◆ オーシャン・カレント -潮目を変える-
食や農の分野について先進的かつユニークな活動に取り組んでおられる方や、食や農に関わるトピックス等を紹介します。
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-お節料理-
「おせち」とは、もともとは宮中で季節の節目である節会(せちえ)に神様に供える料理のことでした。
節会は奈良時代から行われており、元旦のほか、正月七日の白馬(あおうま)節会、正月十六日の踏歌(とうか)節会、五月五日の端午節会、七月七日の七夕節会、九月九日の重陽節会とありました。
江戸中期以降は次第に正月が一番盛大に祝われるようになったことから、一般に「お節」と言うと正月の祝膳を指すようになったのです。
近年は、洋風や中華風の料理が増えていたり、家庭では作らずインターネット等の通販で取り寄せたりしていることについて、日本の伝統が失われるといった批判も散見されます。
しかし、お節(さらには和食、日本食)については、歴史的にみて最初から定まった型がある訳ではなく、その内容や概念は時代によって大きく変化しているのです。
もともとは正月料理の主役である雑煮に添えらていたお節は、元禄以降は重箱に詰められるようになりましたが、当時は田畑の肥料として使われる安価な数の子や田作りを中心としたものでした。
幕末から明治になると海老、塩引鮭、かまぼこ、鳥肉、卵等が用いられるようになり、昭和初期にはハムやローストビーフも加えられ、百貨店でも販売されるようにもなりました。
伝承料理研究家・奥村彪生(あやお)によると、和食の中核である米や茶の栽培技術、味噌や豆腐の製造技術は中国から導入されたものであり(そもそも「料理」という言葉自体も中国語)、さらに近世は欧米の食文化も私達は柔軟に受け入れてきました。
つまり和食(日本食)とは、中国を始めとする外来食文化を選択、受容、模倣しながら、日本の気候風土と日本人の気質や嗜好(勤勉、おだやか、繊細、工夫好き等)に合致するように「改創」されたものなのです。
奥村は「基本的な『型』は守りつつも、時代性を加味し、新しく創造し育てていくことが、これからの和食(日本食)には必要」としています。
お重に詰められた様々な料理は、多様な異文化を受容する日本人の柔軟さを象徴しているのかも知れません。
[参考]奥村彪生『日本料理とは何か』(2016.4、農山漁村文化協会)
http://shop.ruralnet.or.jp/b_no=01_54014255/
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出典:F. M. Letter -フード・マイレージ資料室 通信-
https://archives.mag2.com/0001579997/
No.159