F. M. Letter -フード・マイレージ資料室 通信- No.025

================================================================

◇◆◇ F. M. Letter −フード・マイレージ資料室 通信− ◇◆◇

     No.25 ; 2013. 8/7(水)[旧暦 文月朔日]発行

================================================================

 

 全国各地で豪雨被害が相次いでいます。大きな花火大会もいくつも中

止になりました。年々、気候が猛々しくなってきているようです。

 昨86日は68回目の広島原爆の日でした。9日は長崎の日、そして15

は終戦記念日。8月は鎮魂と祈りの月でもあります。

 そして本日、暦の上では立秋を迎えました。

 

 時の流れを感じて頂くため、旧暦の毎月1日と15日に配信している本メ

ルマガ、今回は文月(ふみづき)朔日の配信です。

 


—————————————————————-

  F.M.豆知識

  フード・マイレージを始めとする食や農に関わる話題について、毎

 回少しずつ取り上げていきます。

—————————————————————-

   3 「食の激変」と食料自給率

  (7) 穀物自給率について

 

 前回は、世界で最も一般的に用いられている自給率に関する指標は、

穀物自給率であることを紹介しました。

 

 穀物とは、米、麦類、とうもろこし、こうりゃん等、生命と健康を維

持するために最も基礎的なカロリー源です。また、飼料(家畜のエサ)

にするものも含まれます。

 穀物自給率は重量ベースで簡単に計算できることから、途上国を含め

て、ほとんど全ての国や地域について計算し、比較できるというメリッ

トがあります。

 

 さて、それでは日本の穀物自給率はどの程度でしょうか。

 実は26%と、時に「過小」と批判されるカロリーベースの食料自給率

39%)よりもさらに低いのです。

 この26%という数値は、世界の176の国・地域のうち127位、OECD加盟

34か国のうち30位という水準です(2009年)。

 

 ちなみに、現在、人口1億人以上の人口を抱える国は、中国、インドを

始め全部で11ヵ国ありますが、うち5ヵ国は穀物自給率が100%を超えて

おり、3ヵ国は90%台、2ヵ国は60%台であることをみても、日本の低さ

は際立っています。

 もっとも、これら国の中には、国民が必要な栄養を摂取できていない

にも拘わらず外貨不足等のために十分な食料を輸入できないため、結果

として穀物自給率が高くなっている国もあることには注意が必要です。

 

 さて、日本の穀物自給率がこのように極端に低いのは、大量の飼料穀

物を輸入しているためです。高度経済成長の過程で日本人の食生活は急

速に「近代化」「欧米化」し、畜産物に対する需要が急増したことに伴

い、トウモロコシ等の飼料の輸入量が大幅に増加したのです。

 従って、飼料用を除いた主食用のみの穀物の自給率を計算すると、日

本は58%と相当高くなりますが、それでも諸外国に比べると低い水準に

あるといわざるを得ません。

 

 ここ数回にわたり述べてきたように、食料自給率についてはいくつか

の捉え方があります(重量、金額、カロリー等)。これらを総合的に勘

案し、世界における日本の位置を認識しておく必要があります。

 

(参考)

 諸外国・地域の穀物自給率(2009

  http://www.maff.go.jp/j/zyukyu/zikyu_ritu/013.html

 

[訂正]

 前回、供給熱量ベースの食料自給率を公表している国・地域は日本と

韓国だけと紹介しましたが、今般公表された「食料・農業・農村白書」

によると、台湾、スイス、ノルウェーでも、供給熱量ベースの食料自給

率を公表しているとのことです。

 

 「平成24年度 食料・農業・農村白書」

  第2 章第2 節 我が国の食料自給率の動向

  http://www.maff.go.jp/j/wpaper/w_maff/h24/pdf/z_1_2_2.pdf

 

—————————————————————-

  オーシャン・カレント −潮目を変える−

  食や農の閉塞感を打ち破るためのユニークな活動や、それに取り組

 んでおられる方達を紹介するコーナーです。

—————————————————————-

 熊本市在住の北亜続子(きたあつこ)さんは、元々専業主婦でしたが、

子育てをきっかけに食に強い関心を持つようになったそうです。

 そこで、野菜ソムリエの資格を取得され、自宅での「野菜塾」の開催、

セミナーや研修会での講演、企業や行政から依頼を受けてのレシピの開

発、まちづくり関係の協議会への参加(委員)など、幅広い分野で活躍

されています。

 

 その北さんが、近年、特に注目しているのが「ひご野菜」。

 熊本(肥後の国)で伝統的に栽培され、食文化や地名と関わりのある

野菜で、水前寺もやし、春日ぼうぶら、熊本ねぎ等15品目が指定されて

います。

 しかし、必ずしも知名度は高くなく、生産者の数が年々減少している

野菜もあります。

 

 生産者と交流する中で危機感を抱いた北さんは、行政や農業高校等と

連携し、ひご野菜を生産する農家の見学会や、一流シェフによる創作料

理の食事会を継続的に開催するなど、様々な普及活動に取り組んできま

した。

 それでも、なかなか販路は拡がらず、逆に、食べたい人には簡単に手

に入らないという状況が続いていたのです。

 

 そこで、ひご野菜を身近なそう菜に加工・販売し、家庭でも簡単に食

べられるようにして知名度を上げようと、2011年、内閣府の支援を受け

て自ら会社を立ち上げ、ひご野菜コロッケ専門店「ひご之すけ」を開業

されたのです。

 

 繁華街からやや離れた住宅地(中央区新屋敷)にあるコロッケ屋さん

は、構えは小さいものの、旬のひご野菜を使った手づくりのコロッケが

並んでいます(商品は季節によって異なります)。

 例えば赤ナスの麻婆風、芋の芽のリゾット風、水前寺菜のピロシキ風

など、野菜本来の味や食感が楽しめるように創意工夫されています。

 ポテトを使わないなど、コロッケの通念が覆されるものばかりです。

 

 小ぶりのコロッケ一つひとつに、ひご野菜に対する愛情と熱い思いを

込める北亜続子さん。

 「熊本でも農家の後継者不足は深刻化しています。コロッケで伝統野

菜の味を楽しんでもらうことで、農家と市民をつなぐ役割を果たしてい

きたい」と熱く語られます。

 

(参考)

 ひご野菜コロッケ専門店「ひご之すけ」(通信販売もあります。)

  http://ameblo.jp/55higonosuke/

 

 ひご野菜について(熊本市ホームページ)

  http://www.city.kumamoto.kumamoto.jp/content/web/asp/kiji_detail.asp?LS=246&ID=3887&pg=1&sort=0

 

—————————————————————-

  情報ひろば

  食や農に関わるセミナーや勉強会の情報、拙ブログの更新情報、各

 種イベントの開催情報等をお知らせします。

—————————————————————-

ウェブサイト「フード・マイレージ資料室」更新情報

  831日(土)に予定している「たからづか食育フェア」(兵庫・

  宝塚市)へのリンクを貼りました。

   http://www.city.takarazuka.hyogo.jp/index.asp?PTN=ofc&OOM=2&ofcd=01050102000000&Regid=4682

 

ブログ「新・伏臥慢録〜フード・マイレージ資料室から〜」更新情報

 72122日付け]夏の会津・福島紀行(その12

   夏休みを利用して福島県の猪苗代、会津、磐梯高原を訪ね、深い

  歴史、豊かな自然、美味しい食べものを堪能しました。

   http://food-mileage.jp/2013/07/21/

   http://food-mileage.jp/2013/07/22/

 

 

 725日付け]ふくしまオルガン堂、夏の利き酒会

   東京・下北沢の「ふくしまオルガン堂」で開催された夏の利き酒

  会。美味しい福島の郷土料理をつまみに、旬の夏酒を頂きました。

   http://food-mileage.jp/2013/07/25/

 

 728日付け]天地(あめつち)からの授かりもの

   猫の額ほどの市民農園の一画では、片手間の農作業でも作物はぐ

  んぐん育ち、天地(あめつち)は多くの収穫物を授けて下さいます。

  有り難いことです。

   http://food-mileage.jp/2013/07/28/

 

 731日付け]ジャングル「大抵」−グリスマ秋川ファーム−

   3週間ぶりに訪ねたグリーンスマイルの秋川ファームは、雑草に被

  われジャングル状態でした。「大抵にせーよ」とボヤきながら草取

  り。日本の風土の植物生産力には脱帽です。

   http://food-mileage.jp/2013/07/31/

 

 81日付け]「気仙沼を食す会」

   上野のお蕎麦屋さんで開催された会、主催は気仙沼の水産加工場

  等を支援する若いローターアクトの皆さん。サンマやイカ、アナゴ

  等と地元のお酒「船尾灯(ともしび)」を堪能。

   http://food-mileage.jp/2013/08/01/

 

 85日付け]ある夏の休日

   午前中は市民農園での農作業で汗を流し、シャワーを浴びて昼食

  にビールと冷や麦。うつらうつらしながらテレビで競馬と野球を観

  戦。夕食は、取れたての野菜、埼玉・小川町から届いた野菜、そし

  て気仙沼の水産加工品。夢のような夏の休日。

   http://food-mileage.jp/2013/08/04/

 

 筆者が参加予定または関心のあるイベント等を勝手に紹介します。

   満席等の場合がありますので、参加を希望される方は、必ず事前

  に主催者にお問い合せ下さい。

 

  平成25年度「子ども霞が関見学デー」(農林水産省)

  日時:87日(水)〜8日(木)10:0016:00

  場所:農林水産省(千代田区霞が関1-2-1

  内容:大臣室の見学、食文化クイズ、田んぼの生き物観察等

  (詳細、お問合せ等

   http://www.maff.go.jp/j/kids/k_d/

 

  種まきからはじめる秋そばづくり 第1弾「そばの種まき」

  日時:817日(土)10:10 JR中央線上野原駅集合)

  場所:山梨県上野原市西原(さいはら)地区

  主催:しごと塾さいはら

  (詳細、お問合せ等

   https://www.facebook.com/events/206347106156152/?ref=3

   http://shigotojyuku-saihara.jimdo.com/

 

  すみだ・ストリート・ジャズ・フェスティバル

  日時:817日(土)〜18日(日)10:3020:00ごろ

  場所:JR錦糸町駅北口・南口及び東京スカイツリー周辺

  主催:すみだ・ストリート・ジャズ・フェスティバル実行委員会

  (詳細、お問合せ等

   http://sumida-jazz.jp/sj/

 

 吉田俊道さん「菌ちゃん野菜作り講演会」

  日時:823日(金)13301630

  場所:東大和市中央公民館301号室

  主催:NPO法人東大和ごみレスくらぶ

  (お問合せ等

   http://ameblo.jp/gomilessclub

 

* 本メルマガは個人の立場で配信しているものであり、意見や考え方

 の部分については、全て、筆者の個人的なものです。

 

* 今回も読んでいただき有難うございました。

  次号は821日(水)(旧暦 文月十五日)に配信予定です。

 

================================================================

 F. M. Letter −フード・マイレージ資料室 通信−【ID;0001579997】 

================================================================

  発行者:中田哲也