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◇◆◇ F. M. Letter −フード・マイレージ資料室 通信− ◇◆◇
No.21 ; 2013. 6/9(日)[旧暦 皐月朔日]発行
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去る6月5日(水)は二十四節気の「芒種(ぼうしゅ)」、稲など穀物
の種をまくのに適する季節との意味です。
多くの地域では田植えは終わりましたが、北関東や九州の一部では、
これから最盛期を迎えます。
稲作ごよみ一つとっても、日本の気候風土は多様性に溢れていること
が分かります。
時の流れを感じて頂く一助とするため、旧暦の毎月1日と15日に配信
している本メルマガ、今回は皐月(さつき)朔日の配信です。
(9日は後出の「池袋えんがわ市」当日のため、日付よりも1日早く配
信しています。)
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◆ F.M.豆知識
フード・マイレージを始めとする食や農に関わる話題について、毎
回少しずつ取り上げていきます。
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3 「食の激変」と食料自給率
(3) カロリーベースと金額ベース
最近、食料自給率について様々な議論があり、中には「大嘘」と断じ
るような極端な主張もあります。
その内容については前号で(1)〜(5)に整理しましたが、今回は、まず、
「(1) 食料自給率には、生産額ベースとカロリーベースの数字がある。
生産額ベースは高いのに、農水省は低い方のカロリーベースの数値
しか使わない。
これは、農水省と農林族議員が、危機感をあおって予算を獲得しよ
うとしているため。」
との主張について考えてみたいと思います。
そもそも「食料自給率」とは、国内の食料消費が、国内での食料生産
でどの程度賄えているかを示す指標のことです。
(ちなみに自給率が100%を超えている場合は、輸出があることを示して
います。)
自給率の計算で最も簡単なのは重量(トン)で計算することで、品目
別の自給率は重量ベースで計算するのが一般的です。
○ 計算式(重量ベース)
国内生産量 ÷ 国内消費量 = 重量ベースの食料自給率
例えば、穀物(米、麦、とうもろこし等)の自給率は重量ベースで
【28%】になります(2011年度概算値。以下、同じ)。
ところが、様々な品目からなる食料全体の自給率を求めるためには、
穀物、乳製品、野菜など質が異なるものの重さを単純に足し上げること
は適当ではないため、別の何らかの共通の指標が必要となります。
そこで登場するのが、「カロリー(供給熱量)」と「生産額」です。
カロリーベースの自給率とは、様々な食料を「日本食品標準成分表」
に基づいて熱量に換算した上で、各品目を足し上げて算出します。
○ 計算式(カロリーベース)
1人1日当たり国産供給熱量 ÷ 1人1日当たり供給熱量
= カロリーベースの総合食料自給率 【39%】
続いて、生産額ベースの食料自給率とは、食料の生産量及び消費量を
金額に換算し、各品目を足し上げて算出するものです。
○ 計算式(生産額ベース)
食料の国内生産額 ÷ 食料の国内消費仕向額
= 生産額ベース総合食料自給率 【66%】
このように、カロリーベースと生産額ベースでは大きな差があります。
これは、それぞれに意味している内容が異なるためです。言い換える
と、総合的な食料自給率を捉える場合、この2つの考え方にはそれぞれ
メリットとデメリットがあり、どちらか一方で十分と言うことはないの
です。
このため、国の食料政策等の基本的な指針である「食料・農業・農村
基本計画」(2010.3 閣議決定)においても、カロリーベースと生産額ベ
ースの2種類の目標が定められているのです。
○ 2020年の食料自給率の目標]
カロリーベース:50%【現在は39%】 生産額ベース:70%【66%】
このように、農林水産省(政府)において低いカロリーベースの数値
だけを用いているとの主張は、何となくもっともらしく聞こえるかも知
れませんが、事実とは異なります。
それでは、カロリーベース【39%】と生産額ベース【66%】のどちら
が日本農業の真実の姿を現わしているのでしょうか。
これは次回、説明したいと思います。
(参考)
農林水産省HP「食料自給率の部屋」
http://www.maff.go.jp/j/zyukyu/index.html
「食料・農業・農村基本計画」(2010.3 閣議決定)
http://www.maff.go.jp/j/keikaku/k_aratana/pdf/kihon_keikaku_22.pdf
(食料自給率の目標についてはp.15に記載されています。)
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◆ オーシャン・カレント −潮目を変える−
食や農の閉塞感を打ち破るためのユニークな活動や、それに取り組
んでおられる方達を紹介するコーナーです。
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毎月第2日曜日の10時から15時まで、東京・池袋第二公園(池袋図書館
前)において「えんがわ市」が開催されています。
今月は9日(日)の予定です。
今回は、リサイクルフリーマーケットのほか、復興支援グッズ、秋田
県横手市の特産品、立教大学FTP(フェアトレードパートナー)による
コーヒーやチョコレートの販売が行われます。
茨城県の「アスナロ農園」から朝獲れ野菜も直送されてくる予定です。
飲食物は、焼きそばや赤飯、アイスクリーム等に加え、新メニュー・
ところてんも登場。
また、今回は昨年6月に引き続いて東京土建「住宅デー」と共同開催
で、包丁研ぎ、まな板削り、子ども工作教室も開催されるそうです。
主催は、地域サロン「みんなのえんがわ池袋」。
豊島区等で活動する市民活動団体等のネットワークづくりとサポート
を行っているNPO法人「としまNPO推進協議会」が運営する地域コミュニ
ティサロンです。
毎月の「えんがわ市」開催のほか、商店街の空き店舗に常設の「出入
り自由の縁側」を開設しています。
ここは「一人暮らしのお年寄りや若者、子育てに迷う主婦、コミュニ
ティに溶け込めない外国人や障がい者など、自分の居場所や話し相手が
欲しい人の『みんなのえんがわ』」とのことです。
また、まちづくりや福祉、教育等の分野で地域社会に貢献している市
民団体等の活動の紹介とネットワークづくりのための「社会貢献見本市
&交流会」も、毎年、開催しています。
今回、9日(日)の「えんがわ市」は、実に62回目の開催となります。
地域のコミュニティづくりに加え、被災地や農山村、さらには南の国々
との繋がりまで視野に入れた幅広い取組が、大都会・池袋において息長
く続けられています。
(参考)
「みんなのえんがわ池袋」フェイスブックページ
「としまNPO推進協議会」ウェブサイト
http://toshima-npo.sakura.ne.jp/toshima-npo/modules/news/
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◆ 情報ひろば
食や農に関わるセミナーや勉強会の情報、拙ブログの更新情報、各
種イベントの開催情報等をお知らせします。
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▼ブログ「新・伏臥慢録〜フード・マイレージ資料室から〜」更新情報
○[5月24日付け]すずめのみらいち
新宿3丁目の「復興カフェ・結 YUI 」の店先で、月1回、有機
農産物等を販売するマルシェがスタートしました。
企画・運営されているのは、国際青年環境NGOの若いメンバー
の方達です。
http://food-mileage.jp/2013/05/24/
○[5月27日付け]農業ビジネス研究会−Sakeから観光立国−
神田「千代田プラットフォーム」で開催された研究会のテーマは
「日本酒をいかにグローバルマーケットへ売り込むか?」。
元国際線の客室乗務員で(株)コーポ・サチ代表の平出淑恵さん
のお話は、日本酒の大きな可能性を感じさせてくれました。
http://food-mileage.jp/2013/05/27/
○[5月30日付け]福島オーガニックコットン・ボランティアバス
女子教育奨励会(JKSK)が主催する「フクシマ オーガニックコ
ットン」ボランティアバスに参加しました。
いわき市等では市民グループによる様々なプロジェクトが立ち上
がっており、津波被害を受けた広野町の畑ではコットンの定植作業
を行いました。
http://food-mileage.jp/2013/05/30/
○[6月4日付け]伝統野菜は生きた文化財
野菜の学校・特別講座での江頭宏昌先生(山形大)の講演では、
伝統野菜や在来作物の復活・普及の意味について、改めて体系的に
学ぶことができました。
山本謙治(やまけん)さんからは全国各地の伝統野菜の紹介も。
http://food-mileage.jp/2013/06/04/
○[6月6日付け]埼玉・小川町との縁
久しぶりに訪ねたべりカフェでの美味しいランチ(有機野菜バイ
キング)、ときがわ町の「とうふ工房わたなべ」によるCSA。そし
て、まつなが農園からはおいしい野菜が届きました。
小川町とのご縁に感謝です。
http://food-mileage.jp/2013/06/06/
▼ 筆者が関心のあるイベント等を勝手に紹介します。
満席等となっている場合がありますので、参加を希望される方は、
必ず事前に主催者にお問い合せ下さい。
○ 品川プチマルシェ“第6回 全快野菜ちゃん”
日時:6月15日(土)9:00〜16:00
場所:品川寺(ほんせんじ、品川区南品川3-5-17)
主催:グリーンスマイル
(詳細、お問合せ等↓)
http://www.greensmile.asia/2013/05/29/0615yasai/
○ しごと塾さいはら2013 第3弾
「大豆の苗植え&川をきれいにお手伝い」
日時:6月15日(土)〜16日(日) (日帰り参加もOK)
場所:山梨県上野原市西原(さいはら)地区
主催:しごと塾さいはら
(詳細、お問合せ等↓)
https://www.facebook.com/events/169845143190518/
http://shigotojyuku-saihara.jimdo.com/
○ 日本フードシステム学会 2013年度大会
日時:6月15日(土)〜16日(日)
場所:筑波大学
(詳細、お問合せ等↓)
https://www.fsraj.org/taikai/2013/
○ フクシマオーガニックコットン JKSKボランティアバス(第2回)
日時:6月22日(土)
場所:福島県いわき市等
主催:NPO法人 女子教育奨励会(JKSK)
(詳細、お問合せ等↓)
http://jksk.jp/j/yyp/focJKSKpr120418.pdf
* 今回も読んでいただき有難うございました。
次号は6月23日(日)(旧暦 皐月十五日)に配信予定です。
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F. M. Letter −フード・マイレージ資料室 通信−【ID;0001579997】
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◆ 発行者:中田哲也