江守正多『異常気象と人類の選択』(2013.9、角川SSC文庫)
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著者は1970年生まれの気象学者で、国立環境研究所の地球環境研究センター気候変動リスク評価管理室長。IPCC(国連気候変動に関する政府間パネル)第5次報告書(2013)の執筆にも参加されています。
著者は、地球温暖化問題を、近年異常気象が頻発している状況も踏まえて、「少しも大げさないい方ではなく、現代文明の運命に関わる問題」「今生きているわれわれが、現代文明の運命をどうしたらいいかという価値判断にかかわる問題」と位置づけています。
温暖化に対するいわゆる「懐疑論」については、著者は科学的には否定できるとしていますが、一方、政策論としては、対策積極派(行き過ぎた現代文明を見直すべき)と慎重派(現実主義、経済価値重視)対立しており、その解決のためには、政府(政策立案)と市民との間の信頼醸成が不可欠としています。
そして、私たち市民にとって大切なのは「世代間の公平意識」(まだ生まれていない人々を含め、将来の人類のことを考えること)であるとし、「省エネは大事なことだが、それだけでは温暖化は止まらない。求められる市民の仕事は『意見形成』」と結論づけているのです。
高度に専門的な知識を有する問題について自分の意見を持つことには、大変な手間・コストがかかります。
しかし、今、地球温暖化問題に限らず、様々な問題(例えば低線量被ばくなど)について、私たち市民一人ひとりが「自分の意見を持つ」努力が求められているのかもしれません。