【ブログ】映画『日本と再生』

2017年11月1日(水)の終業後は、東京・新宿区大久保の日本福音ルーテル東京教会へ。

この日、18時30分から開催されていたのは「教会で考える、原発神話からの『再生』」と題するイベント。
 NPO法人まちぼっとが、高木仁三郎市民科学基金、難民起業サポートファンドと協働し、日本福音ルーテル東京教会の協力の下に行っている「新宿市民ファンド連続企画プロジェクト」の一環です。

これまで貧困、難民、セクシュアルマイノリティ、多文化共生等をテーマに取り上げてきたとのこと。

19時前に到着した時は、映画『日本と再生』のダイジェスト版が上映されている最中でした。
 中国を含む世界各地では自然エネルギーが主流になりつつあること、日本の各地でも取組みが進んでいること等が紹介されています。

続いて、国際環境NGO FoE Japan の吉田明子さんから「パワーシフト・キャンペーン」の紹介(以下、文責中田)。

「パワーシフト・キャンペーンの目的は、政策に働きかけることと、再生可能エネルギーを選びたいという市民の声を可視化し広げていくこと。世界の動きと私たちの生活はつながっている」

「2016年4月の電力自由化から1年半が経過し、本年6月時点で新電力のシェアは11%に。再生可能エネルギーの供給を目指す電力会社が各地に24社あるが、まだ余り知られていない。口コミで広げるなど消費者の後押しが必要。切替えはインターネット等で簡単にできる」

「世界の大企業の多くが再生可能エネルギー100%を目指している。パワーシフトは、地域でお金を回すことにもつながる」等の説明がありました。

ここで河合弘之弁護士が到着され、挨拶がありました。
 『日本と再生』(及び前作の『日本の原発』)の監督で、高木基金の代表理事も務められています。

「25年ほど前から脱原発裁判に関わっていたが、負けてばかり。そろそろ止めようかと思っていたところに東日本大震災が発生し、神様に『逃げるな』と襟首を捕まれたように思った。脱原発に残りの人生を使うことを誓った」

「全国の仲間とともに裁判を闘い続けているが、なかなか脱原発が国民に浸透しない。そこで、自ら監督して映画『日本と原発』を製作した。これは全国1800回の上映会で10万人が観てくれた。
 ところが、観た人みんなから『原発の危険性は分かったけど、では、どうすればいいのか』と質問される。この問いに正面から答えるために製作したのが『日本と再生』。
 今日はダイジェスト版を観てもらったが、ぜひ、全編を観てもらいたい」

「原発と自然エネルギーは表裏一体。自然エネルギーを広げないと原発はなくならない。中国を始め、世界では自然エネルギーは大きな潮流になっている。もはやブームではない。政治家や経済人に対しては、自然エネルギーは儲かっているという話を含めて働き掛けていくことが必要」

ここで休憩に。
 河合先生は持参されたDVD(前作の『日本と原発・4年後』)を自ら販売。サインもされています。
 ビールやワインもあり(キャッシュオン)、教会でありながら宗教色はなく、また、脱原発という深刻なテーマを扱いつつも会場は気軽な空気が流れています。

休憩後は、法衣にギターを抱えた関野和寛牧師(ルーテル東京教会)が登場。現役のキリスト教会牧師による「牧師ROCKS」のメンバーでもあるとのこと。

「昨日は宗教改革500周年。マルティン・ルターが教会の扉に掲示した質問状は現代のツイッター以上に影響力があり、宗教だけではなく社会そのものを変えた。その翌日にこのイベントが開催されるのは象徴的」

「この教会の電気代も月25万円。俺の給料より高い。みんな良いことを言うだけではなく、カップやTシャツも買って下さい」等のトークを交えつつ(会場からは爆笑も)、数曲を熱唱。
 教会は、一気にロックコンサート会場の雰囲気に変わりました。

その後は、菅波 完さん(高木基金事務局長)の司会で河合さん、吉田さん、関野さんによる対談。

そのなかで河合先生は
「日本の社会問題のなかで全てに優先するのが原発。原発からの安全が社会の基礎。
 原発と闘うということは、原子力ムラという強固な権力構造、利益共同体を相手にするということで厳しい。自分でできることから始めることが大事」等のコメント。

会場におられた脱原発運動に取り組んでおられる宗教者の方からは、
「大きな宗教団体のほとんどは震災翌年までに脱原発宣言を出したが、現場での具体的な活動には浸透していない。教会を会場として使ってもらうなど、市民グループと有機的につながっているケースもある」

「原発立地地域では、反対者への差別や暴力など、人々の社会が壊されている。宗教者として、声も上げられず不正義に苦しんでいる人の側に立っていきたい」等の意見がありました。

最後に河合先生が
「自分は今73歳。平均すれば後13年の余命がある。その間に絶対に原発を止め、自然エネルギーの国家・社会を実現する。それに残りの人生の全てを賭ける」等の力強い言葉で締めくくられました。

この日頂いた資料の中には「日本と再生」上映会の予定も入っていました。
 直近では11月4日(土)に「さよなら原発・市川市民のつどい2017」が千葉・市川市であるというので、自宅からは少々遠いのですが出かけてみました。

会場のあるメディアパーク市川は、図書館や文学資料館が併設された大きな施設。本を重ねたオブジェが青空を突いています。
 隣接する文学ミュージアムでは「永井荷風展-荷風の見つめた女性たち」を開催中。荷風は戦後に市川に移住し、亡くなるまで住んでいたそうです。

この日は午前中の上映会(1回目)に続き、午後からはまず「いちかわ電力」の紹介。市民による再生可能エネルギーの普及をめざすNPO団体とのこと。

続いて「脱原発後の新エネルギー社会づくり」と題して、吉原毅さん(城南信用金庫顧問)と木村結さん(「東電株主代表訴訟」事務局長)による座談会。

その内容は多岐にわたりましたが、例えば吉原さんからは「FITの買取価格は下げられているが、現在の水準でも十分もうかる水準」とし、営農型太陽光発電による次世代農業モデル(ソーラーシェアリング)について紹介。

木村さんからは「違和感を覚えた報道があればテレビ局に電話をしている。良かったところはほめつつ意見を届ける。一人からできる直接民主主義」等の話がありました。

そして『日本と再生』2回目の上映。
 河合弁護士と飯田哲也さん(環境学者)が、ユーモアを交えた弥次喜多道中よろしく(失礼)、世界と日本の自然エネルギー普及の現場をめぐるドキュメンタリ。
 脱原発に徒労感を覚えているような人にも、希望と勇気を与えてくれる映画です。