世の中を変えて行く人たち-おしどりマコさん・ケンさん

 9月21日(水)の夕方は、帰宅ラッシュの時間を狙い打ちするかのように台風15号が関東を直撃。首都圏の鉄道は次々と運転見合わせに。私が通勤に利用している路線も止まってしまいました。
 終業後に乗り込んだ丸ノ内線は、途中の大手町で20分ほど運転見合わせたものの、何とか後楽園に到着。
 この日、文京シビックホール・小ホールでは、トーク&ライヴ「これから起こる、本当のこと。」が開催されました。
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 到達した時には、既に最初のプログラムナターシャ・グジーさんのミニライブが始まっていました。
 ナターシャさんは6歳の時、チェルノブイリ原発から3.5kmの地点で被爆、最初は何の情報もなく事故の翌日も屋外で遊んでいたそうですが、2日目になって、3日で帰れるから荷物は何もいらないと言われて避難、それから25年が過ぎました。現在は、ウクライナの民族楽器・バンドゥーラの奏者、歌手として活動されているとのこと。
 透明感のある声で数曲を熱唱、特に『防人の詩』の「私の大切な故郷も、みんな逝ってしまいますか」との歌詞には胸を打たれました。
 続いてフォト・ジャーナリストの広河隆一さんによる講演。
 かねてチェルノブイリの取材を続けてこられた広河さんは、今回の震災2日目には福島を訪問、線量計が振り切れるのに驚きながら、情報が不十分な中で地元に残っておられた人たちに避難を呼びかけられたそうです。
 そして、今後の健康被害を避けるため、市民による東京放射能測定センターの設立が必要である旨、訴えられました。この日のイベントの主催者は、このセンター設立準備委員会です。
(カンパ等問合せ先 otoiawase2011 * gmail.com(送信される時は * を@に変更して下さい。))
 さて、この日の私の目当ては、お笑い芸人「おしどり」のお2人でした。
 吉本所属、横山ホットブラザーズの弟子の夫婦音曲漫才、と聞いただけで笑いが出てしまいそうになるのですが、実はこのマコさん・ケンさんのお2人、活動の本拠を東京に移して3カ月目に東日本大震災と原発事故が起こり、何をしていい分からず不安になって、東京電力等の記者会見に出席するようになったそうです。
 特に医学部中退のマコさんは放射能の専門知識もあり、東電や政府に鋭く突っ込む質問を続け、現在は、そのような活動の中で得た情報等を、周りに広めていく活動をされています。
 上杉隆さんのラジオ番組に出演されたのを初めて聞いた時は、どんな人たちかと驚きましたが、実際に舞台でトークされる姿をみて、改めてその凄さに驚きました。
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 凄いと思ったのは、マコさん・ケンさんが、原発や放射能という問題を、市民の感覚で、率直に表現されていたことです。私たちはこれまで、ともすれば難しいことや考えたくないことを、専門家や政治に任せっきりにしてきたのだと思います。そのツケを、今、私たちは払わされているのです。しかもツケの負担は不平等です。
 原発の活動を始められた最初のうちは、会社内でも業界でも浮いていたそうで、広告会社の意向で潰された番組もあったそうです。しかし今は、楽屋で先輩芸人の方たちから原発や放射能の話を聞かせてくれと言われるなど、確実に世の中の空気は変わりつつあるとのことです。
 私たちの多くは、今も原発や放射能のことを、できれば避けて通りたいと思っています。しかし、そうはいかないのです。そのことに気づかせてくれるのは、そして一緒に考えようと分かりやすく教えてくれるのは、政府や専門家やマスコミではなく、市民感覚のマコさん・ケンさんのような人たちなのかもしれません。
 原発問題には、これから長い間、私たちは嫌でも付き合っていかなければいけません。そのことに目覚めさせてくれる「おしどりマコさん・ケンさん」の活動に、エールを送りたいと思います。
 22時近く、イベントが終わって外に出ると雨は上がり、電車も運転再開していました。台風は通過したようです。
 翌朝の出勤時、近所の神社や老舗醤油・ソース屋さん敷地脇の木の枝が折れて路上に倒れていました。自然の力は恐ろしいものです。
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