2012年度日本フードシステム学会大会

 6月16日(土)は雨。この日から2日間、日本フードシステム学会の大会が開催されました。
 会場は神奈川県藤沢市の日本大学生物資源科学部
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 緑あふれる広大なキャンパスです。
 近隣は住宅地ですが緑が豊富に残されており、近くには市営の市民農園もありました。
 キャンパスには謎の動物も生息しているようです(鞍掛純一「同居人」)。
 博物館もあり、昼休みに覗いてみると、動物や鮫(特別展)の剥製と骨格標本、夥しい蝶の標本、稲作の歴史や農具など、なかなか充実した展示でした。雨の日にも関わらず、子どもを連れた多くの家族連れで賑わっていて、ちょっと驚きました。
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 また、1日目の夜の懇親会には、実習農場で収穫した芋を原料とした焼酎「自主創造」も出して頂きました。すっきりとして美味。ちなみに「自主創造」とは日本大学共通の教育理念とのことです。
 さらに昼間のロビーでは、日本大学で加工された食品や野菜の販売も行われていました。
 侮れず日本大学生物資源科学部。農学系の大学や学部が頑張っているのを見るのは嬉しいことです。
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 さて、2012年度日本フードシステム学会大会の方です。
 1日目は「フードシステム研究のニューウエーブ」を共通テーマにしたシンポジウムで、「消費者行動の多様化」「食の安全・信頼」「グローバル化と国際分業」「6次産業化」について報告と討論。
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 雨は上がったものの蒸し暑くなった2日目の午前中は「シニアマーケット開発とフードシステム」についてのミニシンポジウム。研究者だけではなく、事業者の方等も含めて報告と討論が行われました。
 そして2日目午後が個別報告。
 ある意味、多くの学会員にとってはこれが本番です。
 現在進めている研究の概要等を15分で報告し、5分の質疑応答を行うもの。お互いにプロ、あるいはライバル、厳しいコメントも出されます。公表前の最新の情報等も収集できます。
 私の報告は「フードシステムにおける輸送コストに関する考察」。
 これまでもフード・マイレージ指標を用いて食料の輸送の問題に取り組んできましたが、フード・マイレージでは食料の輸送コスト全体を捉えることはできません。そこで「産業連関表」を用いて把握しようと試みたのです。
 現在までの予備的な分析の結果、食料分野(農林水産業及び飲食料品)の輸送コストは全産業の中でも相対的に高く、しかも近年上昇傾向にあること、上昇した輸送コストのほとんどは道路輸送(トラック)であること、特に輸送コストが増加しているのはレトルト食品、そう菜・すし・弁当、清涼飲料等の部門であること、等が明らかになりました(下図参照。鮮明な図を含む報告資料はこちら)。
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 報告にはいくつかのコメントを頂き、報告終了後、会場の外の廊下では何人かの方から名刺と情報交換を求められました。おおむね好意的に受け止められたようです。プロの研究者の方に評価頂いたとしたら嬉しいことです。
 「食の外部化」や「中食」等の消費の増加は、消費者ニーズに対応したものです。しかし、私たちが食の面で便利さや快適さを求めてきたことが、日本のフードシステム全体を非効率なものにしている可能性があるのです。その輸送を支えているのは供給不安のある化石燃料等のエネルギーであり、二酸化炭素排出量の増加にもつながります。
 仮に社会的なコストが増大しているとすれば、「食の外部化」は見直されるべきとの結論になるかもしれません。
 当面の研究テーマが決まりました。もっとも、構想倒れに終わるかもしれませんが。
 実りある大会でした。片道2時間半をかけて2日間通った甲斐がありました。

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“2012年度日本フードシステム学会大会” への1件の返信

  1. まとめtyaiました【2012年度日本フードシステム学会大会】

     6月16日(土)は雨。この日から2日間、日本フードシステム学会の大会が開催されました。 会場は神奈川県藤沢市の日本大学生物資源科学部。 緑あふれる広大なキャンパスです。 

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