【ほんのさわり】網野善彦『日本社会の歴史』


-網野善彦『日本社会の歴史』(上、中、下、1997.2、岩波新書)-
 https://www.iwanami.co.jp/book/b268321.html

前項(オーシャンカレント欄)のとおり、米(稲作)は日本の歴史において重要な地位を占めていますが、これについては異論もあります。その代表がいわゆる「網野史観」です。
 日本中世史を専門とする網野は、非農業民(漁民、職人など)に着目することで、日本を農業国家とする通説(農本主義)に異を唱えました。また、稲作祭祀を司る天皇の支配権力が及ばない「無縁、公界、(くがい)、楽」等の存在も明らかにしています。

本書下巻の最終章では、痛烈な「農本主義」批判が展開されています。… 続きを読む

【オーシャン・カレント】新嘗祭(勤労感謝の日)


 明日(11月23日)は勤労感謝の日。戦後(1948年)制定された祝日法では「勤労をたっとび、生産を祝い、国民たがいに感謝しあう」国民の祝日とされています。

この日は、もともと宮中行事である新嘗祭(にいなめさい、しんじょうさい)が行われる日でした。
 新嘗祭とは、天皇が米を始めとする新穀を神に捧げ、自らも食することで、収穫に感謝するとともに、毎年の稲作豊穣を祈るというもので、宮中行事の中でも最も重要な儀礼とされています。
 また、新たな天皇が即位して最初に行う新嘗祭は、特に大嘗祭(だいじょうさい)と呼ばれ、天皇の代替わりに伴う国家最高の儀式とされています。

新嘗祭・大嘗祭は、天武天皇(在位673~686年)の頃に始まりました。… 続きを読む

【豆知識】現代高校生の朝ごはん

日本における米の消費量は長期的に減少を続けています。
 年間1人当たり消費量は、戦後のピークであった1962年の118kgから2018年には54.4kgと、半分以下になっています。全国ベースでみると、毎年8万トンずつ需要量が減少しているのです。

そのようななか、若い世代に「ご飯」回帰が進んでいる可能性を示す興味深い調査結果があります。
 農林中央金庫では、各世代を対象に食に関する調査を継続して実施していますが、2017年には高校生を対象に、“食”に関する意識と実態を探るための調査を実施しました。調査対象は東京近郊の400人(男女各200人)です。
 また、同様の調査は2006年、2012年にも実施されていることから、この間の意識の変化を探ることもできます。… 続きを読む

【ほんのさわり】小松理虔『新復興論』

-小松理虔『新復興論』(2018.9、ゲンロン叢書)-
 https://genron.co.jp/books/shinfukkou/

東日本大震災と原発事故による被災が今も継続している「福島」の復興について、心に引っかかりを感じている人にとっては必読の書です。
 潮目の地・いわきの歴史と宿命、アート、障害福祉などの広範な観点から、復興(イコール地域づくり)が語られています。なお、400ページ近い大著ですが、文章は平易かつ明晰で、非常に読みやすい本です。

小松さんは食品メーカーに勤務する「当事者」だったこともあり、食についても多くのページが割かれています。… 続きを読む