【ほんのさわり】辻山良雄『本屋、はじめました』

辻山良雄『本屋、はじめました-新刊書店 Title 開業の記録』(2017/1、苦楽堂)
  https://title-books.stores.jp/items/585631921003154aa0012c64

1972年神戸生れの著者は、早稲田大学を卒業後、書店の全国チェーン・(株)リブロに入社し広島、名古屋の店長等を歴任。
 池袋本店のマネージャーを務めていた2015年7月に同店が閉店した後に退社、2016年1月、東京・荻窪に「本屋・Title」(タイトル) を開業された方です。
 著者自身、「あとになって、ここ数年で個人が新刊書店を開いたケースはほとんどないということを聞いた」と記しておられます。

本書には、場所の下見・物件探し、内装や仕入れ等の経緯が具体的に記録され、巻末には「事業計画書」も掲載されているなど、書店のみならず新規起業を目指す方にも大いに参考になりそうです。

その事業計画書に、著者は、独立・開業の動機を「お客さまの顔が見える規模でもう一度仕事がしたい」と書かれています。
 「小さな本屋では自然とお客様と話すようになる。接客とは本屋に残された数少ない可能性の一つではないか」とのこと。さらに「個人でやると、本が数字の積み重なりではなく、ちゃんと本になる。お客さんが『消費者』じゃなくてちゃんと1人の『ひと』になる。店をやっていて、嬉しいことはそれですね」とも語っておられます。

また、本屋・Title の店内にはギャラリーとともにカフェが併設されています。
 そこで使う食材は地元産を重視し、「顔の見える」取引先と契約しているとのこと。産地 や販売の現場を知っていることで、「食」を通じてより多くの情報を客に伝えることができるとのことです。

これからの書店も食も、「顔の見える関係」が共通するキーワードになりそうです。

[参考]本屋・Title
  http://www.title-books.com/

F.M.Letter No.147(2018.7/13)より】