福島オーガニックコットン・ボランティアバス

2013年5月25日(土)は、第1回「フクシマ オーガニックコットン」ボランティアバスに参加させて頂きました。
主催は認定NPO法人「女子教育奨励会」(JKSK)
100年以上前に「日本婦人の国際化と社会参加」を目的に、伊藤博文、大隈重信、澁澤栄一など179名がポケットマネーを出し合って設立したという歴史のある団体。
昭和初めにいったん解散したものの、2002年、優れた女性リーダーの養成を目的として、NPO法人として再スタートしたのだそうです。
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予定通り、バスは7時にJR新宿駅西口を出発。渋滞もなく、順調に常磐自動車道を北上します。
車中でJKSKの理事でもある大和田順子さんから、今回のバスツアーの趣旨等を含めてご挨拶がありました。
大和田さんは、ロハス(健康や環境に配慮し、持続可能な社会を志向するライフスタイル)という言葉と考え方を日本に最初に紹介された方で、現在、いわき市を含め、日本各地でコミュニティビジネスの普及等に精力的に取り組んでおられます。
私は埼玉・小川町の関係でご縁を頂き、折に触れてご指導を頂いています。
130525_13_convert_20130528230609.png 原発事故により食用作物に対する不安がぬぐい切れず、耕作放棄地が増加している中、現地の方たちとともに繊維作物であるコットン(綿花)を育て、これからの復興のあり方について考える機会としようというのが、今回のツアーの趣旨とのことです。
(今回のツアーについては、大和田さんご自身のブログでも詳しく紹介されています。)
事務局の方から行程の説明がありました。
太陽光発電設備の見学と落成式への参加、コットン(綿花)の定植作業、最後は温泉での入浴と、盛りだくさんです。
マイクを回して自己紹介。約25名の参加者は男女半々位です。
和気あいあいとしたシニアのグループは、立教セカンドステージ大学での大和田さんの教え子の方達です。いわき市から立教大に通っている方もおられました。
途中、休憩した友部サービスエリアの壁の路線図をみると、常磐道の広野の先には赤いバツ印。
道路の電光掲示板にも「広野・常磐富岡 災害通行止」と表示が出ていました。むろん「災害」とは原発事故のことです。
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バスに同乗された早稲田大学環境総合研究センターの岡田久典先生からは、再生エネルギーについてのミニレクチャーもありました。
再生エネルギーに対する期待は大きいものの、メンテナンス等には専門知識・技術が必要で、必ずしも順調に普及している訳ではないとのこと。
10時半過ぎにいわき市小川に到着。
いわき市では市民の方達が様々な活動に取り組んでおられますが、その一つが「いわきおてんとSUNプロジェクト」です。
震災以前からそれぞれ地域づくり活動をされていた3人の方が中心となって企業組合を作り、オーガニックコットン、コミュニティ電力、スタディツアーを3本の柱として、復興まちづくりに取り組んでいます。
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完成したばかりの太陽光発電設備(30kW)を見学させて頂きました。
「いわきコミュニティ電力」事業の第一弾です。
かなり急な斜面の山林を、ボランティアの方達が人力で開墾・整地し、太陽光発電パネルを取り付けたそうです。
赤い作業服は(株)ブリヂストンの従業員の方たち。継続的に多数のボランティアを派遣されているとのこと。
市民の学習の場としても開放されており、岡田先生も、敷地内に立ち入ることができる施設は珍しいと仰っていました。
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この日はちょうど、落成式の当日です。
爽やかな青空の下、ボランティアや地元マスコミを含めて100名ほどが参加。
太陽光発電された電気によりマイクとスピーカーの電源が入ると、歓声が上がりました。
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いわきおてんとSUN企業組合の代表理事、吉田恵美子さんから「私たちが立ち上がっていく姿を見て頂きたい」と万感こもった挨拶。
震災前からNPO ザ・ピープルの理事長として、古着のリサイクル活動に取り組んでおられた方。
企業組合ではオーガニックコットンの関係を担当されており、この後の定植作業にも同行して下さいました。
企業組合理事でコミュニティ電力担当の島村守彦さん(NPOインディアン・ヴィレッジ・キャンプ副理事長)は、地区の未来像を描いたパネルを示しつつ、他のプロジェクトや地域産業と連携していく構想について説明されました。
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原田先生、大和田さん、ブリヂストンの方、市民ボランティアの方、行政関係者等からのお祝いのメッセージに続き、記念にオーガニックコットンを定植。
地元の人もボランティアの方達も、みんな明るい笑顔です。
輝かしい未来がすぐ近くまできているような予感に、胸が高鳴る思いがしました。
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バスに戻り、広野町に向かいます。福島第一原発に、さらに近づくことになります。

車内で、市民が運営する地産地消推進店「スカイストア」製のお弁当を頂きながら(大変、美味でした。)、同乗された吉田さんが、震災直後から現在までのいわき市の実情について説明して下さいました。
吉田さんの表情からは、落成式での輝くような笑顔は影を潜めています。
被災直後、炊き出しの実施、ボランティアセンターの立ち上げ等をされてきたこと、関西から子ども達を避難させるバスを提供するとの申し出に十分な対応ができなかったこと等を話されました。
そして現在、近隣の市町村から多数の避難者を受け入れているいわき市では、住民との間で様々なあつれきが生じている現実があるとのこと。
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折しも前日(5月24日)付けの全国紙に「いわき市の現状・共生遮る誤解の連鎖」という特集記事が掲載されましたが(持参し回覧して頂きました。)、全面2頁以上にわたる大きな取り扱いには、住民の一人として心穏やかでは無かった様子です。
車窓からは多くの仮設住宅も見えました。これらは避難者ではなく東京電力の作業員のためのものだそうです。
1時間ほどで広野町の畑に到着しました。

道路を隔てた反対側は、おびただしい数の消波ブロックの置き場となっていました。広い水田だったそうですが、周囲の民家ともども津波で流されたそうです。重機の向こう側に垣間見えた海は、穏やかな色をたたえています。
津波は小さな川を遡って被害をもたらしたそうで、護岸等には今も爪痕が残っていました。
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遠くにみえる2本の巨大な煙突は、東京電力広野火力発電所。
フル稼働中だそうで、原発は止まっていても、今も福島は首都圏への電力の供給源です。
そのすぐ向こうには原発事故対応の拠点となっているJヴィレッジ(楢葉町)があり、さらに30kmほど先には福島第一原発があります。線量は高くないとはいえ、緊張感を覚えます。
この日の参加者は、地元の方、ブリヂストンの方、東電広野火力発電所の従業員の方達と合わせて総勢70名ほどです。
小さな川の両岸2カ所の畑は合わせて10アールほど。
津波を被った後2年間作付けされていなかった畑は、きれいに整地され、畝が立てられて黒いビニールのマルチまで敷かれています。
ここに、地元の農家の方が準備してくれた苗を移植するという(美味しいところ取りの)作業です。
有機農法アドバイザーの松本公一さんが、植え付け方などを指導して下さいました。
もともと楢葉町で白鳥(!)を餌付けしながら「ふゆみず田んぼ」を手掛けられていた農家の方で、現在はいわき市に避難されています(頂いた名刺の住所は「応急仮設住宅・・」となっています)。
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マルチに一定間隔で丸い穴を開け、たっぷりと水をかけていきます。
そこにポットの苗を、根が傷まないよう、なるべく土を崩さずに丸ごと移植するように言われましたが、なかなか難しい作業です。
陽射しはあっても気温は高くなく、快適でしたが、立ったりしゃがんだりが連続の作業は、普段の運動不足の身にはなかなかキツいものがありました。
途中で苗は使い切り、残った場所には種を直接播きました。2粒ずつ播いて1cmほど土を被せます。
地元の方がアイスクリームを差し入れて下さいました。
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15時半頃には予定の作業は終了。吉田さんからの挨拶、みんなで記念写真。
バスでいわき湯本に戻り、古滝屋さんへ。元禄年間から続くという由緒ある温泉旅館です。
16代目の里見喜生さんも、いわきおてんとSUN企業組合の理事のお一人です。復興スタディツアーを担当されており、ロビーでお話を伺いました。
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露天風呂など、まだ修復が完了していない部分もあるそうですが、大浴場は広く快適です。
作業の疲労感が、たっぷりのお湯に溶け出していくようです。
風呂を上がり、すぐ前にある「温泉神社」に参拝。
ホテルの売店で日本酒「又兵衛・いわき郷」と缶ビール。セカンドステージ大学の皆さんと乾杯させて頂きました。
なお、昨年収穫されたコットンはTシャツに加工され、6月頃から販売される予定とのことです。
130525_14_convert_20130528230634.png 1730に現地を出発。守谷サービスエリアで休憩し20時過ぎに新宿西口に着。
被災地の現状については、マスコミで様々な報道がなされ、ネットでも情報はふんだんに流れていて、何となく分かっているようなつもりになっています。
しかし、現地に足を運び、直接、現地の方から話を伺ってみると、頭の中で何となく作られていた単純なイメージとは異なる実態が見えてきます。
今回は、貴重な経験をさせて頂きました。
現地の皆さまはもちろん、大和田さん、事務局の皆様にも感謝申し上げます。
このボランティアバス、今後、4回にわたり実施される予定とのこと(6月22日、8月24日、9月28日、11月23日。いずれも土曜日)。
ご関心のある方は、事務局までお問い合わせ下さい。