熊本の伝統野菜を支える若い力

2010年9月25日(土)、熊本市において「ひご野菜セミナリオ秋季特別講座」が開催されました。主催者の「くらし・マイレージ アリアンス」は、野菜ソムリエの資格を持つ主婦の方など女性3人からなる民間の市民団体で、京野菜見学会、ひご野菜料理のフルコースを楽しむ「ビストロプレミアム」等を継続的に開催しており、今回はその一環として呼んで頂いたものです。

私からは、江戸東京野菜を始め、全国各地で伝統野菜の復活・普及の取組が拡がっていることについて紹介させて頂きました(説明資料)。これら取組は、地産地消の典型であるとともに、地域の歴史や風土、食文化とも密接に結びついており、地域活性化や生物多様性の面でも注目されています。

京野菜や加賀野菜、江戸東京野菜に比べると「ひご野菜」の知名度はまだ高くはありませんが、熊本ではアリアンスの皆さんを含め、多くの方々がその普及に取り組んでいます。中でも特筆すべきは熊本農業高校(熊農)の生徒たちです。ちなみにこの高校は、2009年に「地域に根ざした食育コンクール」最優秀賞(農林水産大臣賞)を受賞しています。

講座では、熊農の取組を紹介するDVDが放映されました。最初は、生徒達が農家の方と協力し、水に浸かって「水前寺もやし」を収穫する場面。南国熊本とはいえ12月です。農家の方が、若い人に手伝ってもらって元気が出ると話されていたのが印象的でした。

続いて「ひご野菜セット」販売の様子が紹介されました。これは、学校農場等で生産された正月用の野菜を段ボールに詰め、手書きのカードを添えて生徒自らが販売しするものです。ところが、学校に来るお客さんだけでは売れ残りそうになり、生徒達はリヤカーを引いて振り売りに行くことになります。若い女性の先生からは「全部売るまで帰ってきてはダメ」との厳しい言葉。恥ずかしそうに声を上げながら住宅街を回り、そして、ようやく完売して帰ってきた生徒達と、彼ら彼女たちを迎える先生の笑顔、笑顔。ひご野菜が着実に熊本の地に根付きつつあることが伺えるDVDでした。

熊本では、来年4月の新幹線全線開通に向け、ひご野菜を一つの材料に地域活性化を進めていく構想もあるようです。熊農高生を始め、熊本の皆さんの活躍から目を離せません。