【ブログ】飯田泰之先生「経済学っぽい思考の技術」@明治大

2017年10月24日(火)の終業後は、東京・駿河台の明治大学へ。
 この日19時から開催されたのは、「経済学っぽい思考の技術-主観価値・合理性・統計の活用から得る新しい思考法について」。
 生涯学習拠点である「明治大学リバティアカデミー」のオープン講座です。

講師は飯田泰之先生(明治大・政治経済学部准教授)。1975年生まれの気鋭のエコノミスト・経済学者です。ここで飯田先生の講座を聴講するのは、4月17日(月)の「人口減少下の地域創生」に続いて2回目です。

講座は自己绍介から始まりました(文責・中田)。
 「もともとの専門はマクロ経済分析。東日本大震災の被災地にボランティア等で通ったことをきっかけに、最近は地域再生にも関心。シノドス(アカデミックジャーナリズム)、(公社)ソーシャル・サイエンス・ラボの理事など、色んなことをしている」

「大学で学ぶべき重要なことは『思考の型』を身につけること。「型にはまった思考(お決まりの情報処理プロセス)」は問題解決の入り口として重要。茶道や武道、あるいは『守破離』という言葉にも通じる。
 これは何の学問分野でも同じだが、経済学は特に「思考の型」を学ぶのに適している」

「経済学的な思考の基本的ステップとは、問題を取扱い可能なサイズまで分割すること→データで検証可能な仮説を構築すること→データにより検証すること。
 検証できない仮説であれば最初に戻るというフィードバックが重要」

「経営学が心理学や社会学等にも依存するのに対して、経済学は定型化志向が強い。
 経済学が目的とするのは社会全体の経済厚生の最大化であり、競争を通じて「より良いものを、より安く、より大量に」を目指す。一方、経営学の目的は企業利潤の最大化であり、差別化等により競争を避けることが基本」

「経済学の思考の基本は、稀少な対象を取り扱うこと(水とダイヤモンドのパラドックス)、人々は自身の「主観的な」満足度を最大化するという前提、そして個々の主体は合理的であるとの仮定。
 合理性の仮定とは「A君はどうすれば満足かを、A君以上に知っている人はいない」という意味で、全ての人が全ての知識を有しているという仮定(強い合理性)ではない」

「これらから導かれる経済学の最初の結論は、ノー・フリーランチ(あらゆる「得」には費用がかかること)と、自由な取引の優位性(自発的な取引は経済厚生を向上させる)。

「リチャード・セイラーがノーベル賞を受賞した行動経済学は『認知の歪み』を重視。
 所有効果とは、自分のものには愛着が出て過大評価するという傾向。双曲割引とは明日を待つことができないということで、人は明日の100万円より今日の99万円を選ぶことがある。
 しかし、これら歪みは取引が繰り返し行われると消えていく。プロ同士の取引に歪みは生じない」

「AI時代を迎え、データリテラシーがますます重要になっている。データの利用は思考にとって不可欠だが、かしこく利用することが不可欠。データの質を知ることも大切」

「歪みのない質のよい大量のデータ(ビッグデータ)を入手し、処理することが可能となった。そのため、偶然の関係性(オーバーフィッティング)を発見する危険性が格段に高まっている。
 今こそ、理論的な思考が重要になっている」

最後に、参考としてご著書『経済学講義』(ちくま新書)を紹介されました。経済理論の応用可能性に着目した入門書とのことです。

経済理論について本当に分かりやすく噛み砕いて説明して下さり、非常に参考になりました。
 ただ、1時間半という限られた時間であったため、やや物足らない(もう少し話を伺いたい)とも感じた講座でした。