フード・マイレージの少し詳しい説明です。



1 フード・マイレージとは


 フード・マイレージとは、イギリスのNGOによるフードマイルズ運動(なるべく身近でとれた食料を消費することによって食料輸送に伴う環境負荷を低減させていこうという市民運動)の考え方を参考に、農林水産省農林水産政策研究所において開発された指標です。


2 フード・マイレージの計算方法と意味

 その計算方法は、食料の輸送量に輸送距離を掛け合わせるという単純なものです。


 例えば10トンの食料を50km輸送する場合のフード・マイレージは、

10×50=500t・km(トン・キロメートル)となります。


 また、これに二酸化炭素排出係数(1tの貨物を1km輸送した場合に排出される二酸化炭素の量)を乗ずることにより、食料の輸送に伴う環境負荷の大きさ(二酸化炭素排出量)を定量的に把握することが可能になります。



3 輸入食料のフード・マイレージ


 2001年における日本の輸入食料のフード・マイレージを計算すると、約9千億t・km(トン・キロメートル)となりました。これは、韓国・アメリカの約3倍、イギリス・ドイツの約5倍、フランスの約9倍と際立って大きくなっています。

 品目別には、飼料穀物(とうもろこし等)や油糧種子(大豆、菜種等)が大きな部分を占めています〔図1及び参考資料1〕。



 また、このフード・マイレージに輸送手段毎の二酸化炭素排出係数を掛け合わせ累積すると、輸入食料が日本の港に到着するまでに約17百万トンの二酸化炭素が排出されていると試算されます。これは、日本国内における食料(国産品と輸入品の合計。)の輸送に伴う排出量の約2倍に相当する量です。

4 地産地消の意義


 現在の日本の食料自給率(カロリーベース)は41%です。現在の私たちの食生活は、大量の輸入食料を長距離輸送することによって地球環境に大きな負荷をかけているのです。

 地球環境にかける負荷が小さな食生活を送るためには、なるべく近くでとれた食料を消費すること、つまり「地産地消」が重要です。例えば金沢市における同じ献立でも、加賀野菜など地元産食材を使った場合の食材の輸送に伴う二酸化炭素排出量は、輸入食材を使って調理した場合と比べ、約47分の1に縮小されると試算されます〔図2及び参考2参照〕。



 

5 フード・マイレージという指標の限界とメリット


 ただし、フード・マイレージという指標には大きな問題点ないし限界があります。それは、まず輸送段階のみに着目した指標であること、また、輸送に伴う環境負荷は輸送手段(トラック、鉄道、船舶等)による差が大きいということです。つまり、地産地消費ですべての問題が解決するわけではないことには、留意が必要です。このため、最近は食料のライフサイクル全体を通じた二酸化炭素排出量を表す「カーボン・フットプリント」という指標が主流となりつつあります。


 しかし、カーボン・フットプリントについては、その概念や計測方法が複雑で、消費者にとっても必ずしも分かりやすいものとはなっていません。

 これに対してフード・マイレージは、食材の使用料と産地さえ分かれば、誰でも簡単に計算できます。このように、フード・マイレージは身近な食生活が地球環境と関わっていることに気づくツールとしては有効であり、さらには、旬産旬消、なるべく食べ残しはしないといった食行動につながっていくことが期待されます。


参考資料
〔1〕中田哲也「フード・マイレージ−あなたの食が地球を変える」

 (日本評論社, 2007.9)
〔2〕北陸農政局「伝統野菜サミット−伝統野菜が地球を救う−」開催報告書(2009.2)


 これらを含め、詳しくは「関係資料集」をご覧下さい。

フード・マイレージ資料室

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