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農林業センサスによると、2015年の農業経営体(農家及び組織)の数は全国で138万経営体、うち都府県には134万経営体あります。
これを経営耕地規模別にみると、0.5ha 未満が23%、0.5~1haが33%と、1ha未満の経営体が過半を占めています。一方、10ha 以上の経営体は全体のわずか2%に過ぎません。
このように、日本の農業経営体の多くは小規模経営なのです。
ちなみに平均経営面積でみると2.5haですが、これはアメリカの176ha、EU28か国平均の16ha等と比べると大きな格差があり、規模拡大等による生産性の向上と農業の競争力強化が日本の農業政策の大きな柱となっています。
農業経営の生産性の現状を示したのが冒頭の図76です。
これによると、家族農業労働1時間当たり農業所得(労働生産性)は、0.5ha未満層では721円、0.5~1ha層では361円に留まっていますが、規模が拡大するに連れて上昇し、10ha以上層では2,536円と大きなものとなっています。
つまり労働生産性の向上の面では、規模拡大は非常に有効な手段であることが伺えます。
一方、経営耕地面積10a当たり農業所得(土地生産性)をみると、0.5ha未満層が231円と最も高くなっており、1ha以上では規模間の格差はあまり大きくなく、10ha以上層では68円とやや减少しています。
このように、土地生産性と労働生産性とでは大きく様相は異なるのです。
これまで日本の農政は(あるいは他の産業政策も)、労働生産性の向上を主眼として進められてきました。生産性の向上とは、すなわち労働生産性のことを指していたのです。
ところが、広井良典先生(京都大学こころの未来研究センター教授)が以下のような興味深い論点を提起されています。
経済が成熟化し「定常化社会」に移行しつつあるなか、多くの先進国では生産性が上がりすぎた結果、構造的な生産過剰と失業の慢性化といった現状にある。これら問題を解決するためには、従来型の労働生産性の追求から、環境効率性(ないし資源生産性)の追求へのシフトが必要、と論じておられるのです。
労働生産性が低いということは、雇用吸収力が大きいことも示しています。
であるとすれば農業の分野においても、大規模経営の優位性は、これまでほど明白なものではなくなっているのかも知れません。
[参考]
農林水産省「経営形態別経営統計(個別経営)」
http://www.maff.go.jp/j/tokei/kouhyou/noukei/einou_syusi/index.html 広井良典『コミュニティを問いなおす」(2009.8、ちくま新書)
http://www.chikumashobo.co.jp/product/9784480065018/
ウェブサイト「フード・マイレージ資料室-F.M.豆知識」
http://food-mileage.jp/category/mame/
【F.M.Letter No.121, 2017.6/24】掲載