2013年6月22日(土)は、第2回「ふくしまオーガニックコットン JKSKボランティアバスツアー」に参加させて頂きました。前回(5月25日)に引き続いての参加です。
主催は認定NPO法人「女子教育奨励会」(JKSK)です。
朝6時50分に新宿西口に集合、天ぷら油で走るバスに乗って7時過ぎに出発。
約30名の参加者の半分近くは今回が初参加で、そもそもボランティア活動は初めてという方もおられます。父親と息子、祖母と孫息子で参加という方もおられます。
事務局の上原望さんから行程等の説明。今回も盛りだくさんです。
続いてJKSK理事の大和田順子さんからの挨拶とツアーの趣旨説明。
JKSKの木全(きまた)ミツ理事長からは、JKSK設立の経緯や活動内容、今回のオーガニックコットンプロジェクトの意義等について、ミニレクチャーをして下さいました。
この日は、前回と違ってやや渋滞気味です。久しぶりの晴天、しかも週末というせいかも知れません。
しかも、福島県に入った頃から、ちょっと天気が怪しくなってきました。
予定より遅れて、10時40分頃にいわき市の久之浜地区にある浜風商店街に到着。
2011年3月の津波で大きな被害を受けた地区ですが、同年9月、久之浜第一小学校の敷地内に仮設の商店街が開業しています。現在、9つの商店が営業しています。
「ふれあい情報館」もあり、被災当時の写真やビデオ、資料等が展示されています。コンシェルジュの女性が色々と説明して下さいました。
バスに乗り、大久地区という場所に移動。コットンの栽培地の一つです。
脇にテントと椅子が据えられ、畑の真ん中には紐に通されたTシャツが風に揺られています。その中央にマイク。
昨年から開始された「ふくしまオーガニックコットンプロジェクト」。
そこで収穫されたコットンを使用した商品第一号であるTシャツがついに完成し、この日は畑の真ん中で「お披露目会」が開催されたのです。
継続的にボランティア活動をされている、お揃いの赤い作業着が格好いいブリヂストンの方も大勢参加されています。
いわきおてんとSUN企業組合の代表理事、吉田恵美子さんから万感のこもったご挨拶。
「1.5ヘクタールだったコットン畑は、今年はいわき市外にも拡がり3ヘクタールに。環境問題に苦しんでいる福島だからこそ、本物づくりに取り組んでいきたい。多くの人の思い、繋がりが、今日、小さなTシャツに結実したことを嬉しく思う。関係者の皆さまに感謝申し上げたい。
しかし、私たちは、いつまでも被災者という立場ではなく、周りの人たちに希望を与えていけるような存在になっていきたい。」
来賓として、JKSKの木全理事長、「東北を元気に! 明日を耕すプロジェクト」を展開している味の素冷凍食品(株)の方、いわき市の商工観光部長(この畑の地主としてもプロジェクトに協力されているそうです。)から挨拶。
さらに、久之浜第一小学校の松本光司校長先生からの挨拶。
そして、一緒にコットンを植えた生徒たちも並んでインタビュー。この日は地元テレビ局のカメラも来ていて、子ども達は緊張気味です。
その後、関係者や子ども達が一緒にコットンの記念定植を行いました。
天候が不安定で、セレモニーの途中、断続的に雨が落ちてきたのですが、参加者の皆さんの笑顔が消えることはありませんでした。
後刻、帰りのバスの中で参加者にマイクが回って感想などを述べ合ったのですが、一人の女性の方が「お天気雨は神様が歓迎しているという言い伝えがある。あのお披露目式は、きっと神様も喜んでいるんだなと思った」と話されたのが印象的でした。
場所を近くの公民館に移して、昼食交流会です。
地元の女性グループの方たちがカレーライスを振舞って下さいました。カレールーは、米粉が入った地元の特産品だそうです。大変、美味しく頂きました。ご馳走さまでした。
ここで改めて、完成したばかりのTシャツが紹介され、販売も行われました。
真っ白い海外産コットン100%とは異なってナチュラルな「生成り色(きなりいろ)」です。手触り、肌触りも優しく、2着ほど購入させて頂きました。
バスに乗る前、公民館の前に設置された線量計をみると、0.224μSV/hと表示されています。環境省が除染の目安等と定める年間 1mSVよりは低いとはいえ、平常値に比べると高い数値です。
バスで津波被害を受けた久ノ浜地区に戻りました。
一見、普通の街並みが続いているかのように思えたのですが、海岸沿いまで来ると光景は一変。今も一面の更地のままで、建物の基礎のコンクリートだけが夏草に間にくっきりと見えます。3.11以前、間違いなくここには住宅や商店があり、人々が生活していた紛れのない証拠です。
バスの中で、吉田さんは福島第一原発に近い富岡町に行った経験を話して下さいました。
警戒区域等がこの3月に再編され、一部地域までは立ち入ることができるようになったそうです。そこで吉田さんの目に映ったのは、震災直後そのままの、がれきも片づけられていない光景だったのこと。
前回のツアーでは、同じようにバスの中で、いわき市への避難者と住民との間で様々なあつれきが生じていることを、率直に話して下さった吉田さん、今回は、
「確かに色々な問題はあるし考え方も様々。それでも、富岡町の3.11から時間が止まったような光景を見て、現実に避難を強いられている方たちの無念の思いを、改めて理解できたような気がした」と仰っていました。
3.11から2年と3ヶ月余が経過しました。経済は好転の兆しを見せ、五輪誘致や富士山の世界遺産登録、国政選挙も控えて、何となく世の中は浮き立っています。
しかし被災は決して終わった訳ではなく、今も継続しています。むしろ複雑化し、混乱が深まっている面もあるようです。
さて、バスは北隣の広野町へ。
前回と同じ、消波ブロック置き場(津波の被害を受けた水田の跡地)脇の畑がある場所に着きました。
今回も、松本公一さんが技術指導して下さいます。
双葉町で「冬水田んぼ」(餌付けしていたのは何と白鳥!)で稲作をされていた農家の方ですが、今はいわき市に避難しておられ、仮設住宅に住みながら、仲間と営農を再開されている方です。
ところで前回は、根が傷まないよう、なるべくポットの土を崩さずに植えるように指導されたのですが、これがなかなか難しく、やや雑な作業となってしまったという思いが残っていました。
朝のバスの中での自己紹介を聞いていると、そのように感じていたのは私だけでは無かったようで(眠れなかった方もおられたようです。)、果たしてちゃんと大きく育っているか、皆さん楽しみ半分未満、不安半分以上といった気持ちで畑に向かいました。
ところが、苗のほとんどは大きく育っていたのです。
みんな胸を撫で下ろしたのは言うまでもありません。もっとも、松本さん始め地元の方、他のボランティアの方が手入れしていてくれていた面もあるのだと思います。
この日の作業は、苗の周りと畝の間の草取り。そして、育たなかったところには新しい苗を補植します。
ところが、2か所の畑の作業が終わった頃に雨が強くなってきて、この日の作業は打ち切りに。正味、1時間ほどしか作業できませんでした。
その後は、今回も老舗温泉旅館・古滝屋さんへ。
若社長の里見喜生さんが出迎えて下さいました。企業組合ではスタディツアーを担当されています。
ロビーでは、山形に避難されている農家の方の野菜が販売されていました。
この旅館も震災で大きな被害を受け、現在も食事が出せない状況が続いており、従業員の数も大きく減っているそうです。しかし、使えなかった(前回は入れなかった)露天風呂が再開できたとのこと。
少しずつ前進しているようです。
気持ちのいいお湯です。雨にぬれた身体の芯まで温まりました。
現在、コットンのほとんどは輸入されています。輸入綿は白く繊維が長いのに対し、国産の綿(茶綿)は繊維が短く色は茶色で、貴重であるため価格も高いそうです。
今回のTシャツも、他の地域産も含めた国産原料の割合は5%程度、いわき産は1%程度に留まっているそうです(それでも、輸入綿100%とは異なる生成り色の風合いがあります)。
プロジェクトとしては、栽培農家にとって他の作物並の収益性が得られることを目指し、面積も増やしているそうですが、コットンだけで農業経営を成り立たせるのは、現実的にはなかなか難しいとのこと。
その意味では、吉田さんが謙遜して言われたように、今は「小さな成果」かも知れません。
しかし、取組が拡がっていけば使用割合も上がり、栽培農家や加工等に携わっている方たちの所得向上に貢献するだけではなく、プロジェクトに関わる人たちのネットワーク、繋がりが拡がっていくという、経済面に留まらない効果も期待されます。
帰りのバスの中でのある参加者の女性の方の感想。
「今日は雨のせいであまり作業ができなかったが、地元の方は、受け入れの準備や、使った道具の後片付けなど、大変な苦労をされているものと思う。」
ボランティアとして「支援」「応援」するのではなく、被災地の方に思いを馳せ、一緒に活動していきたいという気持ちが伝わってくるような言葉でした。
新宿に到着間近、大和田さんから最後の挨拶の中では、
「次回は8月24日(土)の予定です。畑は雑草が茂って見違えるようになっていると思います。暑い中の草取りは大変な作業ですので、今日、物足らなかった方は、ぜひ次回もご参加下さい」との案内がありました。
8月24日の草取りに続き、9月28日には草取り・収穫、そして11月23日には収穫祭が予定されています(いずれも土曜日)。
【ご参考】
◆ ウェブサイト:フード・マイレージ資料室
◆ メルマガ :【F. M. Letter】フード・マイレージ資料室 通信