「野の文化学習会」

 埼玉県秩父の名峰・武甲山の麓、横瀬町宇根という農山村を舞台に「野の文化学習会」が開催されています。
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 さいたま市のNPO法人「生活文化・地域協同研究会」(協同研)が主催し、1年を通じて田植え、草取り、夏合宿、稲刈り、収穫祭・餅つきといった一連の活動に、都会の親子連れ等が参加しています。
 スタートしたのは実に20年前、学校の週5日制導入を契機に、休日のうち1日を「親子が共に自然とふれあい、農の文化から学ぶ」ことを目的に開始されたものです。最初の頃に親に連れられて参加した子どもが、親になり、今度は自分の子どもを連れてくるというように、横瀬町の農家の方たちとの間での交流が連綿と続いています。
 10月16日(日)は、20回目(20年目)の稲刈りが行われました。
 前日の雨模様とは打って変わった好天の秋空の下、受け入れ側のリーダー・八木原章雄さんの田んぼを舞台に、約30名の親子連れが鎌を使って稲を刈り、束にして藁でくくり、はさに架けました。
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 農家の方達の手を借りて稲刈り機を押す体験に、子どもたちは大喜びです。中には作業そっちのけでカタツムリやバッタを捕まえるのに夢中になっている子も。
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 この日の気温は9月上旬並み、心地よい汗をかいた後は近くの交流センターに移動し、お待ちかねの昼食・交流会。地元産の芋や野菜と鹿肉を煮込んだ大鍋が2つ。鹿肉は柔らかくて癖もなく、ほこほこのジャガイモ等と共に、たちまちみんなのお腹に納まりました。
 ちなみに食事の合間、八木原さんから、県からの米の放射能検査に関する通知文(検査前の出荷等は自粛すること、検査の結果検出されなかったことの2通)を見せて頂きました。ここも原発事故の影響は免れません。
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 今、多くの地域で農作業体験活動が行われています。
 農業の現場を知らない都会の子どもたちに、自分の食べものがどこで、どのように、どんな人たちによって作られているかを肌で感じてもらうことは、食育の一環としても非常に意義あるものです。
 この「野の文化学習会」は、歴史の長さだけではなく、単なる農作業体験にとどまらず、1年間を通じて一連の活動に参加することで米作りの全体像を理解でき、地元の方たちとの交流を通じて農村地域の文化(野の文化)に触れることもできる、という特徴があります。
 八木原さんは実は詩人でもあり、これまで何冊かの詩集も出されています。八木原さん始め地域の皆さんの話は、経済的には有利とはいえない農山村地域で生きてこられた方たちならではの、深みに富んでいます。
 「野の文化学習会」は、地元農家や主催者など多くの方達の献身的な努力に支えられてきました。また、毎回、東京農工大の自主農学ゼミ「耕地の会」の学生達も手伝ってくれています。ちなみにこの日も、最後まで残って交流センターの掃除をしてくれたのは、男女2人の学生さんでした。
 実は、その横瀬での「野の文化研究会」、受け入れ側、主催者側双方の様々な事情により、20年を一区切りに終了することになったのです。寂しく複雑な思いを禁じえません。
 しかし、年間を通した学習会は終了しますが、都会の家族たちと横瀬の皆さんとの間の絆は、何らかの形で続いていくことと確信しています。また、協同研は、さいたま市近郊の「見沼たんぼ」でも同様の学習会を開催しており、こちらはこれからも続きます。
 来る12月4日(日)は、今年最後の、そして本当に最後の収穫祭。
 全員で餅つきし、美味しい地元の料理とともに頂く予定です。子どもたち始め参加者からの感想等の発表と意見交換等もあります。多くの方達の思いのこもった交流会になると思います。 
 ご関心を持たれた方は、協同研のホームページをご覧になり直接お問い合わせ下さい。