【ブログ】第7回ロータス寺市、「21世紀の豊かさ」シンポジウム

2017年1月14日(土)。
全国的に寒波が襲来し北日本や日本海側では大雪とのニュース。東京地方は晴れているものの気温は低く、雲行 きが変な感じです。
午前中に自宅を出て東京・西新宿へ。JR新宿駅西口や西武新宿駅からほど近い常円寺を会場に、ロータス寺市というマルシェが開催されています。
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会場のお堂の中に入ってみると、こだわりの農産物や加工品、手工芸品等が所狭しと出店。お寺という日本の伝統的な場に国際色豊かなブースも並び、何とも不思議で素敵な空間が多くの人で賑わっています。
これからも年数回のペースで開催されるとのこと。
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地下鉄を乗り継いで港区白金台へ。
加藤清正を祀ったお堂がある覚林寺を右にみつつ(つい、お寺に注目が向きます。)進んだところにあるのが明治学院大学の白金キャンパス。
13時30分から本館2階の教室で開催されたのは、「21世紀の豊かさ-経済を変え、真の民主主義を創るために」と題するシンポジウム(主催:出版社コモンズNPO法人アジア太平洋資料センター(PARC)、後援:明治学院大学国際平和研究所)。
同名の書籍の出版を記念したものとのこと。
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(以下、文責は中田にあります。とても全ては紹介できていません。)
冒頭、主催者を代表して大江正章さん(コモンズ代表、PARC共同代表) から、以前おられた出版社で担当された玉野井芳郎先生の地域主義や「共」の考え方に触発された経験等を紹介されつつ挨拶。
続いて、共同司会者でもある中野佳裕先生 (国際基督教大学社会科学研究所)から、スペイン語とフランス語の原著に日本の論文を追加して翻訳・出版したという書籍の経緯や内容について紹介がありました。
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続いて、日本人著者の4名からの報告。
まず、広井良典先生(京都大学こころの未来研究センター)からは、資本主義の本質は「市場経済プラス拡大・成長」で私利の追求を肯定したもので、人生前半の社会保障とストックに関する社会保障という2つの課題が明らかになってきていること等を指摘。
そして、近世までの日本には相互扶助の伝統が脈々と流れていたこと、現在もそのような事例(例えば恋する豚研究所)が百花線乱のように現れてきていること等を紹介されました。
続く吉原直樹先生(大妻女子大学)は、福島・会津若松市及びいわき市に大熊町から避難されている方たちの仮設住宅自治会に通われている経験を元に、「サロン」ではボランティアなど他者との出会いを通した対話的なコミュニティ(創発するコミュニティ)が形成されつつあることを紹介されました。
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千葉眞先生(国際基督教大学)からは、ハイエクが晩年「公共性を失った資本主義は自滅する。金融資本主義体制は自由民主体制と整合しない」と言ったこと、民主主義は放物線を描き格差社会化につながるという学説もあること等を紹介され、市民が声を上げ市民が参加する民主的なヘゲモニーを作っていくことが必要と訴えられました。
最後に中野佳裕先生(兼司会)が登壇。
21世紀はこれまで資本主義が壊してきたものを修復していくことが重要であるとし、玉野井芳郎の「地域主義」、中村雄二郎の「南型知」(みなみがたち)の考え方を紹介しつつ、「足元の地域社会にある文化や歴史の痕跡や自然との結びつきをコスモロジーの観点から深く掘り下げていくことで、新しいコミュニティのビジョンが生まれるのではないか」と主張されました。
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休憩を挟んだ後半は、報告者とコメンテータが壇上に会してラウンドテーブル形式で議論。
コメンテータの幡谷則子先生(上智大学)からは、異文化間対話に立脚した多元的民主主義の重要性について言及しつつ、望ましいコミュニティのあり方や「左翼」の意義等について報告者に質問。
続いて鴫原敦子先生(日本平和学会、宮城県在住)からは、現在、避難者は支援の切り捨てに直面しており、日本は生存権を守ることを放棄しているのではないか。また、資本の論理で被災地に火力発電所が集中立地している現状等について問題提起がありました。
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その後、報告者との間で議論が深められていきます。
広井先生は「コミュニティには共同性と公共性がある。日本は前者の農村型、同質的な傾向が強いが、後者の都市的コミュニティも重要。『南型知』の良さも活かしつつ、集団を超えて個人がつながることが重要」等のコメント。
千葉先生からは「現代は右翼・左翼などイデオロギーに基づく従来型の類型論が機能しない時代。ラディカル・デモクラシーの思想が重要」。
これに対して中野先生からは、「政治的には左翼という対立軸が必要ではないか」とのコメント。
広井先生 「左翼あるいは野党は、オルタナティフなビジョンを提起できていない。豊かな成熟社会のビジョン、幸せを共有していこうという動きが日本には見えない。アメリカとヨーロッパも対立があり、日本ではアメリカ型の言説が強すぎる」。
吉原先生「資本の論理による復興だけではなく小規模なかたちもあり、複線型になりつつある のでは。それより復興を急ぎすぎている。避難者が多様な選択ができるまで、 何十年でも待てるような環境作りが必要」。
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会場からの質問も受けつつ広範な議論が行われましたか、残念ながら10分の延長位ではとても時間が足らなかったようです。
最後に中野先生から、
「専門分野の枠を超えてビジョンを考えていくことが重要。今日はそのような議論の出発点になったのでは」等のまとめがありました。
そして、「最後にサプライズがあります。黒衣である出版者として、これまで多くの本を世に出され続けてきた大江さんに、20周年を記念して花束と記念品(実家にあった酒器)を贈呈したい」と。
満場の拍手のなか、花束等を受け取った大江さんは感無量の様子でした。
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その大江さんは、当日、配布されたシンポジウムのパンフレットのなかでこのように述べられています(抄録)。
「本書の刊行と本日のシンポジウムは出発点に過ぎません。国家レベル・グローバルレベルの制度変革の構想、地域主義や福祉社会の市民レベルでの具体化などの論点について、皆様とともにこれから考究していきたいというのが、私の想いです」。
これからも素晴らしい本の出版を、どうぞよろしくお願いします。
【ご参考】
◆ ウェブサイト:フード・マイレージ資料室
(プロバイダ側の都合で昨年1月以降更新できず、今月一杯で閲覧もできなくなるため、現在、鋭意、移行作業中です。)
◆ メルマガ :【F. M. Letter】フード・マイレージ資料室 通信
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