「農」と「志金」で地域を創る。

 大震災と原発事故から2年、今年も春は巡ってきました。
 自宅向かいの幼稚園のソメイヨシノも、例年より早く満開です。
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 桜のこずえの上に、だいぶ膨らんできた月が見えました。そろそろ次号のメルマガの準備をしないと。
 むろん、春の花は桜ばかりではありません。
 色とりどりの花々が咲き競い、命が萌え出ずる季節であることが実感されます。
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 さて、去る2013年3月20日(水)の春分の日は、「グリーン・エコノミー シンポジウム-都市に生命を、おカネに意志を!-」というイベントに参加してきました。
 エネルギーや食を他の地域に依存している東京自身が、持続可能でグリーンな復興に向けてどう変わるべきかを、「農業」「金融」にフォーカスをあてて考えよう、という趣旨です。
 主催は国際青年環境NGO「A SEED JAPAN」、会場はJR中野駅近くの西武信用金庫本店8階ホールです。
 
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 まず、「日本経済における地域の課題と金融機関の役割とは」と題し、西武信用金庫の常勤理事・業務推進企画部長、高橋一朗氏から基調講演。
 地域金融機関として、農商工連携など中小事業者に対する事業支援や街づくり支援を行っており、NPO法人や保育所・商店会等を対象とする地域貢献事業専用ローン(西武コミュニティローン)、コミュニティビジネス専用の賃貸オフィス(西武コミュニティオフィス)、「eco 定期預金」を活用した「西武環境保全活動助成金」等について紹介がありました。
 ちなみに窓口は毎日17時まで営業、ATMの手数料は終日無料とのことです。
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 続いて、「『こめまめプロジェクト』から産消連携の方法を探る」と題して、山本拓己氏(株式会社 OKUTA(オクタ)代表取締役社長)から報告。
 埼玉・小川町下里地区の農家と提携し、米を全量買い上げ、給与の一部として社員に支払うというユニークな取組について紹介がありました。アメリカ等で盛んなCSA(Community Supported Agriculture)は、元々日本の「産消提携」がモデルでしたが、これが逆輸入され、企業による新しいかたちで根付いています。
 また、地元のNPO生活工房「つばさ・游」の協力が無いと実現できなかったこと、農業体験等を通じた「顔の見える関係づくり」が重要であることを強調されていたのが印象的でした。
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 続いて、大和田順子さんから「首都圏だから出来るアグリコミュニティビジネス」と題して報告。
 大和田さんは、サステナブルコミュニティ・プロデューサー、一般社団法人ロハス・ビジネス・アライアンス(LBA)共同代表等として幅広く活躍中の方です。
 この日は、被災地と首都圏の女性の交流「結結プロジェクト」、福島・いわき市での「いわきおてんとSUNプロジェクト」におけるオーガニックコットンの栽培・製品作り等について報告がありました。
 さすがLOHASという言葉を日本に最初に紹介された大和田さん、プロジェクトの命名や製品のデザインもお洒落です。
 さらに、東京コミュニティパワーバンクの坪井眞里理事長から「『NPOバンク』で実践する、市民による新たなおカネの流れ」について報告。
 市民の「意志あるお金」で、NPOやワーカーズコレクティブを支援し大きく育てることにより、市民が主役の社会をつくるという取組について、東京コミュニティパワーバンクの実際の融資事例を含めて報告がありました。
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 続いて、吉野隆子さんから、「協働による都市型ファーマーズマーケットの可能性」として報告。
 吉野さんは「オアシス21オーガニックファーマーズ朝市村」の村長として、名古屋市東区において毎週土曜日に開催している有機農産物を中心とした朝市の取組内容について報告がありました。
 単なる産直市ではなく、生産者間の交流、新規就農希望者の相談窓口等としての役割もあるとのことで、さらに場所等を拡大していく構想もあるそうです。
 さらに、「有機農業の意義と福島における地域再生の取組み」と題し、浅見彰宏さんによる報告。
 大手鉄鋼メーカーのサラリーマンだった浅見さんは、退職して埼玉・小川町で研修を受けた後、福島・喜多方市で新規就農された方で、福島県有機農業ネットワークの理事も務めておられます。
 多数の自給的・小規模兼業農家による「小さな農業」が山間集落を維持するための絶対条件であること、有機農家にとって安全・安心は結果であり、現在と未来、人と人、人と自然を紡いでいくのが有機農業の真の姿であること、そして、フクシマの経験から新しい世界観・価値観を創出(生産者と消費者が共に未来への責任を持つ等)していこうと訴えられました。
 
130320_5_convert_20130324093416.png 最後は、「私にできる『都市に生命を、おカネに意思を』」と題して、A SEED JAPAN未来生活nowプロジェクト理事である鈴木亮さんからの報告。
 鈴木さんは、全国有機農業推進協議会にも携わられ、東日本大震災支援全国ネットワーク(JCN)の福島担当も務めておられます。
 キーワードは「エコライフ」から「みらいふ」へ。
 環境・人権・社会性を考慮しない欲深い「グリード・エコノミー」を縮小させ、環境と経済成長の両立を目指す「グリーンエコノミー」と、さらに生命の持続可能性を第一とする「ライフエコノミー」を拡大していくべきであり、そのために、小さな利益で大きな安心が得られる「小利大安ライフ」を追求していくこと等の重要性を訴えられました。
 また、4月から新宿で始める有機の朝市「すずめのみらいち」についても紹介がありました。
 休憩時間、会場の後ろでは、関連する書籍や物品の頒布も行われました。
 後半は、講演者が一堂に会しての会場との質疑応答。
 休憩時間中に提出された質問票はたくさんあり、短い時間内にこなすのは大変ですが、講演者の皆さんは、それぞれ自分に対する質問に対して順番に丁寧に答えられました。
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 最後は小グループに分かれてのワールドカフェ。
 各自、「ミライフ・チェックシート」を記入したうえで、「市民の力で東京を変える方法」についてディスカッションが行われました。
 この日のシンポジウム、持続可能な社会づくりのために、全国各地で様々な方たちが活動されていることが分かり、また、社会を変えていこうと思っている若い人たちが多く参加されている様子をみて、心強く感じました。
 また、社会を変えていく手段の一つとして、「農業」(あるいは農的生活)が注目されていることも、喜ばしいことと思います。
 しかし、この会場の熱気や参加者の思いと、会場の外の社会一般の雰囲気との間で、大きなギャップがあることも事実です。
 長いデフレと不況に疲れ果て、余裕を無くしていた日本人は、最近の円高是正と株価上昇、賃上げ決定等に経済成長の再来を感じとり、折しも満開の桜の下で、気分はふわふわと浮き立っています。
 それ自体は喜ばしいことなのでしょうが、グリーンエコノミーあるいはライフエコノミーの考え方と、どのように折り合いをつけていくのかは、難しい課題であると感じました。
130320_7_convert_20130324093504.png 帰り際、大和田さんが講演の中で紹介されていた「フクシマ オーガニックコットンベイブ」を求めさせて頂きました。
 福島・いわきで生まれたオーガニックコットンの綿と種で出来た人形。
 単なる人形では無くて種が入っていて、パッケージに記載された育て方によると、ベランダでのポット植えでも育つそうです。
 この種を日本中の人と共に育て、収穫したコットンで、ものを手作りし、フクシマの新しい仕事や仲間の輪を広げていくという願いが、可愛い小さな人形に託されているそうです。
 
【ご参考】
 ◆ ウェブサイト:フード・マイレージ資料室
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