仰臥慢録

明治16(1883)年に上京、俳句・短歌の革新運動に身を捧げていた正岡子規は結核に冒され何度か喀血、ついには寝たきりの生活を強いられます。

その病床で子規は多くの優れた随筆や日記文学を残しました。その一つ「仰臥漫録」は、他人に見せることを想定していない私的な日誌であり、子規の心情が赤裸々に吐露され、また、写実派らしく日々の出来事が詳細に記録されています。

例えば明治34(1901)年9 月24 日には、子規は次のようなものを食べています。大変な健啖家です。 … 続きを読む

「点と線」から

先週の6月19日(土)は、北九州市主催「食育月間講演会-私たちの食について考えよう-」に呼んで頂き参加して来ました。前半は私から「食と農の現状と課題」について説明し(「関係資料」5に掲載)、フード・マイレージに関しては、市のU係長から、自ら食材を調達し作った献立に即し、二酸化炭素排出量等を計算されたものを発表して頂きました。参加者の皆様にもフード・マイレージを身近に感じて頂けたと思います。ありがとうございました。[イメージキャラクター:食育スマッキー]

後半は、北九州市食育推進ネットワークに登録されている方々からの報告会でした。保育士会、歯科医師会(小倉、若松)、食生活改善推進員協議会、消費者団体連絡会の皆様から、日頃の活動内容について豊富な写真等を使って発表がなされ、会場と意見交換が行われました。特色ある様々な取組の報告を拝聴していて、この地における食育が着実に広がりつつあることを実感しました。 … 続きを読む

食の砂漠

今日は、農林水産政策研究所で開催された「フードデザート」に関するセミナーを聴講してきました。近年、郊外型の大規模ショッピングモール等が各地にでき、昔ながらの中心商店街の空洞化が進んだ結果、車を持てない(運転できない)高齢者や所得の低い人々が近所で食品を買えないような地域が増えています。このような地域が「フードデザート(食の砂漠)」で、日本ではまだ耳新しい言葉ですが、イギリスではかねてより政府主導の下で研究や対策が進められているとのことです。セミナーでは、茨城キリスト教大学の岩間信之先生から、イギリスの事例とともに日本国内でのご自身の研究成果について興味深いご報告がありました。水戸市の事例では、商店の郊外化に伴いフードデザートが広がっていることが地図上で如実に表されていました。これら研究成果等は先生のホームページで詳しく紹介されています。

http://www.hpmix.com/home/inob1012/T1.htm

フードデザート研究は、社会的弱者の健康面や地域コミュニティの活性化など社会学的な視点が中心のようですが、考えてみると、今まで徒歩や自転車で買い物に行っていたのが郊外に自家用車で行くようになると、環境負荷も相当大きくなるのではないでしょうか。コンパクトシティづくりとも関連して、今後、環境負荷の低減という視点から勉強していきたいテーマです。

中村医師の情熱

大田区蒲田で中村哲さんの講演を聞いてきました。

ペシャワール会現地代表の中村医師といえば、アフガニスタンにおいて本業の医療のみならず、井戸掘りや用水路建設等に文字通り身命を賭している方として、多くのマスコミにも取り上げられています。単身、戦火の地で復興事業の先頭に立たれるとは、どんなにバイタリティ溢れる方かと思っていると、ステージに出てこられた中村医師は、小柄で、話し方も訥々としておられることに少々驚きました。アフガンの風景を映写しつつ始まった講演は、そのあまりにも偉大な功績に似合わず、もちろんそれを誇るようなそぶりは一切見せられず、また、部下の日本人ワーカーを亡くすという惨劇を経験されたにも関わらず、淡々と進み、感情的に大きく盛り上がるということもなく、終了しました。

講演後の質疑応答で、会場の若い男性から「先生の活動の原動力は何ですか」と聞かれた中村医師、「古い言葉だけど、ここで引いたら男がすたる、と思った。現実に困っている人がいて、自分にできることがあるにも関わらず、それをしないのでは気持ちが悪かった」と、誠実な人柄そのままに答えられていたのが印象的でした。そうなのです。声高に叫ぶことが世の中を変えるわけではないのです。他にも多くの有名ではない(マスコミ等では取り上げられない)方たちが、世界中で、日本の中でも、献身的に活動されているのです。

澤地久枝さん(当日も講演前に挨拶されました。)が聞き手になった「人は愛するに足り、真心は信ずるに足る」(2010.2、岩波書店)は、中村医師の秘めた熱い思いを澤地さんの筆が迫力をもって引き出しており、さらに、それを引き出そうと生い立ちから体重まで聞き洩らさない澤地さんの気迫も感じられる、素晴らしい一冊です。

観客

映画「ミツバチの羽音と地球の回転」を観ました。山口県祝島の人たちの「反原発」の闘いと先進国・スウェーデンの様子がコントラスト鮮やかに描かれているドキュメンタリーです。

特に印象的だったのは、埋立てを阻止しようとデモを繰り広げる島民たちに、電力会社の社員が船の上から拡声器で「対話」を試みるシーン。「一次産業だけで食べていけるはずがない」。これに対し、ひじきやビワ、食品残さで放し飼いの養豚等で食べているオバチャンやオジチャン、Uターンの若いお父さん・孝君たちは体を張って抵抗します。別の場面では、上京して経済産業省の若い課長補佐を吊るし上げにもします。これらの殺伐としたシーンと対照的に描かれる、島の自然の恵みの豊かさと、その中で漁業や農業に携わる人たちの姿の美しさ、たくましさが、心に沁み入ります。上映後の鎌仲ひとみ監督の舞台挨拶には、観客から大きな拍手が送られました。面白く、ぜひ多くの方に観てもらいたい映画です。

でも正直、観ている間、ある種の違和感というか、居心地の悪さがずっと消えませんでした。つまり、孝君やオバチャンたちの命をかけたドキュメンタリー・ドラマを、私は観客として、エアコンの効いた新宿のホールで観ているのです。都会に住む私たちが便利で快適な生活を求め続ける限り、原発は「必要悪」として存続していかざるを得ない面があるのではないでしょうか。ひとつの地方でのドラマは、実は日本人全体の現在のライフスタイルを反映したものなのです。

ホールを出ると22時近く、祝島のオバチャン達の多くは眠りについているであろうこの時刻、煌々とした光に彩られた不夜城・新宿の街に、ぽつりぽつりと雨が降り始めました。

がんばれタッチー

今日は横浜市栄区の「さかえCO-DO(コード)30推進協議会」で、「私たちの食と農の現状と課題-フード・マイレージから考える」とのタイトルで説明をさせて頂きました。「CO-DO30」とは、2025年までに温室効果ガスを30%減らすという、意欲的な横浜市の脱温暖化行動方針です。栄区の協議会は、自治会など住民組織、学校、事業者、行政機関等の代表60名以上から構成され、この日は、昨年度からのキャンドルナイトや緑のカーテン作戦に加え、今年度は新たにエコクッキング講座や地産地消イベントへの参加等の事業計画について審議・決定がなされました。いわゆる「シャンシャン」の会合ではなく、参加者からしっかりとした、かつ前向きな意見や提案が出されていたのが印象的でした。

神奈川県の食料自給率はわずか3%に過ぎませんが、都市化が進んだこの地においても、地産地消を含めて積極的に取り組んでおられることを知り、大変、心強く感じました。関係者の皆様の、地域における活動の広がりに期待したいと思います。

最後に、私を呼んで頂く企画を立てられた担当のNさん、雰囲気が少し「タッチー」(注)に似ていると言うと女性に失礼かもしれませんが、大変お世話になりました。帰りに本郷台駅まで乗せて頂いたプラグイン・ハイブリッド車(電気自動車)も、エヴァンゲリオンみたいで格好良かったです!

 

(注)タッチーとは、いたち川に由来する地球温暖化対策のマスコット。絵本のストーリーとロゴマークは小学生の作品とのこと。ほのぼのとして素晴らしいです。 … 続きを読む

キムラさん

今夜は飲み会があって最寄りの駅まで帰ってきたのは22時過ぎ、どうも飲むと食べ足りない気がすることが多いのですが、ちょうど目の前に牛丼チェーンM屋。ここのカレーは以前からファンで、気がつくとふらふらと引き込まれていました。

遅い時間でしたがサラリーマンや学生風など多くの人で賑わっています。自動販売機でチケットを買って席に着くと、すぐに40~50歳代とお見受けするオバチャンが水を持ってきてくれました。名札には「キムラ」とカタカナなのもファストフード風。従業員は若い学生アルバイト風のオニイチャンとの2人だけで、調理や応接などてきぱきとこなしています。「お持ち帰り」を待っている人もいます。遅い時間になかなかの重労働です。

ファストフードについては、食育の観点から色々と批判されることもありますが、お陰で私たちは夜中でも暖かい食事を安い値段で取ることができるのです。やはり私たちの社会は恵まれ、豊かなのです。

酔っ払った頭でこんなことを考えている内に食事も終わり、席を立とうとしてちょっと緊張しました。キムラさんは忙しく立ち回っていて、ひとこと声をかけるタイミングがなかなかありません。目の前を通られる際をねらって遠慮がちに「ごちそうさま」と言うと、ちゃんと「有難うございました」と返ってきました。この応対もマニュアル通りなのかも知れませんが、ほっとしました。

最終のバスに飛び乗って、もう一度、心の中で言いました。「キムラさん、ごちそうさま。ありがとう」。… 続きを読む

大竹道茂さん

気持ちのいい快晴。小金井市で開催された「雑学大学」に参加し、約2時間、大竹道茂さんの熱のこもった講演をお聞きしてきました。江戸東京・伝統野菜の復活と普及をライフワークに活動されている方です。

http://edoyasai.sblo.jp/

大竹さんの活動は、次の2点で非常にユニークかつ先進的です。

一つは、わずか食料自給率1%に過ぎない大都会・東京において、江戸東京野菜の復活・普及を通じ、物語(伝統と文化)と不可分な農業の価値を改めて多くの人に気付かせてくれていること。もう一つは、農業関係者だけではなく、幼稚園や小学校、大学、料理店など、極めて多彩な関係者のネットワークの下、食育や街づくりの一環として取組みが広がり、結果として確実に農業生産が拡大し、農地も維持されているということです。小金井市も江戸東京野菜を核とした商店街振興等に取り組まれている地域の一つです。

農業の価値や大事さ(言葉で書くと軽薄ですが。)を、多くの人が忘れかけているようなこの国で、まさに都市化の最先端・シンボルである大東京を舞台にした大竹さんの取組みが確実に広がっていることに、心励まされた一日でした。… 続きを読む

吉田俊道さん

長崎県佐世保市を拠点に「生ごみリサイクル元気野菜作り」という体験活動を各地で広められている吉田俊道さんという方がおられます。約5年前になりますが、九州農政局(熊本市)在勤中、初めて吉田さんの講演を聞く機会がありました。正直、そのタイトルから、単に生ごみで野菜を作るノウハウお話かと大きな期待はしてなかったのですがさにあらず、自然界の循環と共生の本質を知り生き方を見直そうという文明論的なスケールの大きなお話。しかもしっかりと実践と経験に根ざした話に、衝撃を受けたことを昨日のように覚えています。早速、ご無理を言って九州地域食育推進協議会の委員に就任して頂きました。吉田さんは、NPO法人「大地といのちの会」の代表も務めておられます。

http://www13.ocn.ne.jp/~k.nakao/

 

吉田さんの活動の中心は幼稚園等での体験学習の指導です。その活動の範囲はどんどん広がっており、今日の夕方には東京・目白で子育て中の若いお母さんたちを相手に約2時間、膝詰めで熱く訴えられました。久しぶりにお会いした吉田さんは、以前にも増してパワーアップしており、私自身も多くの元気を頂きました。吉田さんの力は、確実に世の中を変えていっています。ますますのご活躍をお祈りしています。

2つの会合

今日は2つの印象的な会合に参加しました。

午前10時から、東京・茗荷谷のパルシステム連合会事務所で「フードマイレージ・プロジェクト」運営委員会が開催されました。

昨年9月に発足したこのプロジェクトは、大地を守る会、パルシステム、生活クラブ、グリーンコープの4団体が、「フードマイレージ」が短い国産のものを食べることを180万世帯の各団体会員や社会へ呼びかけ自給率向上をめざそうというものです。

http://www.food-mileage-project.com/main.html

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新聞から

本日付けの日本経済新聞から雑感的に。

 

やはり心配なのは宮崎県の口蹄疫。感染の見つかった農場数は増えていますが、何とかこのまま地域的に封じ込められることを祈るしかありません。大事に育ててきた牛や豚を殺処分する農家の皆様の無念さを思うと、言葉もありません。

ただ、口蹄疫はあくまで家畜の伝染病で、仮に感染した家畜の肉を食べても人にうつることはない(実際には出荷もされていません)という意味で「食の安全」の問題とは違います。この点は多くの消費者も理解していただいているようで、2004年に鳥インフルエンザ(これも家畜伝染病です。)が国内発生した時のような混乱はみられないことは救いです。食肉の供給にも大きな影響は無いようです。

今後、感染経路の特定等が重要になってきますが、この問題の背景には、日本の畜産の飼料自給率は26%(2008年)に過ぎないという事情があります。家畜衛生の面からも、なるべく国内の飼料(飼料米も含め。)で生産できるようにしていくことが求められます。 … 続きを読む

たべものがたり―食と環境 7の話


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山本良一氏監修。「食」を見つめ、地球環境の大切さを豊富な写真やイラストとともに綴るビジュアル・エコブック第3弾で、「空飛ぶ食べもの」の章で管理者も寄稿しています。
また、本書は全国の小中学校等に寄贈するプロジェクトが行われています。このプロジェクトは、2009年度「FOOD ACTION NIPPONアワード優秀賞」(コミュニケーション・啓発部門)を受賞ました。
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食べ方で地球が変わる フードマイレージと食・農・環境


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作家の山下惣一氏(佐賀県唐津市在住)の感性溢れる文章と、気鋭の農業経済学者である鈴木宣弘氏(東京大学農学部大学院教授)の理論的な分析のはざまに埋もれるように、管理者も共編著者の一人としてフード・マイレージの紹介をしています(内容は前掲本のダイジェストです)。バーチャル・ウォーターなど、食と環境との関わりに関する他の著者による論文も所収しています。

コンビニ弁当16万キロの旅―食べものが世界を変えている


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「コンビニ弁当探偵団」著。子どもにも分かりやすい文章とイラストで、コンビニ弁当を素材に身近な食べ物がどこから来ているか等について解説しています。管理者も編集協力者としてイラストつきで登場していますが、このイラストはあまり似ていないと個人的には思っています。