F. M. Letter -フード・マイレージ資料室 通信- No.009

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 ◇◆◇ F. M. Letter −フード・マイレージ資料室 通信− ◇◆◇

          No.9 ; 2012.12/26発行

    (旧暦 霜月十四日、第六十五候・大鹿、角を落とす)

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 今年最後の配信となります。読んで下さって有り難うございました。

 来年も、試行錯誤しつつ、食と農の未来について共に考えていきたい

と思いますので、よろしくお願いします。

 どうぞ皆様、よい新年をお迎え下さい。

 


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  F.M.豆知識

   2 食をめぐる世界と日本の動き (2)日本人は食生活に満足?

 

  フード・マイレージを始めとする食や農に関わる話題について、毎

 回少しずつ取り上げていきます。

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 前回は、最近、世界においてはスローフード運動やCSA(地域支援農

業)など「食」をめぐる新しい動き(いわば「食を通じた世直し運動」)

が盛り上がっているにも拘わらず、日本国内では、必ずしも大きなうね

りとはなっていないことを紹介しました。

 それは、どのような理由によるのでしょうか。

 

 内閣府「国民生活に関する世論調査」(20126月調査)によると、

現在の生活について、全体として「満足」しているとする者の割合が67

%、「不満」とする者の割合が32%となっているのに対し、食生活に関

しては「満足」が87%、「不満」が13%と満足とする者の割合が高く

なっています。

 つまり、食生活については所得や貯蓄に比べて相対的に満足度が高い

のですが、このことは、逆に食に対する問題意識が乏しいというマイナ

ス面を示しているものと、私には思われるのです。

 

 日本では、本当に豊かな食生活が実現しているのでしょうか。

 2012223日付けの日本経済新聞社会面に、衝撃的な2件の記事が掲

載されました。

 その1つのタイトルは「餓死? さいたま3遺体」。さいたま市のアパ

ートで、住人親子と見られる男女3人が死亡(60代夫婦と30代息子)して

いるのが発見されましたが、痩せ細ってほぼミイラ化しており、餓死し

た可能性が高いとの内容です。

 もう1件は「4歳障害児、衰弱死か」。東京都立川市のマンションで遺

体で発見された母子は、無職の母親が病気で急死した後に知的障害のあ

4歳の男児が衰弱死した可能性があるとの内容です。ちなみに、男児

の体重は10kg以下だったそうです。

 

 これら事件の背景には、福祉や社会保障、生活保護等の複雑な問題が

あるとはいえ、時に「飽食」とさえ呼ばれる豊かで便利な食生活を謳歌

しているはずの現代日本において、飢えて命を落とす人がいるという現

実は、私たちの食は、決して豊かではないことを象徴しているものと言

えないでしょうか。

 

 さらには、現在の私たちの食生活は、その6割を輸入に依存し、大量

生産、大量流通、大量消費、大量廃棄により、環境にも大きな負荷を与

えています。

 同時に、国内においては担い手の減少・高齢化、耕作放棄地の増加な

ど農業生産基盤のぜい弱化と、「限界集落」という言葉に象徴されるよ

うな地域コミュニティの崩壊が進んでいるのです。

 

 私たちは、まず現在の見せかけの「食」の豊かさに疑問を感じ、問題

意識と危機感を共有することからスタートする必要があるのではないで

しょうか。

 

 このような中、最近、日本では伝統野菜等を復活・普及させようとい

う取組が盛んになっています。これらは、地域に根ざした日本独自の

「スローフード運動」に相当するものと考えています。

 その内容や意味については、新年の次号以降、紹介していきたいと思

います。

 

参考 内閣府「国民生活に関する世論調査」(20126月調査)

  http://www8.cao.go.jp/survey/h24/h24-life/index.html

 

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  オーシャン・カレント −潮目を変える−

 

 食や農の閉塞感を打ち破るためのユニークな活動や、それに取り組

んでおられる方達を紹介するコーナーです。

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 今年最後の本コーナーでは、僭越ながら、江戸東京野菜の仕掛け人・

大竹道茂さんを紹介させて頂きます。

 

 大竹さんは1944年東京生まれ。東京農業大学卒業後、JA東京中央会

に入られ、参事、JA東京信連・代表理事専務、()東京都農林水産振興

財団・食育アドバイザー等を歴任されました。

 現在も、NPOミュゼダクリの理事など、多くの役職をこなしておられ

る大竹さんは、JA東京中央会在職中から、当時はそれほど知名度が高く

はなかった「江戸東京野菜」の復活・普及の活動に、精力的に取り組ま

れてきました。

 

 大竹さんに初めてお会いしたのは、2008年の暮れ、ちょうど今頃の時

期でした。

 当時、私は「加賀野菜」の地元である金沢の北陸農政局に勤めており、

2月、「伝統野菜サミット」というイベントを企画していたのです。

サミットとは大げさですが、全国から(北は山形から南は熊本まで)伝

統野菜の復活・普及に取り組んでおられる8名の方に来て頂き、パネル

ディスカッションと意見交換を行うこととしていました。

 

 江戸東京野菜関係については、ブログ等を拝見していて大竹道茂さん

という方しかいないと思い、面識もないのに、不躾に電話とメールで金

沢での講演とパネルディスカッションへの参加をお願いしたところ、快

くお受け下さったのです。

 

 そして年末年始の休暇で東京に帰省した際、暮れのお忙しい時期にも

拘わらず、小金井のJAの会議室に生産者や農業団体、行政関係の方を集

めて頂いて打合せすることができ、さらにはご自身の自動車でほ場や直

売所を案内して頂いて、最後は自宅まで送って下さったのです。

 

 この時に、大竹さんの飾らないお人柄と、江戸東京野菜に対する熱い

思いに、すっかり心酔してしまったのでした。

 

 そして200923日(火)、この冬の金沢は雪が少なく、珍しく青空

までのぞくような日に、伝統野菜サミットが開催されました。大竹さん

は、多くのお仲間を連れて金沢まで来て下さいました。

 他の地域からの参加された皆さんも大竹さんの人柄に魅せられ、その

後のネットワーク作りに発展したことは、嬉しいことでした。

 

 転勤で東京に戻ってからも、本年の「江戸東京野菜コンシェルジュ育

成講座」等を通じ、大竹さんや、仲間の皆さんとの交流は続いています。

色々と教わることばかりです。

 

 食料自給率1%、国内で最も農業から遠いと思われている大都会・東京

において、大竹さんを中心にした江戸東京野菜のネットワークが、どん

どん拡大しています。

 

 来年に向けて、ますますのネットワークの発展と、大竹道茂さんのご

活躍を期待しています。

 

(関連サイト)

 「江戸東京野菜通信」

  http://edoyasai.sblo.jp/

 「江戸東京野菜ネット(フードボイス)」

  http://fv1.jp/chomei_blog/?author=5

 

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  情報ひろば

 

  食や農に関わるセミナーや勉強会の情報、拙ウェブサイトやブログ

 の更新情報、読者の方からの投稿(告知等)をお知らせします。

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 ウェブサイト「フード・マイレージ資料室」更新情報

・「共奏キッチン」(1219日)における説明資料を掲載しました。

  http://food-mileage.jp/wp-content/uploads/121219_kyoso.pdf

 

 ブログ「伏臥慢録〜フード・マイレージ資料室から〜」更新情報

1222日付け たまTSUKI、三富、循環型社会

 

 史上最低の投票率という残念な結果に終わった総選挙の翌々日、池袋

にあるオーガニック・バー「たまにはTSUKIでも眺めましょ」を訪れま

した。高坂勝(こうさか・まさる)オーナーの弾き語りも。

 また、埼玉県「三富(さんとめ)」地域の落ち葉野菜セットが届きま

した。雑木林の落ち葉を活用した循環型農業が営まれています。

  http://food-mileage.jp/2012/12/22/

 

1223日付け 今年最後の「共奏キッチン

 

 みんなで料理を作って食べて話し合いましょうという誰でも参加でき

る「共奏キッチン」、今年最後の開催でした。美味しい料理と楽しい会

話・情報交換、この場で、今年は多くの方との出会いがありました。

 来年に向けて、ますますの発展が期待されます。

  http://food-mileage.jp/2012/12/23/

 

 管理者が参加予定または関心のあるイベント等を紹介します。

  新年から興味深いイベント等が目白押しです。

 

 食育祭 in させぼ、させぼ食育フェア

 日時:112日(土)13:00 16:00

 場所:アルカスSASEBO(長崎県佐世保市)

 内容:講演(医療法人照甦会・田中佳先医師)、幼稚園等での食育活

   動の展示、「元気野菜」食べ比べ、生産者との交流・販売会等

 主催:NPO法人大地といのちの会

 (詳細、お問合せ等112日の箇所をご覧下さい。)

  http://yoshi3yasai.web.fc2.com/yotei.html

 

 【燻製作っちゃぉ!】イベント!

 日時:119日(土)12:3018:00

 場所:品川区北品川2-8-11

 主催:グリーンスマイル

  (詳細、お問合せ等

  http://www.facebook.com/#!/events/188168307974663/

 

 あっぱれ野菜! STUDY & CAF_  vol.10〈江戸東京野菜編〉下

  −下山千歳白菜&汐入大根−

 日時:120日(日)11:0013:30

 場所:くりやぶね(小金井市本町)

 スタディ講師:大竹道茂さん(江戸東京・伝統野菜研究会代表)

 カフェ料理&解説:酒井文子さん

       (江戸東京野菜料理研究家・野菜ソムリエ)

 主催:NPO法人ミュゼダグリ

  (詳細、お問合せ等

  http://web2.nazca.co.jp/11210409/S%26C130120.pdf

 

 第3回「農」と里山シンポジウム−三富(さんとめ)を未来に−

 日時:120日(日)13:1016:10

 場所:川越南文化会館(川越市今福)

 主催:三富シンポジウム実行委員会

  (詳細、お問合せ等

  http://www.santome.jp/kaihou1/24YearKaihou/Symposium/Symposium.html

 

 第4回アドボカシーカフェ

  「原発事故 子ども・被災者支援に必要な施策を考える」

 日時:121() 18:3021:00

 場所:四谷地域センター(新宿区内藤町)

 主催:ソーシャル・ジャスティス基金

  (詳細、お問合せ等

  http://socialjustice.jp/p/20130121/

 

 映画だんらんにっぽん自主映画会&交流会

 日時:126日(土)15:00〜鑑賞・監督対談、18:00〜交流会

 場所:神田なみへい(中央区日本橋本石町)

 主催:佐野孝裕氏

  (詳細、お問合せ等

  http://www.namihei5963.com/namihei-board/detail.cgi?sheet=hp31&no=1201

 

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 F. M. Letter −フード・マイレージ資料室 通信−【ID;0001579997】 

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  発行者:中田哲也(フード・マイレージ資料室 管理者)