【ブログ】ローカル線で地域を元気に @なみへい

2019年2月22日(金)の終業後は、全国うまいもの交流サロン・なみへい(東京・神田)へ。

この日18時30分から開催されたのは「廃線の危機からv字回復-その実例に学ぶ」と題するイベント。

19時前に到着した時には、ちょうど鳥塚 亮(とりづか・あきら)さんの講演が始まるところでした(鳥塚さんのブログはこちら)。

鳥塚さんは1960年東京生まれ。子どもの頃からの鉄道好きだったそうです。
 外資系航空会社を経て2009年、公募に応じていすみ鉄道株式会社(千葉)社長に就任。ムーミン列車の運行や国鉄のディーゼルカーの導入など数々のアイディアで経営改善と地域づくりに取り組み、2018年の退任(任期満了)後はいすみ市の観光大使をされている方。

現在はNPO法人・おいしいローカル線をつくる会の代表を務め、また、『ローカル線で地域を元気にする方法』(2013、晶文社)等の著作もあります。

マイクを取られた鳥塚さん。
 身振り豊かでユーモアを交えた話し方です(ちなみにこの日は、青森から帰ってこられたばかりとのこと。以下、文責は中田にあります)。

「いすみ鉄道は、国鉄からJRに変わる時に赤字を理由に引き継がれなかった路線。廃止するという国の意志に逆らって第3セクターとして残された。
 当時、「酷電の痛勤」で辛い思いをしていた都会の人からすれば、どうして自分達が払った運賃を、誰も乗ろうとしない田舎の路線に使うのかという思いもあったと思う」

「ところが、あれから40年!(笑)。
 今は、都会の40代以下の若い人等を中心に、ローカル線に乗ってみたいという人が増えている。近年、テレビが盛んにローカル線を取り上げるようになったのは、単純に視聴率を取れるから。若い人や女性向けの雑誌の取材も多い。
 ローカル線には追い風が吹いている」

「日本に鉄道ファン(マニア)は200万人いると言われるが、それ以外の普通の人も、ローカル鉄道と聞いて駅弁、食材、お酒、名所、景色などを思い浮かべるようになった。
 ローカル線は地域の広告塔の代表選手。全国的に人口が減るなか、鉄道が走っていれば交流人口が増える。鉄道には大きなポテンシャルがある。」

「人や貨物を輸送するというかつての役割は終わっているかも知れない。現に、これまでの乗って残そうという運動は成功していない」

「しかし考えてみると、遊園地にある鉄道には目的地はない。楽しいからと、乗ること自体が目的。
 とはいえ観光鉄道化しようとしても、いすみ鉄道の沿線に観光資源は乏しく、また、SLやトロッコ列車を運営する資力も無い。
 そこで古い国鉄型ディーゼルカーを残存簿価で購入した」

「わざと古い車両を導入することで、都会人の顧客心理を捉えた。
 タブレット交換を見るために多くの撮り鉄が来てくれた。『ここには なにもないがあります』と書いたポスターの撮影地(田んぼの真ん中)が観光地になった」

「口コミ等で、良さが分かる人だけ来てくれればいい。そうでなければキャパシティはすぐにパンクする」

「いすみでは、地元の人や子ども達が勝手に駅舎(町の玄関口)を掃除したり菜の花を植えたりしてきた。自分たちで何とかしようという意識が高い地域。
 さらに赤字は税金で補てんされている。地域の方達は、正に汗と血で鉄道を支えてきてくれた。その人たちに感謝し、達成感を得てもらうためには、お客さんを連れてくることが必要」

「残念ながら鉄道事業は今も赤字だが、地域には恩返しできているのでは。
 実は自分自身も、子どもの時にこの地に来て写真を撮った思い出がある。子どもの頃の体験は原風景になる」

NPO美味しいローカル線の会は、鉄道会社だけではなく地域も美味しい思いをすることが目的で活動している。
 地方には美味しいものも一杯ある。地方の良さを将来につないでいきたい」

後半は、いすみ尽くしの懇親会です。

この日の料理担当は山本誠也さん。
 なみへいが飲食店として夜の定期営業をしていた昨年3月まで、料理長を務めておられた方。
 今は神楽坂のレザミという雰囲気のいいお店を任されています(昨年9月、八幡名子さんボランティア報告会でも使わせて頂きました)。

山本さんか紹介して下さったこの日の献立は、まずは前菜の盛り合わせ(菜花の豚肉巻き、タコピザ、鯛の手まり寿司、菜花のからし和え、そら豆)。

いすみ産ヒラメと鯛のカルパッチョに、「トマト de おでん風」(トマトはファームヤード石野さんのもの)、

いすみ豚 肩ロースのロースト。
 そして、いすみ産タコのしゃぶしゃぶ。〆にはラーメンを入れて頂きました。

飲みものラインナップも豊富です。
 特に日本酒は、木戸泉だけでも大くの銘柄を取り揃えて下さいました(なみへい名物・飲み比べセットも)。

美味しい料理と飲みもので、会場は盛り上がります。
 鳥塚さんも参加者の輪の中に入り、懇談されていました(私も名刺交換させて頂きました)。

終了近く、なみへいオーナー・川野真理子さんからの挨拶。
 なみへいは今年度、いすみ市から6つの事業を受託しており、この日のイベントがその最後の事業だったそうです。
 川野さんの「絶対に満席にして盛り上げないと思っていたが、お陰様で多くの方に参加頂き、すごくほっとした」との言葉が印象的でした。
 パートナーだったいすみ市役所の方からも挨拶。

「東京から故郷おこし」を標榜するなみへいの、ステップアップした新事業の一つは大きな成果を上げたようです。
 人と人とのつながりを通じて地域同士をつなぐなみへいの取組みに、今後も期待したいと思います。