【ブログ】SJFアドボカシーカフェ「チェルノブイリ法日本版を市民立法で」

2018年2月22日(木)18時30分から、東京・文京区の文京シビックセンター(4階シルバーホール)で「放射能災害から命、健康、くらしを守る-『チェルノブイリ法日本版』を市民立法で」とが開催されました。

市民による社会提言活動等を行っているソーシャル・ジャスティス基金(SJF)の51回目のアドボカシーカフェです。

19時前に到着した時には、崎山比早子先生(医学博士、3・11甲状腺がん子ども基金代表理事)の話が終了近くになっていました(以下、文責中田)。

「昨年9月の日本学術会議の報告書は帰還を推進しようとする内容。甲状腺がんは多発しており、福島以外でも検査を行う必要がある。人権、特に子どもの健康よりも復興を優先するという姿勢は改めるべき」等の報告。

パワーポイントの資料を配って下さっています。
 放射性ヨウ素の吸収と甲状腺への蓄積のメカニズム、福島県民健康調査・甲状腺検査の結果(発症率は数十倍)と問題点(真の罹患数が把握できない)、手術した医師の所見(70%以上がリンパ節転移)、子ども基金の取組み等についての内容です。

続いて、避難当事者の長谷川克己さんがマイクを取られました。

「事故からちょうど5ヶ月後の2011年8月11日、5歳の長男と妊娠中の妻とともに、福島・郡山市から静岡・富士宮市に自主避難した。会社は退職、幼稚園のPTA会長も辞任。後ろ指を指す人もいた。妻の実家に挨拶に行った時、5歳の長男が『さよなら、さよなら』と叫び続ける姿をみて、守ってくれるはずの国や県の理不尽な対応に屈するわけにはいかないと心に決めた」

「7年が過ぎて、原発事故は無かったことにしたいとみんな思っているようだ。声を上げれば波風が立つことは分かっているが、市民として、父親・母親として、現実を直視し真実を明らかにしていくことが自分たちの罪滅ぼしであり、責任の取り方だと思う」

最後は法律家の柳原敏夫さん。

「ふくしま集団疎開裁判は平成の一向一揆と呼ばれた。まるで謀反のような扱い。2013年4月の仙台高裁判決は危険性は認めつつも被告(避難させない郡山市)に責任はないという驚きの内容で、海外では大きく報道されたが国内での扱いは小さかった。第2次の裁判を準備しつつ、並行してチェルノブイリ法の日本版を市民運動で作る活動をしている」

「『命こそ宝』が原則。北朝鮮ミサイルや大災害と同じように、予防原則で日本人の命を守るべき。チェルノブイリ法では5mSv以上の地域には避難の義務があり、避難する権利も保証している。
 公害関係や情報公開など、市民主導の立法事例の工程等は参考になる。沖縄の歴史から学ぶことも多い。菅原文太さんのように、共に木を植えて育てていきましょう」

会場からは、公害関係の市民運動の内容のほか、「避難の権利」の具体的な内容について質問がありました。
 これに対して柳原さんからは「引っ越し費用、住宅・就労支援など幅広いものをを想定している」との回答。

長谷川さんからは「自分が避難した時は当座のお金を貸してくれる位の支援しかなかった。混乱期を乗り切るまでは支援が必要だが、その後は自己責任の面もあるのでは。帰還者に比べると避難者にはハンディキャップがある」との話。

続いて、各テーブル毎に意見交換が行われました(いつものアドボカシーカフェのやり方です)。

偶然、同じテーブルになった方のお一人は、郡山から母子避難中という方。
 長崎出身で原爆投下4日前に福岡に疎開された経験をお持ちという女性は「福島の問題は他人ごととは思えない。子ども達の健康が心配」と、子ども達の保養の受け入れ等の活動をされているそうです。
 ほかにもボランティア等として様々な活動をされているお二人の女性。

続いて各テーブルでの対話の様子が報告され、地道にデータを集めていくことが必要、甲状腺検査は縮小すべきではない、地域やグループで活動することで条例や立法につなげていけるのではないか、等の意見が出されました。

最後に3人の報告者から発言。

長谷川さんからは「7年間が経過し、新しい切り口が必要。今日の議論をエネルギーにしたい」。柳原さんは「あきらめないように続けていく。一緒に頑張っていきたい」との発言。
 一方、崎山先生からは「法律を作るだけではダメ。日本を変えるのは法律ではない」との発言も。

最後に進行役の大河内秀人さん(SJF)から、「それぞれ立場はあるが、これからも命の大切さを第一に考えていきたい」との挨拶で閉会。

帰り際に、隣り合わせた郡山から避難中という女性と立ち話。
「いつも故郷に帰りたい気持ちはある。私だけならいい。しかし、学校給食に県産品が使用されているような状況をみると、子どもを返すことはできない」と話しておられました。

先日開催された「しあわせになるための『福島差別』論シンポジウム」では、被ばくと健康問題との関係については科学的には決着している等の報告がありました。
 しかし社会的には、あるいは個々の避難されている方達にとっては、まだまだ決着にはほど遠い状況のようです。