【ほんのさわり】日本フードシステム学会 監修『医福食農の連携とフードシステムの革新』


日本フードシステム学会 監修、斎藤修・高城孝助 編著『医福食農の連携とフードシステムの革新』(2018/3、農林統計出版)
 http://www.afsp.co.jp/syoseki-annai.html#040533

高齢化の進行は日本のあらゆる分野に大きな影響を及ぼしていますが、食との関連をみると、在宅高齢者の約40%は低栄養であり、70歳以上層においては20~30%が「個食」とのこと。また、高齢者を中心とした「買い物難民」の問題が顕在化する一方、介護食の市場規模は、今後、大きく拡大することが見込まれています。
 本書では、配食サービスと食ビジネスとの関連の現状と、今後の連携(バリューチェーン構築)方策等について幅広く論じられています。

まず、医療制度改革や医福連携が進展する中での配食サービス(特に在宅向け)の成長可能性と課題、クックチル方式等のセントラルキッチン導入の意義、高齢者福祉施設における栄養・食事管理の課題等が明らかにされます。
 続いてこれらの認識を踏まえ、社会福祉と食との関係性についての農村部(JAの社会福祉事業)と都市部(NPOなど新しいビジネスモデル)との比較、フードシステムにおけると市民参加型食事サービスの現状と市民グループへの中間支援のあり方等について考察が行われています。
 いずれも、それぞれの分野における実務にも通じた専門家により、各種アンケートやケーススタディ基づいた詳細で具体的な現状分析と提案が行われています。

編著者代表の斎藤修先生(千葉大学名誉教授)は日本フードシステム学会の会長を長く務められた方で、本書は当学会の2015、16年大会におけるミニシンポジウムの議論を整理し再編集した学術書です。
 医福食農連携に関心のある方には、その全体像から地域における具体的な取組み事例まで、多くの貴重な知見を得ることのできるテキストとして活用されることが期待されます。