-たんたんぺろぺろ(浜下り神事、福島・広野町)-
福島県の浜通りにある広野町(ひろのまち)では、五穀豊穣を願い、130 年ほど前から浜下りの神事「たんたんぺろぺろ」が行われていました。そのユニークな呼び名は、太鼓と笛の音色に由来するとのこと。
貞観八(西暦866)年に常陸の国・鹿島神社から勧請し、旧下浅見川村の鎮守として奉られ、旧暦の四月八日に浅見川の上流に鎮座する大滝神社と下流に鎮座する鹿島神社の御輿に御神体を移した御輿が旅所を廻った後、上浅見川桜田地区で出合います。
その後、旅所を廻りながら浅見川河口で海に入って潮垢離(しおごり)し禊祓(みそぎはらえ)をするというものです。
しかし、広野町は2011年3月の東日本大震災で大きな津波の被害を受け、さらに福島第一原発事故により一時全町避難を強いられたことから、祭事は休止されていました。特に海岸に近い鹿嶋神社は津波の直撃を受け、拝殿や本殿は修復されたものの今も鳥居は再建されていません。
また、震災前には32世帯いた氏子は14世帯に減少しています。
このような中、2018年4月8日(日)、8年ぶりに「たんたんぺろぺろ」が復活しました。
猿田彦と太鼓に先導された神輿が地区内を練り歩いた後、新たに整備された防災緑地と防潮堤を越えて浜に下り、海に入っていきました。
この日は強風注意報が発令され、波が荒く水も冷たかったのですが、20名ほどの担ぎ手により海の中で神輿が何回転もされる姿は勇壮なものでした(なお、この日は鹿島神社単独の祭りでした。山間部にある大滝神社は担ぎ手不足がさらに深刻とのことです)。
ご自身も自宅や田畑を津波に流され、一時、隣のいわき市で避難生活を送っておられた鹿嶋神社の氏子総代・根本賢仁さんは、「被災を乗り越えて祭りを再開できたことは、住民のふるさとへの愛着を強め、今後の新しい町づくりのきっかけにもなる」と期待されています。
[参考]
浜下り神事(広野町ホームページ)
https://www.town.hirono.fukushima.jp/sangyo/hamakudari_shinji.html