伝統野菜が結ぶ絆

 1月18日(水)、白んできた中天には半分になった月。
 次第にやせ細る月を見ていると、いよいよ(旧暦の)年の瀬が近いことが感じられます。
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 去る1月15日(日)、小金井市にある家庭料理の店「くりやぶね」では、第3回「あっぱれ野菜!Study & Cafe vol.03〈江戸東京野菜編〉」が開催されました。
 金曜日に申し込もうとしたら既に満席とのことで諦めていたのですが、当日の朝にキャンセル入ったとの電話を頂き、幸運にも参加することができたものです。
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 主催は、小金井市において都市農業の振興や江戸東京野菜の普及のための活動をしているNPO法人「ミュゼダグリ」。フランス語で「農文化の博物館」を意味するそうです。
 前半の Study は、江戸東京・伝統野菜研究会代表の大竹道茂さんから「復活した江戸東京野菜 〜東京長かぶ・金町こかぶ・大蔵大根〜」と題したご講演。
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 大竹さんの講演をお聴きするのは、3年前に北陸農政局「伝統野菜サミット」の際に金沢で来て頂いて以来4回目位になりますが、毎回、新しい発見があります。
 今回は伝統野菜の広域性、普遍性に気付かされました。
 伝統野菜というと、ともすれば狭い地域内の閉ざされた話のような印象がありました。しかし、江戸幕府が開かれて参勤交代の制度が布かれ、広域物流システムが整備される中で、日本各地の優れた野菜の種が江戸に持ち寄られて品種改良され、今度はそれらが各地に持ち帰られて地域の気候風土に合うようにさらに改良され、地域の食文化を育む土台となったというのです。
 例えば庄内や薩摩の古文書にも、練馬大根を持ち帰った旨の記述が残されているそうです。
 江戸時代の日本は、言わば野菜の種を媒介にして一つのまとまりのある国になると同時に、多様性に富んだ地域の文化が形成されていった時期と言えるのではないでしょうか。
 その伝統野菜が結んだ絆は、今も息づいています。
 現在の東京ではほとんど生産されなくなっていた三河島菜は、伊達公に持ち帰られて仙台の伝統野菜・仙台芭蕉菜として現在に至っています。昨年の大震災の前後、その仙台芭蕉菜が東京に里帰りしたというエピソードを、これも大竹さんのブログで知りました。
 また、大竹さんからは、東京都「新しい公共支援事業」のモデル事業として、「江戸東京野菜コンシェルジェ育成事業」が採択された旨のご紹介がありました。
 小金井市とミュゼダグリが連携し、江戸東京野菜の普及促進を図る人材の育成と学校教育等の現場への派遣を通じて、食育や地産地消の普及促進、農業の活性化を目指す事業が開始されるとのことです(問合せはミュゼダグリへ)。
 後半の Café では、酒井文子さん(江戸東京野菜料理研究家・野菜ソムリエ)の解説つきで料理を楽しみました。東京長蕪と金町小蕪の食べ比べ。そして、これらの野菜を用いたワンプレートのお料理とデザート。
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 この日のメニューは、金町小蕪と豆腐のス一プ、東京長蕪と厚揚げのカレー炒め、伝統大蔵大根の風呂吹きアレンジ、東京長蕪の手鞠ご飯(桜の花びらの塩漬け入り)。
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 そしてデザートには東京長蕪と苺の栗焼酎ゼリー。驚きの食感です。
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 いつもながら味も見た目も工夫され、ユニークかつ優しい感じの料理でした。
 この日は、伝統野菜や料理に関心のある女性や年配の方達だけではなく、若い男子学生達も参加されていました。1人は「練馬大根引っこ抜き大会」の常連とのこと。このNPOの取組により、伝統野菜に関心を持つ人達が増えていることに心強く感じられました。
 ちなみに次回の2月12日(日)は、私が前半のお話をさせて頂く予定です。城ノ戸智美さん(野菜ソムリエ)のお菓子とお茶によるカフェもあります。
 食や農の現状等について、フード・マイレージの考え方も紹介しつつ、皆さんと意見交換ができればと考えています。