【オーシャン・カレント】小農学会オンラインセミナー「フード・マイレージ最前線」

食料の輸送量に輸送距離を乗じたフード・マイレージは、もともとは食料輸送に伴う環境負荷の大きさ(CO2排出量)を把握するために開発された指標ですが、最近のパンデミックやウクライナ危機のなかで、食料の安定供給(安全保障)を考える際のヒントとなるものとしても注目されています。
 以下により、6月17日(金)、小農学会オンライン定期セミナー(zoom)で話題提供させて頂きますので、食料や一次産業に関心のある方のご参加をお待ちしています(参加費無料)。

日時:2022年6月17日(金)19:30〜21:00
  19:30〜 開会、中田からの話題提供「フード・マイレージ最前線」(仮題)… 続きを読む

【オーシャン・カレント】高値が続くたまねぎ

農林水産省は、毎週、小売店における主な野菜価格の動向を調査し公表しています。
 具体的には、キャベツ、ねぎ、レタス、ばれいしょ、たまねぎ、きゅうり、トマト、にんじんの8品目を対象に、毎週1回、各都道府県10店舗の量販店(全国470店舗)を調査員(農林水産省が委託する民間調査機関の調査員)が訪問して調査しているものです。

去る5月24日に発表された最新の調査結果によると、5月16日の週(16〜18日)のたまねぎの小売価格(全国平均)は1kg当たり550円と、前週に比べると5%低下したものの、平年(過去5年平均)の2.2倍という高い水準で推移しています。
 これは、最大の産地である北海道において、昨年夏の干ばつの影響で収穫量が減少したことに加え、後続産地である佐賀など西日本産地においても低温や干ばつの影響で肥大が進んでいないためです。また、作付けを中止した高齢農家等が多かったことも影響しているとも言われています。
 さらに、輸入価格についても、最大の輸入相手国・中国のロックダウンの影響により上昇しています。… 続きを読む

【オーシャン・カレント】若年ママ応援シェルター「おにわ」

昨年(2021)10月1日、沖縄本島中部に若年ママの出産・子育てを応援するシェルター「おにわ」がオープンしました。
 DV等を避けるために一人で赤ちゃんを産んで育てることになった若いママ達(10代の妊娠8か月から赤ちゃんの生後100日までの方)に、出産の前後を過ごす場所を24時間体制で提供する取組みです。
 琉球大学の上間陽子さんと本村真さんが共同代表となり、琉球大学附属病院や助産師さん(寮母さん)がサポートする体制になっているとのこと。

『裸足で逃げる』『海をあげる』等でも知られる上間さんは、風俗業界で働き、暴力を受け、若年出産するなど、凄惨としか言えないような生き方をしている少女たちへのインタビューを続けるなか、調査・研究に留まらず、自ら社会の中に「避難できる場所」をつくる決心をされました。
 その時の思いを、上間さんは、「私の手にあまる。でもつくらないときっとたぶん後悔する。間に合わなかった子たちもいる。それでも動けばなにかは変わる。なにかが変われば、これから間に合うこともあるだろう」とエッセーに記されています。… 続きを読む

【オーシャン・カレント】特別講座・著者に尋ねる『フード・マイレージ』

自己PRで恐縮です。
 5月12日(木)19時から、第6回「市民科学特別講座・著者に尋ねる」(NPO市民科学研究室主催)で、拙著『フード・マイレージ[新版]』(2018.1、日本評論社)を取り上げて下さいます(オンライン)。

 当日は、フード・マイレージの概要(定義、計算結果、限界・問題点等)、食生活と地球環境問題との関わり(地産地消の効果)、フード・マイレージの現代的意味(パンデミックや国際紛争に伴う国際物流の混乱、食糧安全保障の重要性等)等について話題提供し、参加者との間で意見交換させて頂く予定です(事前に質問も受け付けています)。… 続きを読む

【オーシャン・カレント】過去最高値を更新するFAO食料価格指数

−過去最高値を更新するFAO食料価格指数−

FAOのウェブサイトより。https://www.fao.org/worldfoodsituation/foodpricesindex/en/

去る4月8日、国連食糧農業機関(FAO)が公表した2022年3月の世界の食料価格指数(2014〜16年=100)は159.3と、前月の141.4から17.9ポイント(12.6%)上昇し、1990年の集計開始以来、2か月連続で最高値を記録しました。

穀物は前月から17.1%上昇しており、特に紛争のためウクライナとロシアからの輸出が混乱していること等から小麦は19.7%、とうもろこし等の粗粒穀物は20.4%と高騰しています。… 続きを読む

【オーシャン・カレント】農業・農村の多面的機能

農林水産省パンフレットより。https://www.maff.go.jp/j/nousin/noukan/nougyo_kinou/pdf/adult_zentai.pdf

農業・農村は、食料の供給だけではない様々な重要な役割を果たしています。
 例えば、水田には雨水を一時的に貯留することで洪水や土砂崩れを防ぐ機能があります。全国の水田に貯留できる水の量は約50億立米(東京ドームの約4千杯)とも言われています。
 さらに、河川の流量安定と地下水の涵養、生物多様性の維持、農村景観の保全、伝統文化の継承、体験学習や教育の場の提供など、様々な役割を果たしているのです。

これらの機能は基本的に貨幣換算できるものではなく、お金で買うこともできないものですが、2001年の日本学術会議の答申によると、洪水防止機能が3兆5千億円、河川流況安定機能が1超5千億円、土砂崩壊防止機能が約5千円、保健休養・やすらぎ機能が2兆4千億円等と試算されています。… 続きを読む

【オーシャン・カレント】福島ひまわり里親プロジェクト

2011年3月11日に発生した東日本大震災と東京電力福島第一原子力発電所の事故は、福島県の産業や暮らしに大きな打撃を与えました。
 福島県産の農林水産物については、現在は野生の山菜・きのこや鳥獣、川魚など一部を除いて安全が確認されていますが、当時はいわゆる「風評被害」により、例えば福祉作業所でお菓子を詰めていた障がい者の方まで仕事を失ってしまうなど、深刻な状況となりました。
 そこで、全国の人々に“里親”になってもらって、復興のシンボル“ひまわり”を育て、採れた種を返送してもらうことで、福島県における雇用創出、絆づくり(交流イベント「ひまわり甲子園」の開催や絵本の作成など)、搾った油のバスの燃料としての利用、防災教育等につなげる「福島ひまわり里親プロジェクト」が開始されたのです。

これまでのプロジェクトへの参加者は55万人以上、学校は5,900校を超えるとのこと。大震災から11年を経て、プロジェクトは広く全国に浸透しています。

福島ひまわり里親プロジェクト… 続きを読む

【オーシャン・カレント】ウクライナの農業と日本

ウクライナの人口は4,159万人と日本の約3分の1であるのに対して、60.4万平方キロメートルと日本の約1.6倍の国土面積を有しており、しかもその約7割が農用地です(日本は約1割)。
 気候が温暖なこともあり、ウクライナは古くから「ヨーロッパの穀倉」「ヨーロッパのパンかご」と呼ばれるほど農業の盛んな国です。主要農産物は小麦、とうもろこし、ばれいしょ、ひまわりの種、てん菜などで、二色からなるウクライナの国旗は青い空と黄金の麦畑を表しているともされています。
 なお、国内総生産(GDP) に占める農林水産業のシェアは約10%と、日本の1%と比べて大きなものとなっています。

2021年における日本のウクライナからの輸入額は798億円ですが、その半分以上をたばこが占めています。ウクライナにはJT(日本たばこ産業)の工場があり日本向けの製品等を生産していますが、現在は操業が停止されているようです。… 続きを読む

【オーシャン・カレント】農業をはじめる.JP

「農業をはじめる.JP」は、新規就農を目指す人のためのポータルサイトで、農林水産省の補助事業により(一社)全国農業会議所が運営しています。
 https://www.be-farmer.jp/

全国農業会議所とは、全国の市町村で農地の権利移動や転用の許認可等の業務を担っている農業委員会の全国系統組織で、全国新規就農支援センター(相談窓口など)の運営も担っています。

「農業をはじめる.JP」では、職業としての農業に興味を持たれた方や農業を仕事にしたいと考え始めた方が、就農に向けて具体的なアクションを起こしていくために役立つ情報を、分かりやすく、一元的に提供しています。[就農を知る][体験する][相談する][研修/学ぶ][求人情報][支援情報]に分類され、必要な情報にアクセスしやすいように工夫されています。
 また、全国及び各県の新規就農相談センターで行われている相談会や個別の相談業務(対面、オンライン、メール、電話等)、就農イベント(新・農業人フェア)に関する情報も掲載されています。… 続きを読む

【オーシャン・カレント】伝統工芸品・亀田縞(新潟)

もんぺ製作所HPより https://monpeseisakusho.com/

亀田縞は、新潟・亀田郷において300年以上にわたり育まれてきた伝統織物です。
 現在の新潟市中央部に位置する亀田郷は、越後平野を流れる信濃川や阿賀野川に囲まれた広大な低湿地帯で、第二次世界大戦後に土地改良事業(排水事業)が実施される以前は、舟を使って腰まで水に浸かりながらという過酷な稲作が営まれていました。その様子は司馬遼太郎『潟のみち』にも描かれています。

その亀田郷での農作業や暮らしの中で、泥や水に強い綿織物として生み出された亀田縞ですが、戦後、海外からの安価な繊維製品の輸入が増加するなかで、いったんほとんど姿を消してしまいました。しかし平成の時代に入り、技術を守り続けてきた地元の方たちの尽力によって復活したのです。… 続きを読む

【オーシャン・カレント】上堰米のお酒−

福島・喜多方市山都にある本木上堰(もときうわぜき)とは、江戸中期に12年の歳月をかけて山腹に造成された素掘りの用水路で、300年近くの間、地域の棚田に水を供給してきました。
 維持管理には大変な手間がかかり、地元農家の減少・高齢化等のため、存続の危機に瀕するようになってきました。堰がなくなると地域での米作りは不可能となり、水源涵養や国土保全の役割も担っている棚田も維持できなくなります。
 そこで、地元の有志の方たちによる「基樹・早稲谷 堰と里山を守る会」は、毎年5月、首都圏を中心に毎年50年ほどのボランティアを募集し、協力して堰さらいや水路の補修などを行ってきました。

この棚田のお米(コシヒカリ)を使って作られた純米酒が「上堰米のお酒」です。1本あたり200円が「守る会」に寄付されます。棚田や水路を守るために「飲んで応援」しませんか。… 続きを読む

【オーシャン・カレント】「食と農の市民談話会」Season2

食と農の課題を「自分ゴト」とすることで「食と農の間の距離」を縮めるきっかけとすることをねらいに、2021年6〜11月にかけて「食と農の市民談話会」を開催しました(全6回。別に番外編として「放談会」も開催)。各回、ユニークで先進的な活動をされている方から話題提供を頂き、毎回20名以上の参加者を交えて談話(意見交換など)を行うことができました。
 本年1〜3月にかけで、以下によりSeason2 を開催します。
 ざっくばらんな会ですので、「食べものや一次産業のことに何となく関心はあるけど、よく知らないな〜」といった方を含め、多くの方の参加をお待ちしています。

・第7回 … 続きを読む

【オーシャン・カレント No.231】大江正章さんを偲ぶ会

2020年12月15日、出版社コモンズやNPOアジア太平洋資料センタ−等で活躍された大江正章(おおえ・ただあき)さんが逝去されました。地域、農と食、アジアと日本の関わりなど幅広いテーマについて、編集者・ジャーナリストとして多くの現場に足を運んで取材し、深い考察を重ねてこられました。

 大江さんが亡くなった後、多くの友人・知人たちが「呼びかけ人」となって計画・準備してきた「偲ぶ会」が、大江さんが亡くなってから約1年後の12月18日(土)に、以下により開催される運びとなりました。
 多くの方のご参加、あるいはご賛同をお待ちしています。

日時:2021年12月18日(土)13:00〜17:30(予定)
 開催方法:基本的にオンライン(申し込み不要)… 続きを読む

【オーシャン・カレント No.230】COP26と石炭火力発電

(外務省HPより。)

COPとは国連気候変動枠組み条約(1992年採択)の締約国会議(Conference of the Parties)のことで、1995年以降ほぼ毎年開催されてきました。26回目に当たる今年の会議は10月31日からイギリスのグラスゴーで開催され、会期を1日延長した11月13日に合意文書(「グラスゴー気候合意」)が採択されました。… 続きを読む