「バレンタイン一揆」

130203_convert_20130206003038.png 2月に入って3日(日)は節分、4日(月)は立春と、日射しのある暖かい日が続きました。
 もっとも、6日(水)は東京地方はまたも降雪に見舞われ、春の足音はまだ大きくは聞こえてきません。
 さて、「バレンタイン一揆」という映画を御存じでしょうか。
 製作は、児童労働の撤廃と予防に取り組むNPO法人「ACE(エース)」
 1997年、当時の学生5人により設立された国際協力NGOで、これまでインドとガーナでの現地プロジェクト、国内での啓発や提言活動等を行ってきましたが、設立15周年を記念し、より多くの人に児童労働のことを知ってもらうために製作したのが、この映画なのです。
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 2013年2月5日(火)の夜、知人に紹介されて、JR蒲田駅近くの大田区立消費者生活センターで開催された上映会に参加してきました。
 19時の開演ぎりぎりに到着、約20名の方が集まっておられ、すぐに上映が始まりました。
 チョコレートの原料であるカカオ豆を、どこで誰が作っているかを知るため、日本の「普通の女の子」(女子高校生・大学生)3人がアフリカ・ガーナの空港に下り立ちます。
 長旅の後も元気いっぱい、見るもの全てが珍しく「きゃぴきゃぴ」(古いですかね。)のノリです。
130206_1_convert_20130207014402.png まず、現地の支援団体の事務所を訪ねコーディネータの方から説明を受けます。
 カカオ農園で働かされている児童の多くが人身売買で連れて来られている等の現状に、しばし絶句する3人。
 その後、舗装されていない赤土の道を10時間も車に揺られ、カカオ農園に向かいます。
 到着したのは、ACEと現地団体によるプロジェクトの対象地区。ここで、9歳の頃から児童労働を強いられていた16歳の少年から、直接、経験談を聞きます。
 その後、3人は農園に行ってカカオを木から収穫し、カゴに入れて頭に乗せて運び(何と20kgもあるそうです)、ナタで割って果肉を取り出す、という一連の作業を体験します。
 果肉は椰子の葉で包んで1週間ほど自然乾燥させた後、種を取り出し、集落に運んでさらに天日乾燥させてチョコレートの原料であるカカオ豆ができるのです。
 地元の人がカカオを割って香りをかがせてくれると、3人の女の子達、チョコレートの香りがするとはしゃぎます。
 ところが、地元の人達はチョコレートを食べたことがないというのです。そこで、日本から持参したチョコレートを一かけらずつ配ると、口に入れて微妙な表情ながら美味しい、と。
 その様子を見つめる彼女たちの表情も複雑です。
 慣れないキツい作業の後、3人はブッ倒れて昼寝するシーンも。
130206_2_convert_20130206003131.png 3人は学校も見学します。壁はなく自然の風が吹き抜ける建物。机や椅子の数も足りません。
 それでも子ども達の表情は明るく、校庭で一緒にサッカーを楽しみ(子ども達の多くは裸足)、最後は、にこやかに手を振って見送られて帰途につきます。
 それまで明るく振る舞っていた彼女たちですが、子ども達と別れると、自分たちはこれまで何も考えず、児童労働の過酷さも知らず、ただ美味しいとチョコレートを食べていただけだったと、涙を流します。
 一人は日記に記しました。
 「知ることはキツい。でも、知らないままでいいとは、もう言えない」と。
 そして日本に戻った彼女たちが、カカオ生産地の人たちの思いを広く伝えようと企画したイベントが「バレンタイン一揆」。
 バレンタインデー近くのある週末、道行く人に声を掛け、銀座のショップに一斉にフェアトレードのチョコレートを買いに行こうというイベントです。
 しかし、準備にはスタッフも集まらず、当日、声をかけても立ち止まる人は少ないという現実。300人の目標は60人に留まりました。
 現地を見てきた自分と、普通に日本で暮らしている人たちの間の気持ちのすれ違い、ギャップの大きさを実感し、悔し涙を流し、そしてリベンジを誓うのでした。
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130206_5_convert_20130206003249.png 映画の終了後は、主催者の一人、奈須りえさん(大田区議)の進行で、ACE事務局の若い男性スタッフ、召田安宏さんのトークです。
 ACE「しあわせへのチョコレート・プロジェクト2013」の一環として、売上の20~30%が寄付されるACE「しあわせを運ぶ てんとうむしチョコ」、森永製菓「1チョコ for 1スマイル」キャンペーン、昨年の「バレンタイン一揆」を企画した学生達による「DARSでスマイル♪」プロジェクト等が紹介されました。
 会場の参加者からは、フェアトレードのことは詳しく知らなかったので勉強になった、明るく前向きの内容で、ぜひ高校生など若い人たちにこの映画を見てもらいたい、といった感想が出される一方、実際の児童労働はもっと悲惨で、さらに酷い児童兵役といった問題も世界にはあるのでは、といった意見も出されました。
 障がい者の作業所を運営されている方、介護ヘルパーの方、薬害問題に取り組んでおられる方も参加されていました。
 また、会場の一画では、チョコレート・レボリューション(「チョコを選べば、世界が変わる。」を合い言葉にしたムーブメント)の方によるフェアトレード・チョコレート等の展示と販売も行われました。
 この日は、上映会・トークが3回開催されたそうで、昼間の会は小さな子どもさんを連れたお母さん達も来られたとのこと。
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 奈須さんは、この映画をフェアトレードや国際協力だけの問題とは捉えず、「現在の日本でも起きている経済というしくみと個人のくらしとの間で起きている問題と無縁でない事に気づかされます」と、ブログに書かれています。
 食べものが、どこで、どのような人たちによって作られ、どのように食卓まで運ばれてきたか、ということに想像力を及ぼすという面では、地産地消(あるいはフード・マイレージを意識すること。)とフェアトレードは矛盾するものではなく、むしろ、ねらいを同じくする取組と言えます。
 今年のバレンタインデーは、産地や生産者のことに思いを馳せつつ、大切な人と「フェアトレード・チョコレート」を食べてみてはいかがでしょうか。
【ご参考】
 ◆ ウェブサイト:フード・マイレージ資料室
 ◆ メルマガ :【F. M. Letter】フード・マイレージ資料室 通信
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