江戸コン・第2期がスタートしています。

121019_convert_20121021002845.png 10月19日(金)付けの日本経済新聞文化面(最終面)には、岡山大学資源植物科学研究所の山下純先生という方の「雑草の種 未来育む芽に」とのタイトルの記事。
 大正3(1914)に民間により設立され、後に岡山大学に移管された同研究所は、5500種、3万点を超える野生植物の種子を収集・保管しているそうです。
 土地固有の遺伝子を受け継いだ種子を残し、未来に引き継いでいくことの重要性が主張されています。種(たね)は、生態系の資源そのものです。
 実は岡山大学は私の母校なのですが、このような研究所があるとは知りませんでした。
 さて、翌20日(土)は、前日までの雨模様とは打って変わり、気持ちのいい秋晴れです。
 久しぶりに小金井市に向かいました。
 小金井市には「はけ」と呼ばれる崖(国分寺崖線)が東西に横切っており、そこからの湧水が現在も豊かです。小金井の地名は「黄金のような豊かな水が湧く」ことに由来しているそうです。
 駅近く、商店街の「六地蔵」敷地内には深井戸「黄金の水」があり、市民に開放されています。
 商店街が町おこしの一環として掘ったもので、管理費を払って専用蛇口の水栓を受け取れば、いくらでも自由に水を汲めるシステムとのこと。
 料理にも合う口当たりのいい水質だそうで、この日もペットボトルを持った人たちが列を作っていました。ちなみにコップ程度の試飲は無料でできます。
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 さらに、歩いてすぐの小金井市公民館へ。
 この日、江戸東京野菜コンシェルジュ育成講座・第2期の2回目の講座が開催されました。
 私も来月一コマ担当することになっているので、雰囲気を知りたく、傍聴させて頂きました。
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IMG_4672_convert_20121021093328.jpg 会議室の外のバルコニーには、柿や大根が植えられています。
 南の方、「はけ」の向こう側は一段低くなっており、眺望が広がっています。
 「江戸東京野菜コンシェルジュ育成講座」は、江戸東京野菜に関する知識やおいしい食べ方などを身につけ、食育活動や農業振興に一役買う案内人(江戸東京野菜コンシェルジュ)を育成することを目的としています。
 主催は、市、JA、学生団体、NPO法人等から構成されている協議会で、「東京都新しい公共支援事業」の助成を受け、今年度、1期に続いて2期講座がスタートしています。定員30名に対して倍以上の応募があったとのことで、厳しい抽選をくぐり抜けた受講生の方たちが集まっておられました。
 NPO法人ミュゼダグリの納所二郎さんの司会で開会。
 主催者代表でもあり、先週の第1回講座を担当された大竹道茂さん(江戸東京・伝統野菜研究会)から、挨拶を兼ねて、前回の講座後に寄せられた質問に対する説明がありました。
 なかなか熱心な質問が多く寄せられていた様子です。
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 この日の2回目の講座の前半は「食材としての江戸東京野菜」。
 講師は酒井文子(あやこ)先生です。江戸東京野菜料理研究家として、様々な活動をされています。
 江戸東京野菜の生産者を回られるだけではなく、自分でも栽培され、料理教室や小学校での食育活動を通じて江戸東京野菜の普及に努められている酒井先生の話は、表面的なことには留まらない内容の濃いものでした。
 酒井先生によると、江戸東京野菜の魅力は「古くて新しい野菜・新しくて古い野菜」。
 年配の人には昔の懐かしい味であり、若い世代にとっては今まで知らなかった新鮮な美味しさ。また、自家採種できる伝統野菜は、主流となっている交雑種(F1)とは違って命がつながる野菜であり、食育の素材としても優れているとのこと。
 また、自分で栽培して分かった生産することの難しさ。
 だからこそ愛着がわき、料理するモチベーションが上がるとのこと。生産者から話を聞き、自分が感動した思いを伝える、生産者の思いを代弁するつもりで料理をされているそうです。
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 実物の野菜を持ち込んで説明される酒井先生。
 この日は特に、普段はあまり料理の主役にはならない「つまもの」についても詳しく説明して下さいました。
 紫芽(むらめ)、浅月、つる菜、つくばねなど。足立区等で盛んに栽培されているそうですが、細かい熟練の作業が必要だそうです。
 紫芽(むらめ)とは、赤紫蘇の双葉の芽。地面にかがんで一つずつハサミで刈り取り、箱詰めするのは大変な手間だそうです。
 「つくばね」とは小蕪のごく小さなもので、名前は羽根突きの「突く羽」からきているとのこと。確かに小さいです。羽根のように、蕪と葉のバランスよく栽培するのが難しいそうです。
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 試食もありました。
 一般的に流通している青首大根と、伝統品種である亀戸大根との食べ比べでは、最初に青首大根を口にすると、かじってみると、食べ慣れたみずみずしさで美味。ところが次に亀戸大根をかじってみると、味の濃さ、辛みの強さが際立ち、青首の水っぽさと大違いです。
 つるなは生で食べると、肉厚の葉が独特の食感と少し苦い風味。さっと茹でて醤油で味付けしたものは、甘く感じられます。どちらが美味しいかは、参加者の間で意見が分かれましたが、いずれにしても、伝統野菜の味は個性的で、自己主張をしています。
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 講座の後半は、地域の学生グループ「いがねこ」の活動報告。
iganeko.png 小金井市にはいくつかの大学があり、食を通してまちづくりをしようと学生たちがグループを作って活動しています。
 小金井をひっくり返すような活動をしたいと、付けた名前が「井金小(いがねこ)」。
 行政やNPO、生産者と連携し、江戸東京野菜逸品料理コンテストとレシピ集の発行、伝統小松菜を練り込んだラーメンやスイーツの開発等に取り組んできています。
 説明してくれた勅使河原直人さん(東京農工大大学院)は、最後に、今後は野菜の素晴らしさを子どもたちに伝えるための理科実験教室を開催したいという計画を話してくれました。
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 その後は、約30名の受講者から一人ずつ自己紹介。
 生産者、新規就農に向けて研修中の方、小学校の栄養教諭、図書館の司書、大学職員、大学生、レストラン経営者、小説家、IT関連企業、広告会社、生協、料理研究家、野菜ソムリエ、料理の好きな主婦の方など、多彩な方たちです。
 お住まいは小金井市始め多摩地区の方が多いようですが、神奈川県や都区内の方もいらっしゃいます。
 いずれの方も、食べものや農業に強い関心をお持ちであることが、一人1分程度のスピーチからも強く伺えました。
 冒頭に紹介した水を始め、農業、教育機関など豊かな資源に恵まれた小金井市。しかし、最も重要な資源は「人材」です。小金井市が卓越しているのは、「人材」という資源に恵まれていることです。
edocon.png 行政、JA、生産者、NPO、学生グループなど、心ある様々な人たちが熱意を持って協働して、「江戸東京野菜によるまちづくり」に取り組んでこられました。そして今、さらに広く人材を育成するための講座をスタートさせたのです。
 酒井先生が話の最後で、今後、江戸東京野菜を「まもり」「はぐくみ」「つなげる」ためには、ネットワークを作り、情報交換しつつ、さらに広めていくことが重要性であると強調されていました。
 正にこの講座自体が、ネットワーク作りの重要なきっかけとなることは間違いありません。
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