「未来を創る! 開墾牛を食す会」

 12月14日(水)の夜、神田の「ちよだプラットフォームスクウェア」では、「子牛で開墾プロジェクト」の一環として「未来を創る! 開墾牛を食す会」が開催されました。
 主催したのは「農商工連携サポートセンター」。農商工連携・六次産業化による地域における雇用づくりを総合的にサポートするNPO法人です。
 「子牛で開墾プロジェクト」とは、
① 山梨県勝沼のブドウ農家が耕作放棄地に子牛を放牧、耕作放棄地を解消しブドウ園を復活
② 「子牛で開墾ツアー」で、都市住民等が子牛の世話やワインづくりを体験
③ 草とブドウ(搾りかす等)だけで育てた子牛を、草が無くなる冬の前に食肉として販売
というもので、耕作放棄地解消と地域活性化のモデルとなることを目指しているものとのことです。
 「食す会」は、まず、耕作放棄地を開墾し、この日は美味しいお肉となってくれた仔牛達に黙祷をささげ、「頂きます」の言葉を唱和することでスタートしました。
 ビーフシチュー、ひれ肉とレバーのフライ、ステーキなど豪華なメニューが並びます。
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 途中、現地のプロジェクトの担い手である(有)ぶどうばたけの三森代表から、本プロジェクトの概要について説明がありました。今後、オーナー制度にも取り組んでいかれるとのことです。
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 この日は、ブロックワイン等も出されました。
 もともと日本一のブドウ産地・勝沼では、農家が自家用ワインを醸造していたのが、1940年の酒税法で禁止され、代わりに集落(ブロック)毎に醸造所を決めてワイン製造が許可されたのだそうです。しかし、現存しているのは1社のみで、現在も60年前の醸造設備と伝統的な手法で醸されているとのこと。
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 また、愛媛県の農商工連携プロジェクトマネージャーの方から花の紹介もありました。
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 見かけの農業生産額だけを取り上げ、日本は「世界第5位の農業大国」とする議論があります。
 そもそもGDPに占める1次産業のシェアは、いずれの先進国でも1~2%程度です(もっとも、そのために残りの98%を犠牲にすべきは無い、というような議論が出るのは日本位ですが)。日本のGDPは先進国の中で2位なのですから、名目の農業生産額だけ取り上げれば、確かに世界の5位になっても別に不思議はありません。
 問題は生産額の中身です。
 日本の農業生産額は約8.5兆円ですが、最もウェイトが大きいのは畜産の2.6兆円(続いて野菜2.1兆円、米1.9兆円等)です。ところが、畜産に不可欠な飼料は、その4分の3を輸入に頼っているのです(養分ベース)。その結果、日本の食料自給率は、金額でみると69%ありますが、輸入飼料を勘案したカロリーベースでは39%でしかありません。見かけの生産額で世界第5位などと浮かれていられる状況では、とてもないのです。
 日本の食料自給率を上げようとするならば、飼料の国内生産を増加させることが、最も重要かつ効果的な方法なのです。
 その一方で、日本は世界から大量の食料や飼料を輸入しながら、国内の資源は有効に利用しているとは言えません。日本には40万haの耕作放棄地があるのです。これは埼玉県の面積に匹敵します(いつも引き合いに出される埼玉県にはお気の毒ですが)。
 その耕作放棄地を開墾し、同時に飼料自給率の向上を目指そうというのが、この「開墾牛プロジェクト」なのです。このような「未来を創る」取組が、全国で拡がっていくことが期待されます。
 もっとも当日、同行して頂いた九州から来られた方(農業や畜産にも詳しい方です。)は、「東京だから成り立つイベントだな」とやや醒めておられましたが、逆に大都市・東京だからこそ、食や農に関心を持って頂くことは必要だと思います。
 大変美味しい料理とワイン、ご馳走様でした。そして関係者・事務局の皆さん、仔牛さん達、有難うございました。