【豆知識272】知的・発達障がい者の農作業によるストレス軽減効果

近年、農福連携の取組み(障がい者等が農業分野で活躍することを通じ、自信や生きがいを持って社会参画を実現していく取組み)が広がっています。
 農作業は、障がい者等のストレスを減らす効果がある(「農の福祉力」)とされていますが、順天堂大学大学院 緩和医療学研究室、NPO法人ユメソダテ、都城三股農福連携協議会は、そのことを実証するため、「農作業によるストレス軽減テスト」を実施しました(2023年3月)。
 添付先のグラフは、その結果を示したものです。
 https://food-mileage.jp/wp-content/uploads/2023/08/272_noufuku.pdf続きを読む

【豆知識271】農業用水路の長さ(延長)など

「瑞穂の国」とも称される日本は、温暖湿潤な気候風土に恵まれ、豊かな農業生産が展開されてきました。その農業生産を支えてきたのが、全国に網の目のように張り巡らされた農業用水路です。
 添付先のグラフは、農業用水路の長さ(延長)等を示したものです。
 https://food-mileage.jp/wp-content/uploads/2023/07/271_suiro.pdf

日本の農業用水路全体の長さ(総延長)は約40万kmとされ、これは実に地球10周分に当たるそうです。また、農業用水路のうち受益面積が100ha以上ある基幹的農業用水路の長さは約4万9千kmとなっています。
 これを一級河川の国による直轄管理区間、一般国道の指定区間、JRの線路と比較すると、いずれも農業用水路の方が長く、農業用水路は公共的な施設として大きな量(ストック)を有していることが分かります。… 続きを読む

【豆知識270】コロナ禍の下でも堅調だった「中食」

「中食」(なかしょく)とは、レストラン等へ出掛けて食事をする「外食」と、家庭内で手づくり料理を食べる「内食」の中間にあるもので、デパ地下の総菜、テイクアウト、ケータリングサービスの調理食品等を指します。
 リンク先のグラフは、中食を含む外食産業の市場規模の長期的な推移を示したものです。
 https://food-mileage.jp/wp-content/uploads/2023/07/270_gaishoku.pdf

これによると、(狭義の)外食の市場規模は1990年代半ばまで成長が続き、バブル崩壊やリーマンショックの影響により横ばいで推移した後、2010年代に入ってからは再び成長していましたが、2020年以降、新型コロナウィルスの感染拡大により大きく落ち込みました。関係する事業者の方々のご苦労は並々ならぬものでした。

これに対して料理品小売業(テイクアウト等を含む、いわゆる中食)は、過去はほぼ外食と同様の動きを示していたものの、新型コロナウィルスの感染拡大があった2020年以降も大きな落ち込みは見られません。… 続きを読む

【豆知識269】東京圏在住者の地方移住への関心

内閣府は、新型コロナウイルス感染症の影響下における生活意識・行動の変化に関するインターネット調査を定期的に行っています。
 リンク先の図269は、本調査における東京圏在住者の地方移住への関心の推移を示したものです。
 https://food-mileage.jp/wp-content/uploads/2023/06/269_iju.pdf

これによると、新型コロナウイルスの感染が拡大し始めた2020年5月の段階では、東京圏在住者(全年齢)のうち地方移住に関心のある人は30.2%でした。この割合はコロナ禍の下で徐々に増加し、2023年3月調査では35.1%(強い関心がある4.5%、関心がある9.7%、やや関心がある21.0%)となっています。
 これを20歳代についてみると、地方移住に関心のある人は2020年5月時点で39.2%と全年齢平均より9ポイント高く、コロナ禍の下で平均を上回って上昇し、2023年3月時点では44.8%(強い関心がある7.1%、関心がある13.5%、やや関心がある24.3%)と、平均を10ポイント近く上回っています。… 続きを読む

【豆知識268】「エシカル消費」に対する意識と実践

消費者庁「令和4年度第3回 消費生活意識調査」(2022年12月)はエシカル消費を取り上げています。本調査では、「エシカル調査(倫理的消費)」を「地域の活性化や雇用などを含む、人・社会・地域・環境に配慮した消費行動」と定義しています。

 エシカル消費を知っていると回答した人の割合は26.9%で、2016年(6.0%)、2019年(12.2%)に比べると、認知度が徐々に浸透してきていることを示しています。
 エシカル消費に対する認知度・興味、実践の状況を、性別・年齢階層別に示したものがリンク先の図268です。
 https://food-mileage.jp/wp-content/uploads/2023/06/268_ethical.pdf続きを読む

【豆知識267】パン食をご飯食に変更した場合の効果

フード・マイレージ指標を用いると、地産地消や国産農産物を選択することによる、輸送に伴う二酸化炭素排出量の削減効果を簡単に試算することができます。
 リンク先の図は、埼玉県内のある生協から依頼されて、パン食をご飯食に変更することによる効果を試算したものです。
 https://food-mileage.jp/wp-content/uploads/2023/05/267_gohan-pan.pdf

左の2本のグラフは、現在、1週間の21食(3食×7日)のうち、ご飯を11回、パンを10回食べているのを、1食ずつ、ご飯を増やしパンを減らした場合の変化(輸送に伴う二酸化炭素排出量の削減効果等)を示したものです。
 なお、消費地はさいたま市、お米は新潟・佐渡島産、小麦はアメリカ・カンザス州産と仮定しています。… 続きを読む

【豆知識266】日本の有機農業の取組み面積

2021年9月に農林水産省が発表した「みどりの食料システム戦略」(以下、「みどり戦略」)においては、有機農業の面積を2050年までに100万ha(全農地の25%)へと拡大する目標が掲げられています。
 では現在、日本において有機農業に取り組まれている農地はどの程度あるのでしょうか。リンク先は、日本の有機農業の取組み面積と、全農地面積に占める割合の推移を示したものです。
 https://food-mileage.jp/wp-content/uploads/2023/05/266_yuuki.pdf

2022年における有機農業の取組み面積は25.2千haと、過去10年で約5割と大きく拡大しています。内訳をみると、有機JASの認証を取得している農地が56%、認証を受けていない農地が44%となっており、近年、認証を取得している農地の割合が上昇しています。
 しかしながら、全農地面積に占める割合はわずか0.6%弱に過ぎません。… 続きを読む

【豆知識265】木材供給量と自給率、苗木生産量の推移

リンク先の上の棒グラフは、日本における木材の供給構造の長期的推移を示したものです。
 https://food-mileage.jp/wp-content/uploads/2023/04/265_naegi.pdf

国産材の供給量は、1960年代以降、長期的に減少傾向で推移してきましたが、2002年の1,692万立米を底として増加傾向に転じています。これは、森林資源の充実、合板原料としてのスギ等の国産材利用の増加、木質バイオマス発電施設での燃料材利用の増加等によるものです。
 一方、輸入材の供給量については、1960年代以降、丸太を中心に急増し、高い水準で推移してきましたが、1996年の9,045万立米をピークに減少に転じています。これは、中国の輸入増、ロシアの丸太の輸出規制等が背景にあります。なお、2020年は新型コロナウィルス感染拡大による混乱もあり、前年に比べ15%減少しました。

これらの動向を受けて、木材自給率(折れ線グラフ)は2000年頃まで低下傾向で推移していましたが、2002年の18.8%を底に上昇に転じ、2021年は41.1%となっています。… 続きを読む

【豆知識264】小売店の減少と郊外型ショッピングセンターの増

小売店の数は2000年代に入っても減少を続けています。
 2016年における飲食料品小売店(事業所数)の数は29.9千店と、2002年の46.6千店に比べ約6割の水準へと大きく減少しています(リンク先の下の棒グラフ)。
 https://food-mileage.jp/wp-content/uploads/2023/04/264_SC.pdf

一方、ショッピングセンター(飲食業、サービス業を含むテナント数が10以上の施設)の数は、2021年は3,169施設と、2001年の2,603施設から22%増加しています(上の棒グラフ)。
 これを立地別にみると、中心地域(人口15万人以上の都市で、商業機能が集積した中心市街地)に立地している施設は478(15%)にとどまっており、残りの85%は市街地の周辺あるいは郊外に立地しています。周辺・郊外に立地しているショッピングセンターの割合は、2001年以降、ほぼ右肩上がりで推移しています(折れ線グラフ。途中で定義の変更があったために厳密には接続しません)。… 続きを読む

【豆知識263】進まない農業分野での価格転嫁

公益社団法人 日本農業法人協会は、2022年11月から12月にかけて「第2回 農業におけるコスト高騰緊急アンケート」を実施しました(対象は協会の正会員、有効回答数460)。
 これによると、ほとんど(97%)の生産者が前年10月に比べて生産コストが上昇したと回答しており、特に畜産においては54%の生産者が1.5倍以上に上昇したとしています(リンク先の一番上のグラフ)。
 https://food-mileage.jp/wp-content/uploads/2023/03/263_tenka.pdf続きを読む

【豆知識262】日本が依存している海外の農地面積

日本の食料自給率はカロリーベースで38%(2019年、生産額ベースでは63%)と、主要国のなかでは最も低い水準となっており、私たちの食生活は大量の輸入食料に依存しています。つまり、私たちの食料の6割以上は、海外の農地で生産されているのです。
 農林水産省は、日本の農産物輸入量を海外の農地面積に換算(試算)した数値を公表しています(リンク先のグラフ参照)。
 https://food-mileage.jp/wp-content/uploads/2023/03/262_kaigai_ison.pdf

これによると、海外に依存している品目(小麦、とうもろこし、大豆、畜産物(飼料)等)の生産に用いられている農地面積は913haと試算され、これは、日本国内の農地面積(442万ha)の約2倍に相当しています。
 この状況は、当然ながら武力侵攻により海外の農地を略奪していること等を示している訳ではなく、市場経済と自由貿易の下で実現しているものではありますが、世界的に気候危機が叫ばれるなか、私たちの食料供給がぜい弱な基盤の上に成り立っていることは間違いありません。また、砂漠化など資源不足が叫ばるなかで世界には8億人以上の飢餓人口がおり、一方で日本国内では約28万haの農地が耕作放棄等により荒廃していることを考えると、倫理的にも問題なしとは言えないのではないでしょうか。… 続きを読む

【豆知識261】書店数、平均販売額等の推移

農家数の減少が危機感をもって語られる機会は多いですが、実は書店数も大きく減少しています。
 リンク先のグラフは、全国の書店数等の推移を示したものです。
 https://food-mileage.jp/wp-content/uploads/2023/02/261_shoten.pdf

おおむね3年ごとに実施されてきた経済産業省「商業統計」(2012、16年は「経済センサス」)によると、全国の「書籍・文房具小売業」の事業所数(棒グラフ)は1980年代には8万店近くありましたが、90年に入ってから減少のペースを速め、2016年には3万5千店弱とピーク時の4割強にまで減少しています(調査設計の変更により厳密には接続しません)。
 なお、同期間に販売農家数は3割弱へと減少しています。… 続きを読む

【豆知識260】コロナ禍が外食産業に与えた打撃

2021年1月15日、新型コロナウイルスの感染が国内で初めて確認されて以降、緊急事態宣言やまん延防止等重点措置が累次にわたって発令され、営業時間の短縮等が要請された飲食店は、大きな打撃を受けました。
 リンク先の折れ線グラフは、外食産業の売上金額の推移(2000年=100)を業態別に示したものです。
 https://food-mileage.jp/wp-content/uploads/2023/02/260_gaishoku.pdf

2000年代、なだらかに増加していた売上金額は、新型コロナウィルスが確認された2020年から21年にかけて激減しました。
 22年は、3月に営業制限が解除され、価格改定もあったことから前年比113%とやや持ち直しましたが、コロナ禍前の19年の水準には戻っていません(19年比94%)。… 続きを読む

【豆知識259】「物価の優等生」と規模拡大

飼料価格の高騰等を背景に、「物価の優等生」とされる鶏卵の価格が上昇しています。リンク先の折れ線グラフは、消費者物価指数(1970年=100)の推移を示したものです。
 https://food-mileage.jp/wp-content/uploads/2023/01/259_keiran.pdf

消費者物価指数(総合)は長期的に上昇基調で推移しましたが、2000年代に入ってからはほぼ横ばいとなっています(1970年比3.2倍)。食料全体もほぼ同様の動きとなっていますが、近年は総合を上回って推移しています(同3.5倍)。
 一方、鶏卵価格は長期的にほとんど上昇しておらず、まさに「物価の優等生」であったことが見て取れます。

棒グラフは、農家(経営体)1戸当たりの飼養羽数の推移を示したものです。1970年においては70羽程度(300羽未満の生産者を含む。)だったのが、2021年には約7万5千羽(1000羽以上の生産者のみ)と、実に1000倍以上の規模拡大が実現しています。… 続きを読む

【豆知識258】国民経済における農林水産業の地位

経済発展に伴い、国民経済における第一次産業(農林水産業)のシェアが低下し、第二次産業(製造業)、さらには第三次産業(サービス業)のシェアが上昇することは、世界的・歴史的にも明らかな現象です(「ペティ・クラークの法則」)。
 リンク先の青い折れ線グラフは、日本の国内総生産(GDP)に占める農林水産業の割合の推移を示したものです。
 https://food-mileage.jp/wp-content/uploads/2023/01/258_GDP2.pdf

これによると、1970年代前半において5〜6%のシェアを有していた農林水産業は、経済発展(サービス化の進行等)に伴って大きく低下し、90年代前半には2%を割り込み、近年はほぼ1%の水準で横ばいとなっています。
 このことをもって、かつては1.5%の一次産業のために日本経済全体を犠牲としてはならないと発言した外務大臣(当時)さえいました。… 続きを読む