【メルマガ】F.M.Letter No.144

◇フード・マイレージ資料室 通信 No.144◇
 2018年5月29日(火)[和暦 卯月十五日]発行
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◆ F.M.豆知識  熱帯夜の年間日数の長期推移
◆ O.カレント  環境の日、環境月間
◆ ほんのさわり 江守正多『異常気象と人類の選択』
◆ 情報ひろば  ブログ更新、イベント情報等
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 卯月は農耕の季節を象徴する「植月」ともされます。
 二十四節気では、万物の成長する気が天地に満ち始める「小満」も半ばを過ぎました。
 時の流れを体感するため、和暦の朔日(新月の日)と十五日(ほぼ満月の日)に配信している本メルマガ、今号は卯月十五日の配信です。
 来る6月の環境月間を前に、今号は地球環境の特集としました。

◆ F.M.豆知識
 食や農に関連して、特に私たち消費者にちょっと役に立つ、あるいは考えるヒントになるようなデータをコツコツと紹介していきます。

-熱帯夜の年間日数の長期推移-

近年、世界各地で多数の人的被害をもたらすような気象災害が多数発生するとともに、世界的に気温の高い年が頻出するなど、着実に進む地球温暖化が気候に与える影響が顕在化しています。
 日本の気象庁の「大雨や猛暑日など(極端現象)の長期変化」は、極端な高温(35℃以上の猛暑日)や強い雨(1時間当たり50mm以上)などの長期変化に関する情報などをまとめているポータルサイトです。

添付の図98は、極端現象のうち熱帯夜の日数(ここでは日最低気温25℃以上)の長期的推移を示したものです。なお、観測地点は都市化の影響が比較的小さい網走、山形、彦根など13地点です。
 http://food-mileage.jp/wp-content/uploads/2018/05/98_nettaiya.pdf

これのグラフをみると、全国の熱帯夜の年間日数は明らかに増加していることが見て取れます。
 熱帯夜の年間日数は、1931から2017年の間で10年あたり1.7日増加しており、最近30年間(1988~2017年)の平均日数(約22日)は、最初の30年間(1931~1960 年、約13日)と比べて約1.7倍に増加しています。
 今年の夏も、蒸し暑い夜が続くのでしょうか。

[出典]
 気象庁「大雨や猛暑日など(極端現象)のこれまでの変化
  http://www.data.jma.go.jp/cpdinfo/extreme/extreme_p.html

◆ オーシャン・カレント -潮目を変える-
 食や農の分野について先進的かつユニークな活動に取り組んでおられる方や、食や農に関わるトピックスを紹介します。

-環境の日、環境月間-

毎年6月5日は「環境の日」です。
 これは、1972年6月5日からスウェーデンのストックホルムで開催された「国連人間環境会議」を記念して定められたもので、国連でも同日を「世界環境デー」と定めています。
 なお、日本の「環境の日」は、法律で定められているというユニークな記念日の一つです。

「環境基本法」(1993)は、環境保全の基本理念を定め、国や国民の責務を明らかにすること等を目的として1993年に制定されましたが、このなかで、事業者や国民の間に広く環境の保全についての関心と理解を深めるとともに、積極的に環境の保全に関する活動を行う意欲を高めることを目的として「環境の日」が定められているのです(第10条)。

さらに日本では6月の1ヶ月間を「環境月間」として、全国で様々な行事が行われます。
 東京では、6月2(土)、3日(日)に都立代々木公園で「エコライフ・フェア2018」が開催されます(入場無料)。これらをきっかけに、身の回りの身近な環境(さらには地球環境)について、考えてみませんか。

[参考]
 環境の日及び環境月間(環境省HP)
  https://www.env.go.jp/guide/envdm/month/index.html

エコライフ・フェア2018
  http://ecolifefair.env.go.jp/

◆ ほんのさわり
 食や農の分野を中心に、考えるヒントとなるような本の「さわり」を紹介します。

-江守正多『異常気象と人類の選択』(2013.9、角川SSC文庫)-
  https://www.kadokawa.co.jp/product/301308000810/

著者は1970年生まれの気象学者で、国立環境研究所の地球環境研究センター気候変動リスク評価管理室長。IPCC(国連気候変動に関する政府間パネル)第5次報告書(2013)の執筆にも参加されています。

著者は、地球温暖化問題を、近年異常気象が頻発している状況も踏まえて、「少しも大げさないい方ではなく、現代文明の運命に関わる問題」「今生きているわれわれが、現代文明の運命をどうしたらいいかという価値判断にかかわる問題」と位置づけています。

温暖化に対するいわゆる「懐疑論」については、著者は科学的には否定できるとしていますが、一方、政策論としては、対策積極派(行き過ぎた現代文明を見直すべき)と慎重派(現実主義、経済価値重視)対立しており、その解決のためには、政府(政策立案)と市民との間の信頼醸成が不可欠としています。

そして、私たち市民にとって大切なのは「世代間の公平意識」(まだ生まれていない人々を含め、将来の人類のことを考えること)であるとし、「省エネは大事なことだが、それだけでは温暖化は止まらない。求められる市民の仕事は『意見形成』」と結論づけているのです。

高度に専門的な知識を有する問題について自分の意見を持つことには、大変な手間・コストがかかります。
 しかし、今、地球温暖化問題に限らず、様々な問題(例えば低線量被ばくなど)について、私たち市民一人ひとりが「自分の意見を持つ」努力が求められているのかもしれません。

◆ 情報ひろば
 拙ウェブサイトやブログの更新情報、食や農に関わる各種イベントの開催情報等をお届します。

▼ 拙ブログ「新・伏臥慢録」更新情報
 ○ 雨宮処凛さんの「平和のために」[5/17]
 http://food-mileage.jp/2018/05/17/blog-104/

○ 舟で海から東京湾あるき[5/19]
 http://food-mileage.jp/2018/05/19/blog-105/

○ 藤原辰史先生「『雑多なもの』の賑わいを求めて」[5/25]
 http://food-mileage.jp/2018/05/25/blog-106/

▼ 筆者が参加予定または関心のあるイベント等を勝手に紹介します。
 既に満席の場合等がありますので、参加を希望される際には必ず事前に主催者等にお問い合せ下さい。

○ エントロピー学会2018年 春の研究集会
 日時:6月2日(土)13:00 ~3日(日)
 場所:國學院大學渋谷キャンパス(東京・文京区湯島2)
 主催:エントロピー学会
 (詳細、お問合せ等↓)
  http://entropy.ac/meeting/meeting-1188/

○【和暦招聘講座】植物と虫の素晴らしき関係~お互い様のいのちの交信
 日時:6月3日(日)12:30 ~15:30
 場所:森の食卓(東京・三鷹市井の頭5)
 主催:高月美樹さん
 (詳細、お問合せ等↓)
  https://www.facebook.com/events/816316845226681/

○ 小林康夫 × 國分功一郎「謎、それは自分」をめぐって
 ~『午前四時のブルー』刊行記念イベント
 日時:6月8日(金)19:00 ~21:00
 場所:神楽坂モノガタリ(東京・新宿区神楽坂6)
 主催:神楽坂モノガタリ
 (詳細、お問合せ等↓)
  https://peatix.com/event/387731/

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*今号のコツコツ小咄
「あなたの口から出る言葉って、まるで薔薇みたいね」
「あら、褒めてくれてるの?」
「トゲがあるってこと」

コツコツ小咄は、まとめて拙ウェブサイトにも掲載してあります。
  http://food-mileage.jp/category/iki/

* 次号No.145は6月14日(木)、[和暦 皐月朔日]の配信予定です。
 より役立つ情報発信に努めていきますので、読者の皆さまのご意見、ご要望をお聞かせ頂ければ幸いです。

* 和暦については、高月美樹さん『和暦日々是好日』を参考にさせて頂いています。
 いつもありがとうございます。
  http://www.lunaworks.jp/

* 本メルマガは個人の立場で配信しているものであり、意見や考え方は筆者の個人的なもので、全ての文責は中田個人にあります。
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◆ F. M. Letter -フード・マイレージ資料室 通信-【ID;0001579997】 
 発行者:中田哲也
 ウェブサイト「フード・マイレージ資料室」
  http://food-mileage.jp/
 ブログ「新・伏臥慢録~フード・マイレージ資料室から~」
  http://food-mileage.jp/category/blog/
 発行システム:『まぐまぐ!』
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