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◇◆◇ F. M. Letter −フード・マイレージ資料室 通信− ◇◆◇
No.6 ; 2012.12/5(旧暦 神無月二十二日)発行
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いよいよ師走に入りました。
このメルマガでは、フード・マイレージや伝統野菜等について様々な
情報を発信しつつ、食と農の未来について、ともに考えていきたいと思
っています。
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◆ F.M.豆知識
1 輸入食料のフード・マイレージの「試算」 (6)品目構成等
フード・マイレージを始めとする食や農に関わる話題について、毎
回少しずつ取り上げていきます。
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前回は輸入食料のフード・マイレージ試算の結果、韓国、アメリカと
比べ突出する結果となったこと等を紹介しました。
次に、なぜ、日本の輸入食料のフード・マイレージがこれほど大きい
のか、その要因を探るために品目別の構成をみることとしました。
日本の輸入食料のフード・マイレージを品目別にみると、穀物(小麦、
とうもろこし等)が55 %、油糧種子(大豆、菜種等)が22 %と、これ
らで全体の8割近くを占めています。
これらの品目が比較的かさばることに加え、輸入入相手国がアメリカ、
カナダ、豪州といった遠隔地であるためです。
ちなみに穀物の内訳をみると、食用の小麦等よりも家畜のえさ(飼料)
用のとうもろこし等の方が多くなっています。
日本人の食生活は、この半世紀の間に大きく変化しました。すなわち、
米の消費量が半減する一方、畜産物や油脂の消費が何倍にも増加したの
です。その結果、家畜の飼料や油脂の原料は海外からの輸入に依存する
こととなり、大量のとうもろこし、大豆・菜種等を輸入するようになり
ました。
その結果、食料自給率が大きく低下することとなり、同時に、日本の
輸入食料のフード・マイレージも突出して大きなものとなっているので
す。これらの背景には、私たちの食生活の大きな変化があるのです。
次に、輸入相手国別の構成をみました。
すると、アメリカが66%と大きな割合を占めており、カナダ、オー
ストラリアと合わせた3カ国で全体の9割近くを占めていることが分か
りました。
以上のように、日本の輸入食料のフード・マイレージは、特定の品
目や輸入相手国に偏っていることが明らかとなったのです。
これらの結果は外部にも公表され、まとまったペーパーとしては「農
林水産政策研究所レビュー」No.2(2001年12月)に掲載されました。
フード・マイレージという言葉が目新しかったこともあって、それな
りにマスコミ等からも注目され、「5千億トン・キロメートル」という数
字も含めて、いくつかの新聞等で報道されました。
なお、この試算は相当に簡略化した手法によっていたことから、その
後、もう少し精緻な方法で計算し直すこととしました。
その成果は、後に「食料の総輸入量・距離(フード・マイレージ)と
その環境に及ぼす負荷に関する考察」『農林水産政策研究 第5号(2003
年12月)』として公表されました。ここでは、海上輸送距離を用いるこ
と等によって日本の輸入食料のフード・マイレージは約9千億トン・キ
ロメートルという数字となったのですが、最初の印象が強かったせいか、
しばらくの間、ネット上等でも5千億と9千億の2種類の数字が併存す
ることとなり、混乱を招いてしまいました。
(参考)
「フード・マイレージ」の試算について[農林水産政策研究所レビュー
No.2, 2001]
http://www.maff.go.jp/primaff/koho/seika/review/pdf/primaffreview2001-2-7.pdf
「食料の総輸入量・距離(フード・マイレージ)とその環境に及ぼす負
荷に関する考察」[農林水産政策研究 No.5, 2003]
http://www.maff.go.jp/primaff/koho/seika/seisaku/pdf/seisakukenkyu2003-5-2.pdf
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◆ オーシャン・カレント −潮目を変える−
食や農の閉塞状況を打ち破るためのユニークな活動や、それに取り
組んでおられる方達を紹介するコーナーです。
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今回は、最近観て深く感銘した映画を紹介します。
そのタイトルは「よみがえりのレシピ」です。
山形県庄内地方を舞台に、在来作物や伝統野菜を守り、さらに新しい
可能性を探っている生産者の皆さん、大学の研究者、レストランのシェ
フ等を中心にした人々のドキュメンタリーです。
冒頭から、映像の美しさに引き込まれます。
庄内地方の田園風景。山と森。焼き畑の場面では顔が熱く感じられる
ほどの迫力です。
作物一つ一つが接写され、例えば「だだちゃ豆」は、棘の一本一本ま
で、緑色のみずみずしい緑色が印象的です。
そして、在来作物を守ってきた高齢の生産者の方たちの表情と言葉。
食卓で、これまで食べてきたものについて語る場面、傾斜のある畑で
永年作り守ってきた作物について語る場面など。時おり笑顔になると、
顔のしわが、さらに深く刻まれます。
映画に登場するのは高齢の方ばかりではありません。
会社勤めを辞めて戻ってきた若い後継者の方、小学校で子ども達が伝
統野菜を育て、賑やかに試食する場面も出てきます。
「語り部」的に登場されるのは、在来作物の重要性に早くから着目し
活動されてきた山形大学農学部の江頭宏昌先生。
そして、素材の個性的な美味しさを引き立てるイタリアレストラン
「アル・ケッチャーノ」の奥田政行シェフ。本当に美味しそうな独創的
な料理の数々と、食べる人たちの幸せそうな笑顔。
伝統を守り続ける生産者と心ある消費者が、結びつき、拡がっていく
ネットワークの様子を、若い渡辺智史監督によって、丁寧に、寄り添う
ように描かれています。
現在は渋谷のほか、各地で自主上映会も開催されています。
ぜひ、一人でも多くの方に観て頂きたい映画です。
(公式サイト)http://y-recipe.net/
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◆ 情報ひろば
食や農に関わるセミナーや勉強会の情報、拙ウェブサイトやブログ
の更新情報、読者の方からの投稿(告知等)をお知らせします。
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▼ ウェブサイト「フード・マイレージ資料室」更新情報
・「わいがや勉強&交流会」(12月 2日(日)、埼玉県新座市)での説
明資料を掲載しました。
http://food-mileage.jp/wp-content/uploads/121202_waigaya.pdf
▼ ブログ「伏臥慢録〜フード・マイレージ資料室から〜」更新情報
・11月30日付け
「本当の価値」とは−有機野菜生産者・久松達央氏
茨城県土浦市の久松さんにとっての有機野菜とは、「安全な」野菜
ではなく「美味しい」野菜。全量が消費者、飲食店への直販です。
さらに、「本当の価値は機能性の外にあるのではないか」と。
http://food-mileage.jp/2012/11/30/
・12月2日付け 山の中のイルミネーション
山梨県上野原市での「しごと塾さいはら2012」第5弾は、地大豆の
脱穀と冬伏せの作業。そして、山の中に心温まる手づくりのイルミネ
ーションが点灯されました。
http://food-mileage.jp/2012/12/02/
▼ 管理者が参加予定または関心のあるイベント等について、勝手に紹
介しています。
○ 「地域にひろげる有機農業全国交流集会」
日時:12月7日(金)〜8日(土)
場所:国立女性教育会館(埼玉県嵐山町)、小川町(ツアー)
主催:NPO法人全国有機農業推進協議会
(詳細、お問合せ等)http://www.zenyukyo.or.jp/info/244.html
○ 第13回「日本有機農業学会(東京)」大会・総会
日時:12月8日(土)〜9日(日)
場所:東京農工大学大学農学部(府中市)
主催:日本有機農業学会
(詳細、お問合せ等)http://www.yuki-gakkai.com/
○「蒟蒻作って!料理作って!畑で汗かいて!乾杯!」
(greensmile冬in檜原村〜檜原村のこんにゃく作り体験〜)
日時:12月15日(土)9:20〜17:00
場所:檜原村(9:20 JR武蔵五日市駅集合)
主催:グリーンスマイル
(詳細、お問合せ等↓)
http://www.facebook.com/#!/events/298518156925239/
○ 国際有機農業映画祭2012
「こんな世の中、ひっくり返さなあきまへん」
日時:12月16日(日)10:00〜20:30
場所:法政大学市ケ谷キャンパス
共催:国際有機農業映画祭運営委員会、
法政大学サステイナビリティ研究教育機構
(詳細、お問合せ等)http://blog.yuki-eiga.com/
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F. M. Letter −フード・マイレージ資料室 通信−【ID;0001579997】
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◆ 発行者:中田哲也(フード・マイレージ資料室 管理者)