【メルマガ】F.M.Letter No.154

◇フード・マイレージ資料室 通信 No.154◇
 2018年10月23日(火)[和暦 長月十五日]発行
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◆ F.M.豆知識  トーフ・マイレージ
◆ O.カレント  霞ヶ関ばたけ
◆ ほんのさわり 蔦谷栄一『未来を耕す農的社会』
◆ 情報ひろば  ブログ更新、イベント情報等
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 時候は二十四節気の霜降。山野にも里にも霜が降り始めます。秋も深まってきました。
 和暦の朔日(新月)と十五日(ほぼ満月の日)に配信している拙メルマガ、今号は 和暦 長月十五日の配信です。

◆ F.M.豆知識
 食や農に関連して、特に私たち消費者にちょっと役に立つ、あるいは考えるヒントになるデータをコツコツと紹介していきます。

-トーフ・マイレージ-

地産地消は、食料の輸送距離を縮めることによって、その輸送に伴う環境負荷(CO2排出量)を削減することができる取組みですが、その削減効果は、フード・マイレージ指標(食料の輸送量×輸送距離)を用いることで簡単に定量的に計測することができます。
 リンク先の図表は、埼玉・小川町における豆腐についてのケーススタディ(トーフ・マイレージ)の結果です。

 フェスの会場(埼玉元気プラザ)で1丁の豆腐を作るものとします。
 1丁の豆腐には112gの原料大豆が必要ですが、地元(小川町下里)産の大豆を使用した場合(ケース1)の輸送距離は 9.3km。フード・マイレージはこれに輸送量(112g)を乗じた 1.1 kg・km(キログラム・キロメートル)となり、さらににトラックの CO2排出係数(0.18g/kg・km、1tの貨物を1km 輸送した際に排出されるCO2の量)を掛け合わせると0.2gとなります。
 これが地元産大豆を使用した場合の、原料大豆を輸送することに伴い排出されるCO2の量です。

ケース2は北海道産を使用した場合、ケース3はアメリカ産を使用した場合で、同様に輸送に伴って排出されるCO2の量を試算すると、北海道産の場合は 24.4g、アメリカ産の場合は 40.2gとなります。

つまり、同じ豆腐 1丁を作る場合であっても、原料大豆の輸送に伴い排出されるCO2の量は、地元産を使用することによって、計算上、アメリカ産に比べて211分の1にまで(約40g)削減されることとなるのです。

[出典等]
 小川町オーガニックフェスにおける説明資料(2018.9/8)
 (本ケーススタディは p.19~24)

◆ オーシャン・カレント -潮目を変える-
 食や農の分野について先進的かつユニークな活動に取り組んでおられる方や、食や農に関わるトピックス等を紹介します。

-霞ヶ関ばたけ-


 隔週水曜日の出勤前の時間、東京・千代田区霞ヶ関で食や農林水産業をテーマに開催されている勉強会です。
 参加者は若い方が中心ですが、ビジネスパーソン、大学生、公務員など、食や農、あるいは地域づくり等に関心がある人なら誰でも参加できます。
 毎回1人、様々な分野のゲストの方をお招きして話を聞き、参加者とともに議論を深めることで、ゲストと参加者あるいは参加者同士の交流をつくる場にもなっています。

代表をされているのが松尾真奈さん。
 農林水産省の若手女性職員で、1歳の子どものお母さんでもあります。
 大学在学中に「田舎で働き隊」として農村地域で活動したことをきっかけに、農林水産省を就職先に選ばれたとのこと。友人夫妻とシェアしている自宅でも頻繁に食事会を開催されるなど、「根っから場づくりと人が好き」という方です。

政治や行政の中心である霞ヶ関で、感性豊かな松尾さんや仲間の皆さんにより運営されている「霞ヶ関ばたけ」の取組みは、今後の日本の食や農、地域づくりの分野で大きな貢献をされていくことが期待されます。

なお、次回(10月31日)は私もお招き頂き、フード・マイレージにつ いて話題提供させて頂く予定になっています。

[参考]霞ヶ関ばたけ

◆ ほんのさわり
 食や農の分野を中心に、考えるヒントとなるような本の「さわり」を紹介します。

蔦谷栄一『未来を耕す農的社会』(2018/9、創森社)

著者は1948年宮城県生まれ。(株)農林中金総合研究所で永く調査・研究に携わられた後、現在は自ら設立した農的社会デザイン研究所の代表を務めておられます。
 本書は著者にとっての13冊目の単著で、前著『農的社会をひらく』から2年半の間の実践や思索の成果を踏まえ、農的社会(生命原理を最優先する社会)をいかにして創造していくかを、理論と実践(ノウハウ等)両面から広範に論じられています。

第1、2章では、狭義の農業(産業)と広義の農業(百姓仕事、市民参画)との関連、日本農業の強み(地域性、多様性に富む等)が整理された上で、消費者との交流等を通じたコミュニティ農業の推進という方向性が示されます。

第3章(経済学と農業)では、ケネー、スミス、マルクス、ポランニー、宇沢弘文らの文献がレビューされ、農業を論じる上での既存の経済学の限界等が論じられています。

第4章(協同論)では、川崎平右衛門(江戸自体の農政家)、賀川豊彦、木村快氏(演出家)らの業績や活動が紹介され、第5章ではキューバ、第6章冒頭ではロシアのダーチャの事例が取り上げられます。

そして第6、7章が、農的社会をいかに創造していくかを論じた章です。
 まず著者は「農的社会を創造していく取組は個別的、自立的であり、安易にモデル化できるものではなく、交流し試行錯誤しながらやっていくしかない」と釘を刺しています。
 その上で、ご自身の取組みを紹介されています。

例えば、山梨市牧丘町の山林を開墾して農業と二地域居住を始められた経緯、子ども達の農業体験の受け入れ(「農土香」)、西東京市における「おむすびハウス」(学童の居場所づくの)「蔦谷さんち」(自宅の地域への開放)等が、具体的に詳細に紹介されています。

著者は「一人ひとりの取り組み、実践が出発点であり、これを積み重ね広げていくことでしか社会を変えていくことはできない」と訴えておられます。そして、正に率先垂範されているのです。
 多くの示唆に富む好著です。

[参考]農的社会デザイン研究所

◆ 情報ひろば
 拙ウェブサイトやブログの更新情報、食や農に関わる各種イベントの開催情報等をお届します。

▼ 拙ブログ「新・伏臥慢録」更新情報
 ○家族と食生活(「平和の棚の会」主催トークイベント)[10/5]

○ ナイスミーフェスタ 2018(千葉・いすみ市)[10/11]

○ 第27回 西原ふるさと祭り(山梨・上野原市)[10/17]

○ 共奏キッチン@自由が丘シェア奥沢[10/18]

○ 南伊豆・ローカル×編集のおもしろさ(霞ヶ関ばたけ)[10/20]

○ 蔦谷栄一先生「お祝いパーティー&コンサート」(東京・青山)[10/21]

▼ 筆者が参加予定または関心のあるイベント等を勝手に紹介します。
 既に満席の場合等がありますので、参加を希望される際には必ず事前に主催者等にお問合せ下さい。

[筆者が登壇予定]
 ○【第137回霞ヶ関ばたけ】
 フード・マイレージ-あなたの食が地球を変える-
 日時:10月31日(水)7:30~9:00
 場所:霞が関ナレッジスクエア(東京・千代田区霞ヶ関3)
 主催:霞ヶ関ばたけ

[その他]
 ○ 名子のマメな日~食べて飲んで豆まみれ~
 日時:10月27日(土)12:00~16:00
 場所:なみへい(東京・日本橋本石町4)
 主催:なみへい

○ 「つながり」からはじまる雄勝花物語の商品開発
 日時:11月1日(木)19:00~21:00
 場所:クックパッド(株)(東京・渋谷区恵比寿4)
 主催:フォワード東北

○ 第6回 勉強会
 日時:11月7日(水)19:00~21:00
 場所:中央区立環境情報センター(東京・京橋3)
 主催:銀座農業コミュニティー塾

○ 第3回 東京読書サミット@スマートニュース
 日時:11月10日(土)16:30~19:30
 場所:スマートニュース(株)(東京・神宮前6)
 主催:読書するエンジニアの会
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*今号のコツコツ小咄
「オス○ル様、お肉はサーロインでよろしいでしょうか」
「いえ、やっぱりバラでお願いします」

コツコツ小咄(まとめ)は拙ウェブサイトにも掲載してあります。
  http://food-mileage.jp/category/iki/

* 次号 No.155は11月8日(木)[和暦 神無月朔日]の配信予定です。
 より役立つ情報発信に努めていきますので、読者の皆さまのご意見、ご要望をお聞かせ頂ければ幸いです。

* 和暦については、高月美樹さん『和暦日々是好日』を参考にさせて頂いています。
 いつもありがとうございます。
  http://www.lunaworks.jp/

* 本メルマガは個人の立場で配信しているものであり、意見や考え方は筆者の個人的なもので、全ての文責は中田個人にあります。
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◆ F. M. Letter -フード・マイレージ資料室 通信-【ID;0001579997】 
 発行者:中田哲也
 ウェブサイト「フード・マイレージ資料室」
  http://food-mileage.jp/ ブログ「新・伏臥慢録~フード・マイレージ資料室から~」
  http://food-mileage.jp/category/blog/ 発行システム:『まぐまぐ!』
  http://www.mag2.com/