【ブログ】雨宮処凛さんの「平和のために」

2018年5月12日(土)は快晴、気温も上昇。
 午後から東京・四ッ谷の上智大学へ。紫陽花も色づき始めています。

この日、6号館の教室で開催されたのはベグライテンの5月公共例会

ベグライテンとは、2001年に上智大のコミュニティカレッジ参加者により立ち上げられた自主的な学ぶ会で、定期的にホスピス訪問やケアに関わる勉強会等を開催していますが、平和や憲法をめぐる問題についても積極的に活動・発信されています。

この日の例会のテーマは「平和のために私たちは何をすべきか」。
 ベグライテンの若者グループが中心となって企画したそうです。

基調講演者として登壇されたのは、雨宮処凛(あまみや・かりん)さん。
 貧困問題に関わる活動家として著名ですが、戦争や平和の問題についても積極的に発信されており、2015年にはインタビュー集『14歳からの戦争のリアル』(河出書房新社)も刊行されています(厚かましくも、ご講演前にサインを頂きました)。

この日の講演も、この本の内容に沿うかたちでインタビュー形式で行われました(文責・中田)。

雨宮さん
 「貧困や行きづらさをテーマに活動してきたが、戦争は最大の貧困ビジネスということが分かってきた。安保法制の成立など、私たちの戦争への距離感も変わってきている」

「私は初めての海外旅行が北朝鮮で、2回目が1999年のイラク。
 当時20代でバグダッドの小児病棟に連れて行かれた。劣化ウラン弾によりがんや白血病が多発しており、多くの子ども達は治療も施されず放置されていた。薬の棚は経済制裁のために空っぽだった。
 2003年にはヒューマンシールド(人間の壁)の一員として、2度目のイラク訪問をした」

「湾岸戦争は中学生の時だった。ゲームのような映像で、遠い国での戦争というイメージしかなかったが、実際に現地に行ってみると驚くことばかりだった。
 日本では、テレビのチャンネルを変えるだけで戦争など無かったことにできるかのよう。政治のことなど考えなくても生きていける唯一の国が日本。これはものすごく怖いことではないか」

「以前の自分は、楽しいことだけを考え、消費するだけの生活で満足していた。戦争に関心を持つため、無理やり自分を戦場にぶち込んだ。
 現地の人と知り合って顔の見える関係になると、その国との距離は近くなる。ただ、当時知り合った友人でも、メールを出しても返信のないことも多い」

「私が2度目に訪ねた時はイラク戦争の開戦前で、のどかな雰囲気だった。毎日、駆け込むように結婚式が行われ、湾岸戦争の悲惨な写真を売りつけて小銭を稼ぐ人もいた。戦争前夜の人々の姿を見た」

高遠菜穂子さんの講演をよく聞きに行くが、中東でIS(イスラム国)が勢力を失った今もイラクの混乱は続いている。
 日本が米国のイラク攻撃を真っ先に支持表明したことはショックだった。この後、日本は戦争しないというイメージはどんどん崩れていき、日本人を標的とするテロ事件も起こっている」

「本書でインタビューした米軍の元兵士は、帰国後に間違った戦争だったことに気づきPTSDを発症した。多くの帰還兵がモラルインジャリー(良心の傷)に悩まされている。
 イラク戦争の時は貧しい若者たちが、奨学金を提示されるなどして、システム的に軍隊にリクルートされた。 これが経済的徴兵制。日本でも、若い生活困窮者のところに自衛隊からの勧誘が盛んにあった時期がある」

「今もシリアで拘束中とされる安田純平さんは、米軍付きの料理人としてイラクに入国。出稼ぎ労働者が多いなど、イラク戦争は民営化された戦争だったことを教えてくれた。
 貧困と戦争が、あたかも車の両輪のように進んでいることに不気味さを覚える」

エキタスのデモの様子が映し出されました。
 「演説をしている代表の女性の弟に、自衛隊から誘いが来たという。借金して大学に進学するか自衛隊に行くかという選択を迫られたということを訴えている。全ての世代が生きづらくなっている」

インタビュアーからの「今の日本は戦争を急いでいるように見えるが」との質問には、雨宮さんは、

「日報問題の杜撰さや、イラク戦争の検証もなされていないことを考えると、そもそも日本は戦争する資格があるのかとさえ思ってしまう。
 徴兵拒否した韓国人の友人の話によると、待遇は酷く良心的拒否もできないという実態が知られるようになり、韓国では反戦運動が盛り上がっている」

最後に「日本の若者たちへのメッセージを」と促された雨宮さんは、
 「日本では『意識高い系』のような言動をしていると揶揄され、キモいと馬鹿にされるような風潮がある。かつての自分も馬鹿にする側だった」

「しかし、本気で考えなくても生きていけるというこの国のヤバさを意識するようになってからは、自分から『意識の高い人』に近づいていった。それが考えるヒントになったし、さらには、考えるのが面倒だったこともあり、自分を現地に派遣した。自分を強制的にそのような場に置くことで、日本の立ち位置を考えざるを得ないようにした」

そして、
 「自分が何をきっかけにこのような問題(戦争、平和)に関心を持つようになったかを、自分の言葉で伝えることが、一番説得力があるのではないか」とまとめられました。

なお、後半(第2部)は様々な団体で活動されている若い方達によるシンポジウムが行われました。

雨宮さんが勧められたように、実際に現地に行ったり、現地の知人や友人を作ったりすることは、私には簡単ではありません(パレスチナ訪問を誘って下さる友人もいるのですが、ここ数日の情勢でますます恐くなりました)。

であれば、現地で活動した経験があり、現地の友人・知人が多い雨宮さんや高遠さんの講演会等に足を運び、あるいは書かれたもの(本やツイッター)を読むことで、せめてリアルな問題意識を持ち続けていきたいと思います。
 生ぬるいようですが、これなら今の自分にもできます。まずは、できることから。