コツコツ小咄(2017.1/23~27)、コツコツ小説「空き缶」(1/12)

2017年1月27日(金)
和暦・大晦日のコツコツ小咄。

「新年を迎えると思うと、心の底に溜まった泥が取り除かれるような気分だね」
「春節(浚渫)ですから」

撮影地:東京・東村山市(2017.1/27)
明日は和暦の元旦。通勤途中の蝋梅は満開、梅は咲いている木もあれば固い蕾の木も。
年が改まると私自身にも変化がありそう(?)です。

 


2017年1月26日(木)
冷え込みも緩みそうな今夜のコツコツ小咄。
「ショウガ入りのジェラートなんて初めてだわ!」
「新(ニュー)製品ですから」

撮影地:東京・東村山市(2017.1/22)
東京・八王子の磯沼牧場の牛乳と、細かく刻んだ八王子ショウガ(江戸東京野菜)のコラボレーションは何とも爽やかな風味です。お問合せは多摩・八王子江戸東京野菜研究会まで。


2017年1月25日(水)
嬉しい今夜のコツコツ小咄。

「使者を迎えられた時は、どんなお気持ちでしたか?」
「緊張しました。昇進(小心)だけに」
撮影地:東京・西東京市(2015.11/12)
土俵上ではふてぶてしい態度も繊細な一面もあるらしい新横綱。ますますの活躍を期待したいと思います。
あっ、写真はツナ(マグロ)です。


2017年1月24日(火)
冷え込みが続く今夜のコツコツ小咄(北日本や日本海側の皆さま、どうぞお気をつけ下さい)。


「いやあ~、冷えるね」
「こんな夜は、やっぱりこれが圧巻(熱燗)だね」

撮影地:東京・東村山市(2013.1/14)
この日は東京も雪でした。ベランダに徳利と猪口を並べてみました。


2017年1月23日(月)
寒い日が続く週始めのコツコツ小咄。

「彼とは幼馴染で、よく一緒におでんを食べたよ」
「竹馬(ちくわ)の友なんですね」

撮影地:東京・東久留米市(2017.1/21)


また寒波、せめて写真で温まり下さい。どうぞご自愛を。

 

 


2017年1月12日(木)
今夜のコツコツ小説(たぶん1回きり)。
一応、実話に基づきます。長文ですので、お時間があり興味を持って下さった方以外はスルーして下さい。
(写真の撮影地は福島・広野町、2016.12/18)


**************
「空き缶」
ある雨の冬の日暮れである。私はJR総武線の電車の隅に腰を下ろして、ぼんやり新聞を広げていた。
暗くなった空からは冷たい雨が落ち、窓をぬらしていた。車内には誰かが置き去りにしていったコーヒーの空き缶が一つ、電車が動くたびにからからと音を立てて転がり回っていた。誰もが無視していた。
これらは、その時の私の心持ちと、不思議なくらい似つかわしい景色だった。私の頭の中には、云いようのない疲労と倦怠が影を落としていた。

 四ツ谷の駅で二十三、四の女性が一人、発車間際に慌しく乗り込んできて私の前に立った。新聞に影ができ、私は女性の顔を一瞥した。
茶髪でピアスを開け、両耳にイヤホンを挿しこみ、ネイルをした指で無心にスマホをいじっている。私は、この女性の派手で軽薄なイメージを好まなかった。それに電車という公共の場で自分の世界に閉じこもり、他者に心配りしないような態度も、やはり不快だった。

それから数分が過ぎ、どこかの駅の手前で電車が減速した際、車両の後ろの方から不快な音とともに空き缶が一直線に転がってきた。そして目の前に立つ女性の足に当たって止まった。
その瞬間である。
女性はスマホをいじっていた手をつと伸ばすと、足元の空き缶を拾い上げた。そして回りを見渡して適当な置き場所がないと悟ると、そのまま手に持ち続けたのである。
私は思わず息を呑んだ。そして刹那に理解した。床に置くと空き缶は再び転がり始め、皆が不快な思いをする。であれば、自分が降りる駅まで持っていこうと彼女は心を決めたのだ。

私の心には、切ないほどはっきりとその姿が焼き付けられた。そして、不思議な朗らかな心持ちが湧き上がってきた。私は再び頭を上げて、別人のように女性を見た。彼女は相変わらず音楽を聴きながら、片手でスマホをいじっている・・・。

私が降りる御茶ノ水駅が近づいてきたが、彼女の姿はそのままである。私は勇気を出して「私が捨てておきますよ」と声をかけた。その時、彼女は驚いたようにイヤホンを外し、はにかむように小さな声で「すみません」と空き缶を手渡してくれた。
私はこの時初めて、云いようのない疲労と倦怠とを、そうして不可解な、下等な、退屈な人生を忘れることができたのである。(平成二九年一月)
**************
最後まで読んで下さり、有難うございました。