今回は、地産地消の取組が有する輸送に伴う二酸化炭素の削減効果について、事例に則して紹介します。
地産地消の取組み(なるべく近くでとれたものを食べる)は、消費者サイドには新鮮で安価な食材の入手や「顔の見える関係」による安心感の確保、生産者サイドには少量多品種生産でも現金収入が得られ地域の活性化にもつながる等のメリットがありますが、さらに、輸送に伴う環境負荷を削減する面でも有益です。
この効果は、フード・マイレージの考え方を応用すると簡単に定量的に試算することができます。
今回、取り上げるのは学校給食の事例です。近年、食育の一環としても、学校給食に地元産の食材を活用する取組みが盛んになっています。
埼玉県下のある中学校(生徒数約 800人)における1ヶ月間の学校給食に使用された食材のフード・マイレージを計算すると、3,001t・km(トン・キロメートル)と計測されました。宮崎県産豚肉、長崎県産ジャガイモなど遠隔地からの食材がフード・マイレージ全体の3分の1を占めています。
米については全量埼玉県産米が使用されています。このため、重量(571kg)では食材全体の7%を占める米の割合は、フード・マイレージ(6t・km)では0.2%に留まっています。
そこで、地産地消の取組の効果を具体的に計測するため、仮に市場流通に委ねて調達(埼玉県下において実際に流通している米の産地別構成割合に即して調達)した場合のフード・マイレージを試算すると、133t・km となりました。
つまり、地産地消の取組により フード・マイレージは5%弱の水準に縮小されているのです(添付先の図94)。
http://food-mileage.jp/wp-content/uploads/2018/03/94_FM_kyushoku.pdf
米と野菜の地産地消の取組みにより削減されたフード・マイレージを合計すると140t・kmとなり、排出係数を乗じることで、年間で約300kg(生徒1人当たり400g)の二酸化炭素が削減されたものと試算されるのです。
[参考]
中田哲也『フード・マイレージ-あなたの食が地球を変える』([新版]2018.1、日本評論社)pp.138~149
https://www.nippyo.co.jp/shop/book/7625.html
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【F.M.Letter No.140、2018.3/31[和暦 如月十五日]掲載】
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