【メルマガ】F.M.Letter No.117

◇フード・マイレージ資料室 通信 No.117◇
  2017.4/26(水)[卯月朔日]発行
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◆ F.M.豆知識 木材自給率等の推移
◆ O. カレント みどりの日
◆ ほんのさわり 三浦しおん『神去なあなあ夜話』
◆ 情報ひろば ブログ更新、イベント情報等
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 今日から和暦では卯月(うづき)。
 いつも参考にさせて頂いている高月美樹さん『和暦日々是好日』によると、卯月は「花と鳥の月」。稲の種を播く「植え月」とも言うそうです。緑あふれるゴールデンウィークを控え、今号は森について特集してみました。
 時の流れを体感するため、和暦の朔日(新月の日)と十五日(ほぼ満月の日)に配信している本メルマガ、今回は卯月朔日の配信です。

◆ F.M.豆知識
 食や農に関連して、特に私たち消費者にちょっと役に立つ、あるいは考えるヒントになるような話題を毎回コツコツと紹介していきます。

-木材自給率等の推移-
 食料自給率だけではなく、木材についても自給率という指標があります。

まずは食料自給率のおさらいから。
 食料自給率を総合的に把握する指標にはカロリーベースと生産額ベースの2種類があり、併用されています。これは、前者には野菜・果実や畜産物の生産活動が、後者には国内の畜産が輸入飼料に依存している等の事情が、それぞれ十分に反映されないという事情があるためです。
 2015年度の食料自給率は生産額ベース(リンク先の図72の赤い折れ線グラフ)で66%、カロリーベースで39%(青)となっていますが、両者とも長期的には低下傾向で推移しています。
 http://food-mileage.jp/wp-content/uploads/2017/04/72_mokuzai.pdf

さて、緑の折れ線グラフが木材の自給率です。これは体積ベース(材積量、丸太換算)で計算されます。
 1960年頃は90%近くあった日本の木材自給率は、高度経済成長の過程で木材に対する需要が拡大を続けるなか、丸太の輸入量が増加する一方で国内の林業生産が低迷したことから2000年頃には20%を割り込む低い水準にまで低下しました。
 しかし近年は上昇傾向にあり、食料自給率とは異なる動きとなっています。

これは、輸出国の丸太輸出規制や違法伐採対策により木材輸入量が減少する一方、国内の人工林資源の充実、製材・合板原料としての国産材利用の増加、木質バイオマス発電施設の増加等から国内生産量が増加傾向にあるためです。

日本は世界でも有数の森林国です。
 森林率(陸地面積に占める森林面積の割合)は68.5%と、先進国のなかではフィンランド(73.1%)に次いで2位です(世界全体では30.6%)。
 国内の豊かな森を守り未来につないでいくためには、国産材に対する需要が増加することが必要ですが、まずは私たち一人ひとりが身近なところで「森に親しむ」ことから始めるのが大事かもしれません。

[参考]
 「平成27年木材需給表」の公表について (2016年9月、林野庁)   
  http://www.rinya.maff.go.jp/j/press/kikaku/160927.html
 食料自給率・食料自給力について(農林水産省ホームページ)
  http://www.maff.go.jp/j/zyukyu/zikyu_ritu/011_2.html
 ウェブサイト「フード・マイレージ資料室-F.M.豆知識」
  http://food-mileage.jp/category/mame/

◆ オーシャン・カレント -潮目を変える-
 食や農の分野について先進的かつユニークな活動に取り組んでおられる方やトピックス等を紹介します。

-みどりの日-
 今年も間もなくゴールデンウィーク。
 しかし4月29日の「昭和の日」(昭和天皇の誕生日)、5月3日の「憲法記念日」(日本国憲法が施行された日)、5月5日の「子どもの日」(端午の節句)に比べると、5月4日の「みどりの日」の趣旨や由来はあまり知られていないかも知れません。

みどりの日とは、「自然に親しむとともにその恩恵に感謝し、豊かな心をはぐくむ」日とされています(祝日法)。
 実はみどりの日は、1989年から2006年の間は4月29日でした。
 今上天皇の即位により天皇誕生日が12月23日となった時に、植物にも造詣の深かった昭和天皇の誕生日であった4月29日を「みどりの日」として祝日として存続することとしたのです。
 その後、2007年には4月29日が「激動の日々を経て、復興を遂げた昭和の時代を顧み、国の将来に思いをいたす」という「昭和の日」に改められたため、「みどりの日」は同じゴールデンウィーク中の5月4日に移されて現在に至っているのです。

このような経緯はあるものの、ゴールデンウィークの頃は、正に緑が萌える素晴らしい季節であることは間違いありません。
 毎年4月15日から5月14日までは「みどりの月間」とされ、関連する各種の行事が全国各地で実施されます。5月13日(土)、14日(日)に東京・日比谷公園で開催される「みどりの感謝祭」では、木のクラフト作り、ツリークライミング、ジビエ料理の販売等が行われます。また、各地の国公立公園等でも無料開放の日が設定されています。
 この連休中、ぜひ身近な「みどり」に触れにいきませんか。

[参考]
 政府広報オンライン「みどりの月間中の主な緑化関係行事等」
  http://www.cao.go.jp/midorisho/
 第27回 森と花の祭典 みどりの感謝祭
  http://midorinokanshasai.com/
 ウェブサイト「フード・マイレージ資料室-オーシャン・カレント」
  http://food-mileage.jp/category/pr/

◆ ほんのさわり
 食や農について考えるヒントとなるような本の「さわり」だけを紹介します。

-三浦しおん『神去なあなあ夜話』(2012年9月、徳間文庫)-
 http://www.tokuma.jp/bookinfo/9784198941178

直木賞・本屋大賞作家の三浦しをんさんによる「青春林業小説」です。
 主人公の平野勇気クン(18歳、横浜在住)は、高校卒業後、適当にフリーターでもして食っていこうと思っていたのが、ひょんなことから三重県の山奥にある神去村(かむさりむら)に林業研修生として放りこまれてしまうんだ。
 ちなみに「なあなあ」とは、「ゆっくり行こう」「まあ落ち着け」ってニュアンスの村の人たちの口癖。神去の人たちが「なあなあ」を大事にしているのは、百年単位でサイクルする林業に携わっている人が多いためらしい。

都会っ子の主人公には林業の仕事はキツく、ダニやヒルも襲来するし、ケータイも使えずコンビニもない田舎の生活にも馴染めない。最初のうちは何とか逃げ出すことばかり考えていた。
 しかし、山を守る男たちやその家族と交流するなかで、次第に森の素晴らしさに惹かれ、夏休みの頃には「一時だって神去村から離れたくない」と思うようになったんだ。

村の長老・三郎じいさんの
「俺たちは山にお邪魔させてもらっとるちゅうことを忘れては、神去の神さんに怒られるねいな」、
 やはり林業に従事する巌さん(子どもの頃、神隠しにあったらしい!)の
「手入れもせんで放置するのが『自然』やない。うまくサイクルするように手を貸して、いい状態の山を維持してこそ、『自然』が保たれるんや」といった言葉も出てくる。

そして終章の主人公の独白。
「俺は多分、このまま神去村にいると思う。林業に向いているかどうか、まだわからない。このさきの展望が開けるかどうかも、はっきりしない」
「たしかなのは、神去村はいままでもこれからも、変わらずここにあるってことだ」
「神去村の住人は、『なあなあ』『なあなあ』って言いながら、山と木に包まれて毎日を過ごしている。虫や鳥や獣や神様、神去村にいるすべての生き物と同じように、楽しく素っ頓狂にね」

仕事や恋愛を通した勇気クンの成長ストーリーにハラハラ、ドキドキしながら、日本の林業や山村の現状と展望についても学べる素晴らしい小説です。

[参考]
 ウェブサイト「フード・マイレージ資料室-ほんのさわり」
  http://food-mileage.jp/category/br/
◆ 情報ひろば
  拙ウェブサイトやブログの更新情報、食や農に関わる各種イベントの開催情報等をお届します。

▼ 拙ブログ「新・伏臥慢録」更新情報
○ 飯田泰之先生「人口減少下の地域創生」 (4/21)
  http://food-mileage.jp/2017/04/21/blog-12/

○ 「生きたい人生を生きるメソッド-半農半X」(アースディ)(4/24)
  http://food-mileage.jp/2017/04/24/blog-13/

▼ 筆者が参加予定または関心のあるイベント等を勝手に紹介します。
  既に満席の場合等がありますので、参加を希望される際には必ず事前に主催者等にお問い合せ下さい。

○ 三鷹緑化センター夏野菜苗物市
 日時:4月18日(火)~5月5日(金)
 場所:JA 東京むさし三鷹緑化センター(東京・三鷹市新川6)
 (詳細、お問合せ等↓)
  https://www.facebook.com/events/275252806218492/

○ みんなの有機農業公開講座
 (宮沢賢治の有機世界を求めて-最終回)
 日時:4月28日(金)18:30~21:00
 場所:文京区男女平等センター(文京区本郷4)
 話題提供:舘野廣幸さん(栃木、有機農家)
 主催:日本有機農業研究会.
 (詳細、お問合せ等↓)
  http://www.joaa.net/moyoosi/mys-217-0428.html

○ 世田谷区の屋敷林 お別れ製材ワークショップ
 日時:5月7日(土)9:30~17:00
 場所:世田谷区宇奈根3
 主催:マチモノ(街の木を活かすものづくりの会).
 (詳細、お問合せ等↓)
  http://machimono.web.fc2.com/event/sawingworkshop/sawingworkshop03/sawingworkshop03.html

○ 第27回 森と花の祭典 みどりの感謝祭
 日時:5月13日(土)~14日(日)13:00~16:00
 場所:東京・日比谷公園
 主催:みどりの感謝祭運営委員会
 (詳細、お問合せ等↓)
  http://midorinokanshasai.com/

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*今号のコツコツ小咄。
「東京の音階は、ドレミファ、の次は、シドなのよ」
「えっ、そうなの」
「東京には、ソラ(空)がないもの」
注:「コツコツ小咄」は拙FBページにて土日祝を除く毎日、絶賛(?)投稿中です。
  拙ウェブサイトにも掲載しています。
  http://food-mileage.jp/category/iki/

* 次号No.118は、5月10日(水)[卯月十五日]の配信予定です。
 より有用な情報の発信に努めていきたいと改めて考えています。
 読者の皆さまのご意見、ご要望をお聞かせ頂ければ幸いです。

* 和暦については高月美樹さん『和暦日々是好日』を参考にさせて頂いています。
 いつもありがとうございます。
  http://www.lunaworks.jp/

* 本メルマガは個人の立場で配信しているものであり、意見や考え方は筆者の個人的なもので、全ての文責は中田個人にあります。
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◆ F. M. Letter -フード・マイレージ資料室 通信-【ID;0001579997】 
 発行者:中田哲也
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