雑木林(ぞうきりん)の里のネットワーク

 12月2日(日)は青空。
 風は少々冷たいものの、前日の山梨県上野原市・西原(さいはら)に比べると暖かく感じられます。
 埼玉県南部に位置する新座(にいざ)市は人口約16万、都心への交通の便も良く、ベッドタウンとして、また、工場や物流の拠点として発展している地域です。
 同時に、農地や平地林も多く残されているなど、環境にも恵まれた地です。
 新座駅東口に降りて南東方向に進み、国道254線の跨線橋を渡ると、野火止(のびどめ)用水に沿った緑道に出ます。
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 野火止用水は、17世紀半ば、幕府老中で川越藩主でもあった松平信綱が開削したもので、一帯の農業生産力の向上に大きく貢献しました。
 今も清らかな水が流れ、水面には鮮やかな紅葉や柿の橙色を映しています。
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 歩く内に、左側はうっそうとした雑木林になります。多くの樹は葉を落としているため、緑道からもその広さが伺うことができます。
 ここが、臨済宗妙心寺派の名刹・平林寺の境内林です。紅葉の名所としてもつとに有名で、国の天然記念物に指定されているそうです。
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 さらに5分ほど進むと、右側に蛍の飼育施設が見えてきて、それに隣接して新座市の西分集会所があります。集会所の前は、新座の特産・人参の畑です。
 ここで年に2回ほど、「わいがや勉強・交流会」という集いが開催されています。
 地域で環境活動等に取り組んでおられる方達が集まり、前半は話題となっている事柄に詳しい有識者を招いての講演会、後半は、講師とともに地元の食材をふんだんに使った手づくりの料理で交流するという、ためになって美味しいイベントです。
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 主催は「環境教育支援ネットワーク・きづき」という市民団体。代表は、埼玉県の環境アドバイザーや動物愛護推進員等も務めておられるOさんです。
 豊かな雑木林や農地に恵まれている新座市においては、地域の様々な関係者のネットワークの下で、幅広い環境教育等の活動が展開されています。
 例えば、小学生等を対象とした「夏休み子どもエコ学び隊~『食』を学ぼう!地産地消」という講座、簡易環境計測ソフトを用いたエネルギーの「見える化」を体験する環境出前講座の実施、子ども会や町内会と連携しての道路や街並みの美化活動、マルチパック(缶ビール等の容器を束ねている紙)やアルミ付き紙パックの回収とリサイクルの推進等が取り組まれています。
 ネットワークの中には、新座市に立地する3つの大学(跡見学園女子大、十文字学園女子大、立教大)も加わっており、学生達が環境教育等に実際に参画しています。これから社会に出る学生さん達の意識を高める上でも、非常に効果的と思われます。
 私は、環境ネットワーク埼玉の関連行事を通じてO代表の面識を頂き、この「わいがや学習・交流会」にも、お誘いを受けて過去何度か参加してきました。
 毎回、大学教授や政府の審議会の委員など、権威ある専門家を招いて開催されており、今回も楽しみにしていたところ、図らずも私に声をかけて頂き、浅学非才の身を顧みず、折角の機会と有り難くお受けした次第です。
 今回も、集会所の畳敷きの広間に座布団が敷きつめられ、次第に参加者の方が集まってこられて満員です。隣接する板の間との仕切りも外し、後方に椅子席も設けられました。
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 Oさんの司会により開会。
 私からは、「私たちの食と農を考える -フード・マイレージからみえてくるもの-」と題して、日本人の食生活の変化、食料自給率の低下と「食料自給率は大嘘論」への反論、フード・マイレージの概念とケーススタディ、食をめぐる世界の潮流と今後の食のあり方等について、個人の立場で勝手な話をさせて頂きました。【説明資料
 予定の12時を10分ほど超過し、全員での質疑応答の時間も取れませんでした。外しまくったギャグともども、まだまだ未熟であることを痛感した次第です。
 その後は、地元のお母さん達の心づくしの手料理を頂きながらの交流会です。学生さん達もてきぱきと手伝ってくれます。食材は、なるべく地元産にこだわって調達されたとのことです。
 
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 何名かの熱心な方と話ができました。新座を始め、様々な地域で色々な活動をされている方達から、色々な取組の様子等について話を伺うことができました。
 また、学生さんや年配の方など、わざわざ質問に来られた方もおられました。手元の配付資料をみると、びっしりと書き込みがされています。細かい数字等も聞かれ、この日の参加者の皆さんの意識の高さが伺え、嬉しく思いました。
 美味しい料理と昼間からのビールでいい気持ちになり、15時過ぎに失礼させて頂きました。
 駅に戻る途中、「ふるさと新座館」という目新しい建物が立ち寄ってみました。
 11月に開館したばかりだそうで、公民館、ホール、観光案内所等とともに、農産物直売センターも設けられています。壁には生産者の顔写真があり、多くの買い物客で賑わっていました。
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 そして、ホールの中央には「ぞうきりん」の大きな人形も。
 ゾウのような体にキリンに似た模様、インパクトある新座市のゆるキャラです。
 「雑木林とせせらぎのあるまち新座」の雑木林を“ゾウキリン”と読み間違えてやってきて、その居心地の良さにそのまま住みついてしまったのだそうです。
 
 頂いた新座市の方の名刺にも、色々なバージョンの「ぞうきりん」が印刷されており、地元で愛されていることが伺えました。
 ぞうきりん(雑木林)の里で、地域に根付いたネットワークの活動が拡がっています。
【ご参考】
 ◆ ウェブサイト:フード・マイレージ資料室
 ◆ メルマガ :【F. M. Letter】フード・マイレージ資料室 通信
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