未来の食への希望と不安

  2月24日(木)は金沢からお客様。
  フードライターのつぐまたかこさんは、野菜ソムリエの資格もお持ちで、金沢で加賀野菜等の生産者と消費者の結びつけるための様々な活動をされています。北陸農政局在勤中に色々とお世話になった方で、取材(?)活動で上京された機会に時間を取って頂き、ランチをご一緒させて頂きました。
 会場は、江戸東京野菜を主役としたナチュラルフレンチのミクニマルノウチ。そして、大変ご多忙な中をお時間を割いて頂いて、江戸東京野菜研究会の大竹道茂さんに同席して頂きました。
 2008年、北陸農政局主催の「伝統野菜サミット」の際に、大竹さんにパネリストとして金沢にお越し頂いた時以来の、江戸東京野菜と加賀野菜の両巨頭の再会となりました。
 さて、ミクニマルノウチのお料理は、東京産の食材を中心とした見た目も美しいもので、しかも大竹さんのお話を伺いながらのランチは、生産者の思いも伝わってきて、一層感慨深いものとなりました。
 自給率1%の東京においても、地元の食を見直す動きが確実に広がっています。

  2月27日(日)は、さいたま市のソニックシティにおいて環境ネットワーク埼玉主催「食と環境フォーラム-食べ物から環境を考える」が開催されました。

 前半は、アジア太平洋資料センター理事の佐久間智子先生から、「食をめぐる世界の矛盾~格差と環境の視点から考える」と題して基調講演。世界の食料価格が高騰している現状、しかし途上国の農業生産者の所得は逆に減少している状況、現在の私たちの食生活のありようがグローバルな資源や環境に負荷を与えている状況等について、その背景等を含めて説明がありました。
 そして後半は、そのような食をめぐるグローバルな問題がある中で、自分たちが何ができるかという観点から、地産地消等をテーマとしたパネルディスカッションです。
 秩父横瀬の生産者・八木原章雄さんは、20年近く都市住民との交流活動を受け入れられていますが、中山間の棚田が無くなり山林も荒れつつある状況、それでも伝統種の大豆「借金なし」の生産に取り組んでおられる状況について報告がありました。
 都幾川町で豆腐工房わたなべを経営されている渡邉一美さんからは、地域の生産者との提携の中で原料大豆を全量買い取り、消費者に直売している様子について報告がありました。
 与野フードセンターの橋口一成さんからは、流通の現状における地産地消の難しさと、それでも環境ネットワーク埼玉との連携の下での「BUY LOCAL」キャンペーンの模様について報告がありました。
 小川町の高橋優子さんからは、消費者の立場として、地元の有機農業生産者と連携してのコミュニティ・カフェ等の様々な活動をされている状況について報告がありました。

 地域の農業、食を支えていくためには、生産者、加工事業者、流通事業者、消費者それぞれの連携・ネットワークが不可欠です。この日のパネルディスカッションは、それぞれのお立場の代表として4名の方に登壇頂き、短い時間ながら、本音の意見も述べて頂けたものと、また、参加頂いた会場の皆さんにも、それぞれに受け取って頂けたものと思います。

 夕方、佐久間先生の基調講演を反芻しつつ家路につき、ふと見ると、自宅のすぐ近くのバス停横の畑だったところに重機が入り造成工事が行われています。全市が市街化区域内のH市、相続があったのかも知れません。一日の最後に見た光景には、少し暗澹とした気持ちにならざるを得ませんでした。