 Aさん「こんな映像をみせてごめんなさい。でも、今シリアで何が起こっているかを想像してもらいたかった」。
 ダマスカス出身、大学で英文学を学んでいたAさんの自宅も空爆を受け、母親、妹とともに国外に避難することになり、エジプト等を経て、2013年、日本人と結婚したおじが住 む日本に来られたそうです。
 来日当初の6ヶ月間がつらかったとのこと。
 カタールで菓子職人として働いていた父親もシ リアに帰国して職を失い、元学生の自分が4人家族の生計を支えなければならなかったそうです。 しかも最初の建設工事現場で怪我をして入院。
 その後は飲食店等で働き、申請から1年半後に母、妹とともに難民として認定されたそうです(シリア人として最初に認定された3人とのこと)。父親も呼び寄せることができ、現在は妹は中学に通い(3年生)、母親も働いているそうです。
 ご自身は日本の大学を受験しており、趣味のサッカーも再開することができたとのこと。
 後半は、会場の参加者やJARのスタッフの方からの質問に答えるかたちで進められていきます。
161214_4_convert_20161217013207.jpg 難民として日本で生活することについては、「日本の人々は親切で入院した病院も清潔だった。しかしヨーロッパ等に避難している友人は最初から住居や職は確保されていたと聞くと、日本での最初の6ヶ月間はつらかった」との回答。
 JARのスタッフの方によると、Aさんはポジティブで社交性もあり、TVインタビューを受ける等して情報発信しているが、ネット配信されている動画には「子どもにテロ リズムを教えないでくれ」「難民に税金を使うな」等の心ないコメントも寄せられているとのこと。
 これについてAさんは「ネット上では色んなことを言う人がいる。私には日本人の友人も多くいる」とのコメント。
 将来はシリアに帰る予定かとの質問には、
 「一日も早くシリアに再び平和が訪れ、外国からも訪ねてもらえる国になることを祈っている。そうなれば自分自身も真っ先に足を運びたい。しかし、それまでには長い時間がかかるだろう。正直、自分はシリアに帰国して生活できるとは思っていない」との回答。
 なぜ貴方の家族だけが認定されたのかという質問には、JARのスタッフの方から、
  「JARは現場で700人を支援しているが、正直、認定を受けている27人が必要性の高い順に選ばれたとは思えない。申請するには膨大な証拠書類を日本語で提出する必要もある。認定基準の透明性の確保が日本の課題」との説明。
 本年5月の伊勢志摩サミットで安倍首相がシリアからの留学生を5年間で150人受け入れると表明したことへの評価については、Aさんは
 「数が多いか少ないかは何とも言えないが、大きな1歩。日本で難民申請している以外に留学やビジネスで来日して帰れなくなっている人たちが500人ほどいる。 せめてこの人達を受け入れてほしい」との回答。
 最後に将来の計画や夢について問われると、
 「大学卒業後のことはまだ決めていないが、現在もNHK等で携わっているアラ ビア語-英語の通訳の仕事は続けたい」 とし、さらに、「プロサッカー選手になりたいという夢も捨てていない」との答がありました。
 閉会に当たってJARのスタッフの方から「お願いしたい3つのアクション」として、 LUSHキャンペーン(期間限定の石けん)、チャリボン(古本等の提供)、スペシャルサポ ーターの案内がありました。
 閉会後も会場には多くの参加者が残り、AさんやJARの方と話したり、記念撮影したりして熱気に包まれていました。
 外に出ると冷気が肌を刺します。
161214_6_convert_20161217013243.jpg
 冴え冴えとした満月の下のイルミネーション。
 先ほど動画でみたホムスの光景との余りの落差に、背中がうそ寒く感じられたのは冷え込みのせいだけではなかったようです。
 【ご参考】
◆ ウェブサイト:フード・マイレージ資料室
 (プロバイダ側の都合で1月以降更新できず、明年1月には閲覧もできなくなるため、現在、移行作業中です。)
◆ メルマガ :【F. M. Letter】フード・マイレージ資料室 通信
(↓ランキング参加中)

人気ブログランキングへ