【ほんのさわり】宮脇 昭『森の力』

宮脇 昭『森の力 植物生態学者の理論と実践』(2013.4、講談社新書)
 http://bookclub.kodansha.co.jp/product?isbn=9784062882040

本書は、1928年岡山県生まれの実践的植物生態学者(横浜国立大学名誉教授、公益財団法人 地球環境戦略研究機関国際生態学センター・終身名誉センター長)である著者が、「『森の力』を伝えておきたい」という思いで書かれた本です。

日本全国や世界の各地に足を運んで植生調査を実施するうち、著者は土地本来の森(潜在自然植生)が世界中から消え去りつつあることに大きなショックを受けたとのこと。
 宮脇先生によると、森は「いのち」を守る循環システムの母体(唯一の生産者)であるとのこと。つまり、森のおかげで私たち人間や動物は生きていけるのだそうです。

危機感を抱いた著者は、大企業等とも連携し、土地本来の森をよみがえらせる「ふるさとの森」づくりを始められました。これまでに国内外で1700カ所以上、4000万本以上を植樹されたそうです。
 世界トップクラスの技術者たちが、どんぐりから根が出て芽が出たという当たり前のことに感動していることに、逆に驚いたといったエピソードも紹介されています
 ちなみに、ふるさとの森の手本は各地に残されている鎮守の森とのこと。

また、関東大震災、阪神淡路大震災、東日本大震災の際には、土地本来の森は延焼を防ぎ、津波を受け止めたという事実も紹介されています。
 本書は、現在、東北の被災地で森の防波堤づくり(瓦礫を活かす森の長城プロジェクト)に取り組んでおられる著者の以下のような言葉で締めくくられています。
 「私はまだ85歳。いのちある限り皆さんと一緒に木を植え続けることを誓います。30年後の東北被災地での『ふるさとの森の同窓会』でみなさんと再会できますように」

[参考]
 ウェブサイト「フード・マイレージ資料室-ほんのさわり」
  http://food-mileage.jp/category/br/

F.M.Letter No.132掲載】