【ブログ】大塚洋一郎さん「食農交流で地方を元気に!」

2018年1月11日(木)の終業後は、東京・竹橋の毎日新聞東京本社へ。

この日18時30分から毎日ホールで開催されたのは「食農交流で地方を元気に!」と題する講演会。
 講師の大塚洋一郎さんは、旧科学技術庁、文部科学省、経済産業省大臣官房審議官等を歴任した後、2009年に早期退職し、NPO法人農商工連携サポートセンターを立ち上げられた方です。

これまで、大塚さんが主催されるイベント等には何度か参加させて頂いたことはありましたが、まとまって大塚さんの話を伺うのは初めてです。

18時40分頃に到着した時には、すでに講演は始まっていました。ちょうど、退職された経緯を話されているところでした。
 試飲という紙コップ(後に話にも出てきた「初舞台」という日本酒です。美味!)を頂いて席に着き、大塚さんの話に聞き入りました(文責・中田)。

「経済産業省の審議官として法案の作成、与党への説明等に携わっていたが、関戸美恵子さん(NPO法人起業支援ネット、故人)にお会いし話を伺ったのが一つのきっかけになった。元気で明るく、NPOは何と魅力的かと思った」

「辞めることを家族に相談した時は、妻も子どもも大反対。今は協力してくれているが。
 食べていく当てはなかったため、しばらく曽根原久司さんのところで働かせてもらえないかと、甲斐駒ケ岳の麓にあるご自宅を訪ねた。農商工連携を進めていくために何が必要かと議論し、紙ナプキンに色々と書き出していくうち、やはり組織が必要ということになった。それを誰がやるかという話になり、朝まで思ってもいなかったが『私がやる』と言ってしまった。
 しかし退職を決心すると、色んな人が集まってきてくれてNPO立ち上げ等を支援してくれた」

「公務員からNPOに転じて一番良かったことは、人に感謝されるという実感。それにNPOは美味しい、楽しい。運営は大変だが仲間がサポートしてくれる。公務員時代はモノクロームだった私の人生は、辞めてからはフルカラーになった」

「農商工連携サポートセンターのミッションは、食と農をつなげること。
 どこの地方にも美味しいものがある。それを都会の人に食べてもらうと同時に地方を訪ねるツアーも実施。人と物の双方向の交流に取り組んでいる」

「そもそも農とは、食べものをつくるアクションであり生業(なりわい)。かつて『穫るもの』『作るもの』だった食べものは、文明開化からの150年で『買うも』になった。これを人類のDNAは不自然と感じ、再び農とつながることを求めているのではないかと感じている」

「みなさんに試飲して頂いた『初舞台』は、福島・白河市大信地域の米農家が20年前から造っている日本酒。限定2000本ほどだが、神田で楽しむ会を毎年行っている」

「愛媛・西予市の遊子川(ゆすかわ)は住民500人ほどの小さな集落だが、地域の女性グループ(ザ・リコピンズ)がケチャップ加工等を始め、食堂まで作ってしまった。都会から訪ねるツアーも実施している」
 それにしても頼りになるのは女性。男は口だけ、しかもできない理由ばかり。自分も役所時代はそうだったかも知れないが(笑)」

「ちよだ青空市というマルシェを4年ほど続け、その延長線上にある常設のアンテナショップが『ちよだいちば』。
 月替わりで全国各地の市町村の特産品を扱っている。味わってもらうために数量限定の弁当も販売しており、これも好評。お客さんのほとんどはリピーターで、ほとんどは近隣で働く女性達」

「千代田区は地方との交流に熱心。『ちよだフードバレーネットワーク』には現在54市町村が参加しており、年数回、靖国神社や有楽町でマルシェを開催」

「交流活動を進めると、地方の方達以上に都会の人が喜んでいる。都会人は農を求めている。
 埼玉で農業を継いだ男性は、有機栽培の稲作体験等を受け入れているし、千葉で就農した女性はイチジク栽培に取り組み、イチジクを使ったフルコース料理のイベント等も実施。
 それにしてもイベントが成功するかどうかは、料理が8割。食べもの力は大きい」

「東日本大震災後は、宮城・岩沼市で奇跡的に残った1棟のハウスに塩トマトを植えに行くツアーを企画し呼びかけたところ、ガレキ処理は無理でもトマト栽培ならできると子どもや女性もたくさん参加してくれた。現地までの交通費は自己負担にもかかわらず。その後は白菜、亘理ではイチゴ栽培を支援」

「食農交流の方程式とは、『食べる+体験する=好きになる(人、場所)』。
 交流の目的は人が元気になること。雇用創出といったような『上から目線』ではない」

その後、会場との間で質疑応答。
 NPOの運営状況については「ここ数年は黒字だが、もう少しちよだいちばのお客さんを増やしたい。千代田区の支援ないと成り立たない」とのこと。

また、「美味しいという話はあったが安全性については」との女性からの質問には、
 「農薬等の使用を否定しているものではないが、美味しいものを追求していくと、結果として安全なものが増えてくる」等の回答。

講演会は熱気のうちに終了。
 その後は、大塚さんご自身が会場の後方で日本酒やトマト製品を販売されていました。

引き続き、会場近くのお寿司屋さんでに移動して懇親会。
 とにかく楽しそうに話される大塚さんの笑顔が、印象的な講演会(及び懇親会)でした。

なお、私も貴重な「初舞台」とザ・リコピンズのケチャップを購入させて頂きました。しっかりと味わって頂きたいと思います。

注:主催者によるイベント報告はこちら