北海道産スコーンとフード・マイレージ

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 ここ数日は東京も冷え込み、12日の昼休みに日比谷公園に行ってみると、鶴の噴水には氷柱(つらら)が下がっていました。この映像は夕刊やニュースでも紹介されていました。
 月の出は次第に遅くなり、欠けていっており、いよいよ1月22日の旧暦の大晦日に向けて押し詰まってきていることが感覚として伝わってきます。
 さて先日、木村俊昭さんからメールが届きました。
 自称「地域活性の汗かき人」木村さんは、元小樽市の職員で、内閣府、農林水産省にも在籍され、スーパー公務員としてNHK「プロフェッショナル」に出演されるなど、地域活性化伝道師として活躍しておられます。
 全国を飛び回っておられる木村さんからの情報はいつも有益ですが、今回は、北海道産小麦にこだわっている岩見沢のパン屋さん「モンパリ」についてでした。ウェブサイトを拝見すると、「北海道の大自然の恵みに感謝し」「地域産業である農業を活かし時代にあった価値を創りだし地域に貢献」することが理念とのことです。
 そのパン屋さんが1月17日(火)までの間、有楽町の東京交通会館にある北海道アンテナショップ「どさんこプラザ」で出店されるということで、13日(金)の夕方に行ってみました。
 ここはいつも混雑していますが、その中央に目指すモンパリのコーナー。
 地元産へのこだわり等の丁寧な説明を聞きしつつ、スコーンを3種類(米粉、コーヒー、よもぎ)と、北海道マフィンとよもぎのマフィン(黒豆入り)を求めさせて頂きました。よもぎが健康にもいいとお勧めのようです。
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 翌日の朝食に、早速、米粉とよもぎのスコーンを頂いてみました。
 オープンレンジで温め、2つ割してマーガリンを塗ってみました(北海道のバターがあれば良かったのですが)。食べてみると、外側はさっくり、中はもちもち、特によもぎは色も綺麗で、美味しかったです。
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 美味しいものを食べた満足感に浸りつつ、このスコーンのフード・マイレージ等を計算してみました。
 フード・マイレージとは、食料の輸送量に輸送距離を掛け合わせた指標で、さらにこの数字に一定の係数を乗じることにより、その食料の輸送に伴って排出される二酸化炭素の量を推計することができます。
 表の上半分は、岩見沢市でスコーンを焼く際のフード・マイレージ等です。ここでは必要な小麦の量を仮に120kgとします。
 北海道産小麦を十勝からトラックで運んできたとする(ケース1)と、道路輸送送距離は191km、フード・マイレージはこれに120kgを掛けて約23t・kmとなります。さらにトラックの二酸化炭素排出係数を掛けると、トラック輸送による二酸化炭素排出量は約4kgということになります。
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 それでは、仮にアメリカ産の小麦を使用した場合(ケース2)はどうなるでしょうか。
 一定の仮定の下で計算すると、輸送距離は約18,000km、フード・マイレージは約2200t・km、二酸化炭素排出量は約29kgとなります。ケース1と比べると、輸送距離とフード・マイレージは95倍、二酸化炭素排出量は7倍となります。
 言い換えれば、この岩見沢のパン屋さんが北海道産小麦を使用することにより、仮にアメリカ産輸入小麦を使用した場合と比べて、輸送に伴う二酸化炭素排出量は約7分の1に縮小されているのです。このことから、地産地消は、輸送に伴う二酸化炭素排出量の削減を通じて、地球温暖化の防止にも貢献すると言えます。
 なお、フード・マイレージと比べて倍率が小さいのは、輸入小麦は船で輸送していると仮定しているためです。このように、輸送に伴う二酸化炭素排出量は輸送手段によって大きく異なります。
 次に、有楽町でスコーン(150g)を購入する場合のフード・マイレージ等を試算したのが、表の下半分です。
 岩見沢から有楽町までの輸送距離は約1,100km、フード・マイレージは約0.17t・km、二酸化炭素排出量は約30gとなります。もしアメリカ産のスコーンを買ったとしたら、輸送距離とフード・マイレージは約16倍、輸送に伴う二酸化炭素排出量は2.6倍となります。
 (もし詳しい試算方法等にご関心があれば、こちらをご覧下さい。)
 このように、さらに倍率が小さくなっているのは、トラックによる北海道からの輸送距離が長いためです。輸入品がアメリカ産ではなく、もし輸送距離が短い中国産と比較すると、逆にトラック輸送された国産の方が、船で輸送された輸入品よりも輸送に伴う二酸化炭素排出量が多くなることも予想されます。
 さらには、フード・マイレージから推計できる二酸化炭素排出量は輸送に伴う部分だけであり、生産、加工、廃棄等に係る二酸化炭素排出量は考慮されていません。このようなことを踏まえると、地産地消(あるいは国産)が常に環境に優しいとは、必ずしも言えなくなるのです。
 しかし、当然ながら地産地消のメリットは、輸送に伴う二酸化炭素排出量の削減という面だけではありません。
 現在の日本の「食料問題」の最大のものは、「食と農の間の距離」が離れてしまっていることです。その距離を縮めるきっかけとなるのがフード・マイレージであり、地産地消です。
 ちなみに北海道では、北海等新聞社が中心となって「食べるエコ!キャンペーン」が展開され、ています。
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 食べものの産地を意識することは、何よりも、その食べものがどこで、どのような人によって作られ、どのように運ばれてきているかについて、想像するきっかけになります。
 東京で北海道の食べものを求めることは、北海道の農業に思いを馳せることになり、さらに、その農業が営まれている環境や風土、さらには歴史など文化的なものにも想像は及んでいきます。むろん北海道だけではなく、九州でも福島でも、同じことです。
 世界的な食料需給はひっ迫基調で推移すると見込まれる中、日本の食料と農業は、単なる食料自給率という数字だけではなく、農業の担い手の減少・高齢化や耕作放棄地の増加等の問題も含めて、危機的な状態にあると言わざるを得ません。
 将来の自分たち、あるいは子どもや孫たちの食料を、どのように安定的に供給していくかについて、今、一人ひとりが考えていくことが、求められていると思います。